[PA-6-2] 脳梗塞を中心とした重複障害がある重度症例に対してベッドサイドでの化粧支援が活動の取り組みや交流に変化を与えた事例
【はじめに】化粧は,生活習慣の1つで社会性を促す作業であること(石橋仁美/2014),リラックスするなどの心理的効果がある(平尾直晴/2002).今回の担当女性患者は,重度麻痺と高次脳機能障害だけでなく,内部疾患の影響で長期のベッド上の生活が強いられていた.その間,度重なる医療処置もあり表情は常に暗い状態であった.ベッドサイド介入では,作業への支援が難しく支援に難渋した.その為,ベッド上でも可能なスキンケアなどの化粧行為を含めた整容を通じて支援をした.その結果,環境設定によりスキンケアを含む整容動作が可能となった.更に,活動への取り組みや交流の変化も認めた為,報告する.今回の報告に関して家族と本人に書面での同意を得ている.
【事例紹介】80歳代の女性,右利き.単独事故による外傷性大動脈解離となり保存加療.その後,脳梗塞を発症し保存加療.第78病日目に当院回復期病棟へ入院.主治医の指示により負荷量制限があり,介入はベットサイドが中心.医療行為では,気管切開,経鼻経管栄養,尿道留置カテーテルなどの管理が必要であった.病前は化粧習慣あり.家族からの情報では,スキンケアは入念に行っていた.
【初期評価】JCSⅠ‐3.Br,s右上肢Ⅱ‐右手指Ⅱ,SIAS14/76点,重度麻痺と運動性失語あり.麻痺側管理不十分.状況理解は比較的良好.頷きや首振り等にて表出はあるも整合性は曖昧.全般性注意障害と失行症状も認められた.FIMは運動項目18点,認知項目8点で,ADLは全介助~最大介助レベル.活動への取り組みを評価するASEAはスキンケア時13/20点で,失敗しても何度も挑戦する様子があり意欲的であった.その際のO Tの声かけにも口元の動きで伝えようとする様子が見られた.
【介入と経過】介入の工夫を中心に記載する.①ベッドサイド介入時期は,ギャッチアップ約60度で長座位での姿勢とした.重度麻痺や高次脳機能障害の影響で,片手動作の拙劣さや化粧水と乳液を取り間違えるなどのエラーが散見された.代償手段には,オーバーテーブル,コットン,化粧水と乳液にはナンバリングをする代償をした上で習慣的に練習した.その結果,エラーに気づき自己修正できるようになった.更に,介入途中より,スピーチバルブ装着が開始となり,スキンケアを行う事に対して「さっぱりする」といった発言が聞かれ,化粧水などが無くなりそうな際には,ご家族に自ら依頼をするなど表出量の増加を認めた.②車椅子離床開始の指示を受けて,洗面台で実施した.手順や方法は同様に実施した.その結果,約9割は自身で一連の整容動作が可能になった. OT以外の時間にも訓練前には整容への意志表示があり,PT・STの時間でも整容を行ってからリハビリへ行く習慣がついた.
【最終評価】SIAS29/76,高次脳機能障害は残存.FIMは運動項目22点となり,特に整容は声掛けレベルで可能となり,5点となった.更に認知項目16点と,コミュニケーション能力・認知機能向上も認め,単語レベルでの表出や短文での理解も可能となった.スキンケア時のASEAは17/20点と向上し,スキンケアを通して他者交流や症例にとって重要なスキンケアを継続するために必要な表出が可能となった.
【考察】ベッドサイド中心の作業療法は作業の支援に難渋することが想定されるが,整容動作の支援は制約が多い中でも作業の支援ができる可能性が考えられた.今回,ベッドサイドからスキンケアを含む整容動作を行う事で,症例の活動への取り組みを引き出せた.そのことは,症例自身の女性としての私的自己意識を高めた.結果として,スキンケアを習慣化するために家族や病院支援者に援助を求める表出の増加に繋がった.
【事例紹介】80歳代の女性,右利き.単独事故による外傷性大動脈解離となり保存加療.その後,脳梗塞を発症し保存加療.第78病日目に当院回復期病棟へ入院.主治医の指示により負荷量制限があり,介入はベットサイドが中心.医療行為では,気管切開,経鼻経管栄養,尿道留置カテーテルなどの管理が必要であった.病前は化粧習慣あり.家族からの情報では,スキンケアは入念に行っていた.
【初期評価】JCSⅠ‐3.Br,s右上肢Ⅱ‐右手指Ⅱ,SIAS14/76点,重度麻痺と運動性失語あり.麻痺側管理不十分.状況理解は比較的良好.頷きや首振り等にて表出はあるも整合性は曖昧.全般性注意障害と失行症状も認められた.FIMは運動項目18点,認知項目8点で,ADLは全介助~最大介助レベル.活動への取り組みを評価するASEAはスキンケア時13/20点で,失敗しても何度も挑戦する様子があり意欲的であった.その際のO Tの声かけにも口元の動きで伝えようとする様子が見られた.
【介入と経過】介入の工夫を中心に記載する.①ベッドサイド介入時期は,ギャッチアップ約60度で長座位での姿勢とした.重度麻痺や高次脳機能障害の影響で,片手動作の拙劣さや化粧水と乳液を取り間違えるなどのエラーが散見された.代償手段には,オーバーテーブル,コットン,化粧水と乳液にはナンバリングをする代償をした上で習慣的に練習した.その結果,エラーに気づき自己修正できるようになった.更に,介入途中より,スピーチバルブ装着が開始となり,スキンケアを行う事に対して「さっぱりする」といった発言が聞かれ,化粧水などが無くなりそうな際には,ご家族に自ら依頼をするなど表出量の増加を認めた.②車椅子離床開始の指示を受けて,洗面台で実施した.手順や方法は同様に実施した.その結果,約9割は自身で一連の整容動作が可能になった. OT以外の時間にも訓練前には整容への意志表示があり,PT・STの時間でも整容を行ってからリハビリへ行く習慣がついた.
【最終評価】SIAS29/76,高次脳機能障害は残存.FIMは運動項目22点となり,特に整容は声掛けレベルで可能となり,5点となった.更に認知項目16点と,コミュニケーション能力・認知機能向上も認め,単語レベルでの表出や短文での理解も可能となった.スキンケア時のASEAは17/20点と向上し,スキンケアを通して他者交流や症例にとって重要なスキンケアを継続するために必要な表出が可能となった.
【考察】ベッドサイド中心の作業療法は作業の支援に難渋することが想定されるが,整容動作の支援は制約が多い中でも作業の支援ができる可能性が考えられた.今回,ベッドサイドからスキンケアを含む整容動作を行う事で,症例の活動への取り組みを引き出せた.そのことは,症例自身の女性としての私的自己意識を高めた.結果として,スキンケアを習慣化するために家族や病院支援者に援助を求める表出の増加に繋がった.