[PA-6-9] 7回の調理訓練を行い,退院後も本人が希望した調理を獲得した左片麻痺事例
【はじめに】
前沢(2018)は,回復期リハビリテーション病棟から自宅に退院する脳血管障害者の役割として「調理」は入院中に積極的に介入し,退院後も継続してサポートすることで 役割の認識と実施状況を向上することができると報告している.今回,調理がしたいと希望のある左片麻痺患者に対して自宅環境に合わせた調理訓練を7回実施し,退院後も家族に料理を振舞うことができたため報告する.本報告に対して事例に説明し同意を得た.
【事例】
60歳代の右利きの女性で,右被殻出血を発症し15病日に急性期病院より当院回復期リハビリテーション病棟へ転院,166病日に自宅退院となり,退院後当法人デイケアを利用した.当院入院時の左上肢機能はFMA4点であった.本人の希望として「調理だけは夫や息子に任せたくない.」と発言があった.注意機能の低下を認めていたが,調理訓練実施前には検査で年代平均を上回っていた.
【介入方針】
麻痺側上肢機能が向上した時点で調理訓練を開始した.退院後を想定し家族の帰宅前に料理を完成できるように,調理時間は1時間40分で2品完成できることを目標とし,全7回で展開した.また,片麻痺当事者のYouTube動画を参考に,自宅でも安全に行える方法を提案しながら実施した.当院の規則に沿い2人前で調理し,段階付けとして1回目は(1期)火を使わない料理から開始した.2~4回目(2期)は調理に慣れ1品を安全に作ることを目的に行い,5~7回目(3期)は自宅に近い手の込んだ料理を2品時間内に作ることを目的に行った.退院3か月後に自宅での調理状況を面接で評価した.
【調理訓練の経過・退院後評価】
1期では酢の物のきゅうりを薄く切ることが出来なかった.洗い物を含め調理時間は1時間15分要した.2期では食材を切る際に左手で鍋蓋を使用しながら安全行えたが,食材の皮むき・切る作業で野菜炒めが30分,カレーライスが50分の時間を要した.親子丼では火の管理をしながら洗い物に移行したが,沸騰してもすぐに移動できず対応出来なかった.フライパンも上手く固定できず回ってしまった.調理時間は1時間20分~2時間以上要した.調理訓練日以外は調理台で横歩きの練習やフライパンの固定練習を行った.3期では火の管理をしながら食材を切り,沸騰する前に肉じゃがの食材を切り終え,フライパンも左手で固定できるようになった.サラダのきゅうりも薄く切ることが出来た.調理時間は目標の1時間15分~1時間半で行えた.退院後,2日に1回以上は家族の帰宅前から時間を予測し準備を始め2~3品作っており,鍋蓋は使用せず左手で食材が固定可能となった.
【結果】
各上肢機能評価の結果は入院時,調理訓練開始前(119病日),退院時(166病日),退院後約3か月(236病日)の順にMAL-AOUは0・1.3・1.7・3.5点,MAL-QOMは0・1.5・2.1・2.6点,FMAは4・32・39・不明(測定できず)であった.
【考察】
高野(2020)は調理におけるエラーの要因は,片手での調理経験が乏しいことであり,「一つ一つの作業に時間がかかる」,「同時進行できない」といった特徴があったと報告している.今回,家族の帰宅前に料理を完成するという目標設定を立て,調理訓練中に左手が使用できる場面を上肢機能の回復に合わせて見つけながら自宅で安全に行える方法を提案した.7回の調理訓練を段階付けて介入したことにより,作業時間が短縮し同時進行で調理が可能となり,自宅でも病前と同じ家庭内の役割が持てた.さらに入院中から左手が使用できる場面を一緒に考え提案したことで,退院後も家事動作を含めた生活場面で左手を積極的に使用でき,左手の使用頻度が向上した.
前沢(2018)は,回復期リハビリテーション病棟から自宅に退院する脳血管障害者の役割として「調理」は入院中に積極的に介入し,退院後も継続してサポートすることで 役割の認識と実施状況を向上することができると報告している.今回,調理がしたいと希望のある左片麻痺患者に対して自宅環境に合わせた調理訓練を7回実施し,退院後も家族に料理を振舞うことができたため報告する.本報告に対して事例に説明し同意を得た.
【事例】
60歳代の右利きの女性で,右被殻出血を発症し15病日に急性期病院より当院回復期リハビリテーション病棟へ転院,166病日に自宅退院となり,退院後当法人デイケアを利用した.当院入院時の左上肢機能はFMA4点であった.本人の希望として「調理だけは夫や息子に任せたくない.」と発言があった.注意機能の低下を認めていたが,調理訓練実施前には検査で年代平均を上回っていた.
【介入方針】
麻痺側上肢機能が向上した時点で調理訓練を開始した.退院後を想定し家族の帰宅前に料理を完成できるように,調理時間は1時間40分で2品完成できることを目標とし,全7回で展開した.また,片麻痺当事者のYouTube動画を参考に,自宅でも安全に行える方法を提案しながら実施した.当院の規則に沿い2人前で調理し,段階付けとして1回目は(1期)火を使わない料理から開始した.2~4回目(2期)は調理に慣れ1品を安全に作ることを目的に行い,5~7回目(3期)は自宅に近い手の込んだ料理を2品時間内に作ることを目的に行った.退院3か月後に自宅での調理状況を面接で評価した.
【調理訓練の経過・退院後評価】
1期では酢の物のきゅうりを薄く切ることが出来なかった.洗い物を含め調理時間は1時間15分要した.2期では食材を切る際に左手で鍋蓋を使用しながら安全行えたが,食材の皮むき・切る作業で野菜炒めが30分,カレーライスが50分の時間を要した.親子丼では火の管理をしながら洗い物に移行したが,沸騰してもすぐに移動できず対応出来なかった.フライパンも上手く固定できず回ってしまった.調理時間は1時間20分~2時間以上要した.調理訓練日以外は調理台で横歩きの練習やフライパンの固定練習を行った.3期では火の管理をしながら食材を切り,沸騰する前に肉じゃがの食材を切り終え,フライパンも左手で固定できるようになった.サラダのきゅうりも薄く切ることが出来た.調理時間は目標の1時間15分~1時間半で行えた.退院後,2日に1回以上は家族の帰宅前から時間を予測し準備を始め2~3品作っており,鍋蓋は使用せず左手で食材が固定可能となった.
【結果】
各上肢機能評価の結果は入院時,調理訓練開始前(119病日),退院時(166病日),退院後約3か月(236病日)の順にMAL-AOUは0・1.3・1.7・3.5点,MAL-QOMは0・1.5・2.1・2.6点,FMAは4・32・39・不明(測定できず)であった.
【考察】
高野(2020)は調理におけるエラーの要因は,片手での調理経験が乏しいことであり,「一つ一つの作業に時間がかかる」,「同時進行できない」といった特徴があったと報告している.今回,家族の帰宅前に料理を完成するという目標設定を立て,調理訓練中に左手が使用できる場面を上肢機能の回復に合わせて見つけながら自宅で安全に行える方法を提案した.7回の調理訓練を段階付けて介入したことにより,作業時間が短縮し同時進行で調理が可能となり,自宅でも病前と同じ家庭内の役割が持てた.さらに入院中から左手が使用できる場面を一緒に考え提案したことで,退院後も家事動作を含めた生活場面で左手を積極的に使用でき,左手の使用頻度が向上した.