[PA-6-7] 「生まれてくる子」を抱きたいと願う40代男性の脳出血患者に向けた取り組み
【はじめに】脳卒中患者に対して在宅や復職支援への介入に対する報告は多数認めるが,子育てへの介入の報告は少ない.今回,入院3ヶ月後に,妻が第2子出産予定である脳出血患者からセルフケア自立後に「子供を抱きたい」など育児に対する希望を聞かれた.本人のニーズに合わせた介入や多職種連携により,子育てが行える状態での在宅退院が可能となった症例を報告する.本報告に際して,本人及び家族の同意は得ている.
【事例紹介】40代男性.診断名は左被殻出血(右片麻痺).入院前のADLは全て自立.仕事はデスクワーク.妻と長男の3人暮らしであり,キーパーソンの妻は妊娠中.脳出血発症後,17病日目にリハビリ目的で当院転院.
【作業療法評価】BRS上肢Ⅳ,手指Ⅴ,下肢Ⅳ.FMA76/126点.ARAT9/57点.STEF右手7点,左手93点.感覚は表在覚軽度鈍麻,深部覚中等度~重度鈍麻.ROMは制限なし.MMT両上肢4.握力は右手7.0kg,左手30.4kg.BBS41/56点.FIM55/126点.基本動作は起居動作見守り,移動は車椅子全介助.セルフケアは入浴以外軽介助.入浴は全介助.高次脳機能面として,失語や全般性注意障害,右半側空間無視を認めた.MMSE-Jは失語により精査困難.会話は理解単語~短文レベル.表出単語レベル.本人Hope腕が使えるようになりたい.家族Hope復職.出産予定である妻の負担を軽減するためにADL自立や復職,育児が協力できる状態での早期在宅退院が求められていた.
【経過】「ADL自立を目指した時期(17~44病日目)」では,促通反復療法や電気刺激療法,日常生活での右手使用状況の確認を中心に実施.また,早期ADL自立に向けて積極的な日常生活動作練習や他職種連携にて,時間を要しても行えることについては自身で行うように促した.介入後,ADLは全て自立.本人からも「右手で箸が持てた」,「ボタンが付けられた」などの発言を認めた.また,ブラインドタッチによるパソコン操作も可能となった.
「子育て支援に向けた時期(45~79病日目)」では,本人へ目標確認を行い,「生まれてくる子を抱きたい」や「長男とも遊びたい」などの希望を認めた.そのため,他職種連携し,OTでは「抱きかかえる動作」,PTでは「かけっこや縄跳び」,STでは「言語課題」を中心に実施.介入後,抱きかかえる動作やかけっこ,縄跳びが安定して行えるようになった.
【結果】BRS上肢Ⅵ,手指Ⅵ,下肢Ⅵ.FMA122/126点.ARAT57/57点.STEF右手97点,左手100点.感覚は表在覚深部覚ともに正常.MMT左上肢5,右上肢4.握力は右手18.0kg,左手38.2kg.BBS56/56点.FIMは119/126点.高次脳機能面では,全般性注意機能障害や半側空間無視は改善.MMSE-Jは30/30点.会話は理解複雑な日常会話レベル,表出短文レベル.80病日目に在宅退院された.
【考察】近年,リハビリテーションにおける目標設定が自己効力感に影響を及ぼすとされている.さらに自己効力感は人のwell beingにも影響するとされていることから,作業療法士が対象者と目標共有し,作業に焦点を当てた治療を行い,クライエントが結果予期や効力予期を高めることでリハビリテーションのより良い結果をもたらすと考えられている(猿爪ら2021).今回,子育てが行える状態での早期在宅退院ができた要因は,他職種連携により,早期ADL自立されたことや本人のニーズに合わせた目標設定と課題がマッチしたことで自己効力感が高まり,意欲的に取り組めたことが早期動作獲得に繋がったと考える.
【事例紹介】40代男性.診断名は左被殻出血(右片麻痺).入院前のADLは全て自立.仕事はデスクワーク.妻と長男の3人暮らしであり,キーパーソンの妻は妊娠中.脳出血発症後,17病日目にリハビリ目的で当院転院.
【作業療法評価】BRS上肢Ⅳ,手指Ⅴ,下肢Ⅳ.FMA76/126点.ARAT9/57点.STEF右手7点,左手93点.感覚は表在覚軽度鈍麻,深部覚中等度~重度鈍麻.ROMは制限なし.MMT両上肢4.握力は右手7.0kg,左手30.4kg.BBS41/56点.FIM55/126点.基本動作は起居動作見守り,移動は車椅子全介助.セルフケアは入浴以外軽介助.入浴は全介助.高次脳機能面として,失語や全般性注意障害,右半側空間無視を認めた.MMSE-Jは失語により精査困難.会話は理解単語~短文レベル.表出単語レベル.本人Hope腕が使えるようになりたい.家族Hope復職.出産予定である妻の負担を軽減するためにADL自立や復職,育児が協力できる状態での早期在宅退院が求められていた.
【経過】「ADL自立を目指した時期(17~44病日目)」では,促通反復療法や電気刺激療法,日常生活での右手使用状況の確認を中心に実施.また,早期ADL自立に向けて積極的な日常生活動作練習や他職種連携にて,時間を要しても行えることについては自身で行うように促した.介入後,ADLは全て自立.本人からも「右手で箸が持てた」,「ボタンが付けられた」などの発言を認めた.また,ブラインドタッチによるパソコン操作も可能となった.
「子育て支援に向けた時期(45~79病日目)」では,本人へ目標確認を行い,「生まれてくる子を抱きたい」や「長男とも遊びたい」などの希望を認めた.そのため,他職種連携し,OTでは「抱きかかえる動作」,PTでは「かけっこや縄跳び」,STでは「言語課題」を中心に実施.介入後,抱きかかえる動作やかけっこ,縄跳びが安定して行えるようになった.
【結果】BRS上肢Ⅵ,手指Ⅵ,下肢Ⅵ.FMA122/126点.ARAT57/57点.STEF右手97点,左手100点.感覚は表在覚深部覚ともに正常.MMT左上肢5,右上肢4.握力は右手18.0kg,左手38.2kg.BBS56/56点.FIMは119/126点.高次脳機能面では,全般性注意機能障害や半側空間無視は改善.MMSE-Jは30/30点.会話は理解複雑な日常会話レベル,表出短文レベル.80病日目に在宅退院された.
【考察】近年,リハビリテーションにおける目標設定が自己効力感に影響を及ぼすとされている.さらに自己効力感は人のwell beingにも影響するとされていることから,作業療法士が対象者と目標共有し,作業に焦点を当てた治療を行い,クライエントが結果予期や効力予期を高めることでリハビリテーションのより良い結果をもたらすと考えられている(猿爪ら2021).今回,子育てが行える状態での早期在宅退院ができた要因は,他職種連携により,早期ADL自立されたことや本人のニーズに合わせた目標設定と課題がマッチしたことで自己効力感が高まり,意欲的に取り組めたことが早期動作獲得に繋がったと考える.