[PA-6-3] 脊髄損傷データベースシステムから見る福岡県内の外傷性脊髄損傷者の地域特性と発生状況
【目的】
当院では前方視的に脊髄損傷後の治療と機能回復の経時的データを集積するために脊髄損傷データベース(以下:当院DB)を運用している.本研究の目的は登録されたデータから福岡県内における外傷性脊髄損傷者の地域特性と発生状況を調査することである.
【対象と方法】
対象は2012年1月〜2023年3月に当院DBに登録された外傷性脊髄損傷者の874例の中から福岡県在住者640例とした.受傷時の年齢,性別,居住地,受傷原因, ASIA impairment scale(以下:AIS),麻痺分類,骨傷の有無を調査した.また,居住地から北九州,福岡,筑豊,筑後の4地域に分類し各地域別に特性を調査し65歳以上の高齢化率・平均年齢を算出した.なお,本研究は当院の倫理規定に基づき実施し,対象者へ本研究の趣旨を説明し同意を得ている.
【結果】
全対象は640例(男性497例,女性143例,平均年齢61.6±18歳)で,受傷原因として転落45%,転倒24%,交通事故22%,その他9%であった.受傷時AISはA:144例,B:47例,C:126例,D:194例,E:129例であった.頚髄損傷が72%と大部分を占め,その中でも四肢不全麻痺者の割合が74%であった.骨傷の有無では非骨傷性頚髄損傷が43%を占めていた.
各地域別の高齢化率・平均年齢では,北九州地域63/129例(48.8%)60.5歳,福岡地域100/235例(42.6%)57.3歳,筑豊地域138/227例(60.8%)65.4歳,筑後地域29/49例(59.2%)64.3歳であり地域差が認められた.
【考察】
本邦では急速に高齢化が進行しており,それに伴い過去約10年間の当院DBの登録患者層も高齢者の割合が増加している.今回の研究より,福岡県内の受傷時平均年齢は60歳代をピークとした一峰性へと変化している.2019年に行われた日本脊髄障害医学会による外傷性脊髄損傷者の全国調査と比較しても,福岡県内の受傷原因や麻痺分類など全国的な傾向と大部分が一致している傾向が確認された.
地域特性の調査では,北九州・福岡地域は政令市を中心に,当院DBにおいて受傷件数が多くなる傾向があった.筑豊・筑後地域では,約6割が高齢脊髄損傷者であり,県内でも高齢化が進行していた.農村地域などの過疎化・高齢化の進行が著しい地域においては,今後も高齢脊髄損傷者の増加が予想されることから,住環境整備および介護保険サービスとの連携の重要性が示唆された.
当院では前方視的に脊髄損傷後の治療と機能回復の経時的データを集積するために脊髄損傷データベース(以下:当院DB)を運用している.本研究の目的は登録されたデータから福岡県内における外傷性脊髄損傷者の地域特性と発生状況を調査することである.
【対象と方法】
対象は2012年1月〜2023年3月に当院DBに登録された外傷性脊髄損傷者の874例の中から福岡県在住者640例とした.受傷時の年齢,性別,居住地,受傷原因, ASIA impairment scale(以下:AIS),麻痺分類,骨傷の有無を調査した.また,居住地から北九州,福岡,筑豊,筑後の4地域に分類し各地域別に特性を調査し65歳以上の高齢化率・平均年齢を算出した.なお,本研究は当院の倫理規定に基づき実施し,対象者へ本研究の趣旨を説明し同意を得ている.
【結果】
全対象は640例(男性497例,女性143例,平均年齢61.6±18歳)で,受傷原因として転落45%,転倒24%,交通事故22%,その他9%であった.受傷時AISはA:144例,B:47例,C:126例,D:194例,E:129例であった.頚髄損傷が72%と大部分を占め,その中でも四肢不全麻痺者の割合が74%であった.骨傷の有無では非骨傷性頚髄損傷が43%を占めていた.
各地域別の高齢化率・平均年齢では,北九州地域63/129例(48.8%)60.5歳,福岡地域100/235例(42.6%)57.3歳,筑豊地域138/227例(60.8%)65.4歳,筑後地域29/49例(59.2%)64.3歳であり地域差が認められた.
【考察】
本邦では急速に高齢化が進行しており,それに伴い過去約10年間の当院DBの登録患者層も高齢者の割合が増加している.今回の研究より,福岡県内の受傷時平均年齢は60歳代をピークとした一峰性へと変化している.2019年に行われた日本脊髄障害医学会による外傷性脊髄損傷者の全国調査と比較しても,福岡県内の受傷原因や麻痺分類など全国的な傾向と大部分が一致している傾向が確認された.
地域特性の調査では,北九州・福岡地域は政令市を中心に,当院DBにおいて受傷件数が多くなる傾向があった.筑豊・筑後地域では,約6割が高齢脊髄損傷者であり,県内でも高齢化が進行していた.農村地域などの過疎化・高齢化の進行が著しい地域においては,今後も高齢脊髄損傷者の増加が予想されることから,住環境整備および介護保険サービスとの連携の重要性が示唆された.