[PA-7-1] 維持期脳卒中片麻痺者に対するリモート行動心理アプローチの導入
維持期脳血管疾患後片麻痺者の麻痺手の生活での使用量を増す行動心理学的アプローチであるConstraint-Induced Movement Therapy(以下CIセラピー)は,連続する10日間で1日数時間の面接を行い生活場面での麻痺手使用を強化する行動療法であり,エビデンスは極めて高い(脳卒中治療ガイドラインで推奨グレードA).しかし,CIセラピーは,1日1時間程度の面接と2時間の麻痺手のトレーニングが行われるが,本邦の診療報酬制度では回復期に3時間の介入はできない.海外の先行研究では,リモートにより面接を行い自宅でのセルフトレーニングを実施して,オリジナルCIセラピーと同等の効果があることが報告されている.本研究では,リモートによるCIセラピーの適用について,我が国の診療報酬に適応するように,期間を10週間に延長し介入頻度も週1回40分に設定したCIセラピーを試み,オリジナルCIセラピーの効果を麻痺手の運動機能と麻痺手の使用頻度評価を評価ツールとして検証することを目的とした.対象は,脳卒中発症から1年以上経過した維持期片麻痺患者6人で,適応基準は麻痺肢の集中練習が禁忌となる医学上の合併症がない片麻痺患者,Mini-Mental State Examination24点以上,医学上問題となる合併症がないものとした.選定は,主治医が本研究内容を説明し,事前の医学的チェックを受け,書面同意を得た人をエントリーした.なお対象群は作らない.介入期間は10週間として,対象は,すべて在宅でプログラムを実施し,研究者は遠隔にて面接介入を1回あたり40分間実施する.プロトコルとして,行動契約(BC),在宅課題(HSA)を割り当てた.Zoom面接は1週間に一度40分間行った. 面接内容は1週間ごとのMotor Activity Log (AOU scale)のスコア収集と行動契約の見直しを行った.評価は,介入1ヶ月前,介入時,介入終了時,介入終了後3ケ月として,Fugle Meyer,Motor Activity Log (AOU scale)を評価した.本研究の結果,麻痺手の生活場面での使用頻度の増加と生活動作への使用の定着が図れた.介入開始時と介入終了時の比較においてMotor Activity Log (AOU scale)の改善がみられた.さらに,Fugle Meyerにおいても有意に改善がみられた.脳血管疾患後片麻痺者に対し遠隔による行動心理アプローチは対面でのCIセラピーと同等の効果が期待できることが示唆される.