[PA-7-12] 脳卒中後の左片麻痺患者における目標設定と目標到達率
作業選択意思決定支援ソフト(ADOC)を用いて
【序論】脳血管疾患におけるリハビリテーションは,国際生活機能分類(ICF)の概念に基づき対象者の全体像を捉え,日常生活活動に加え,社会や家庭における役割,日課や趣味等,様々な日常生活を営む事を踏まえて目標設定を行う.先行研究で,作業療法士(Occupational Therapy以下,OT)と対象者の間で目標が一致しているかについて報告があり,多くのOTは対象者と協働的に目標設定をしていると認識していたものの,両者の認識している目標が完全に一致していたのはわずかであった(齋藤2019).
実際,筆者を含めOTが目標設定を行う場合,実感としてOT主体の見解や決定に偏る事が少なくないと感じており,今回は,作業選択意思決定支援ソフト(Aid for Decision-making in Occupation Choice以下,ADOC)を用いて,対象者にとって意味のある作業を共有し,協働的に目標設定を行なった事が目標到達率と満足度の変化に繋がった為,考察とともに報告する.なお,本発表についてはヘルシンキ宣言に則り,当院の倫理委員会にて承認を得ている.
【目的】ADOCを用いて対象者にとって意味のある作業を共有し,協働的に目標設定をした事で目標到達率と満足度の向上を目的とした.
【症例紹介】左視床出血と診断され,失語症と運動麻痺を呈した70歳代の女性で,利き手は右手であった.急性期病院にて28日間入院後,当院に転院となった.入院当初の評価として,Fugl-Meyer Assessment(以下,FMA)は,4/66点,Modified Ashworth Scale(以下,MAS)は肩1,肘1,機能的自立度評価(Functional Independence Measure以下,FIM)の運動項目:23/91点(到達率:25.2%),認知項目:13/35点(到達率:37.1%)であった.ADOC(記載方法:各項目:重要度○/5点,満足度○/5点)は,①トイレ:4/5点,2/5点,②移乗:4/5点,1/5点,③起き上がり・立ち上がり:3/5点,2/5点,④更衣:3/5点,1/5点,⑤入浴:3/5点,2/5点(合計8/35点)と重要度の高いものから順序付け,作業に対する満足度を確かめた.
【方法】ADOCを用いて,意味のある作業を共有すると共に協働的に目標設定を行った.ここで言う設定した目標はADOCで挙げた作業に注目した.1ヵ月ごとに目標設定の見直しをする中で,対象者自身が作業に対する方法を工夫し取り組んでおり,問題解決の指導や作業に対する介入も並行して実施した.
【結果】FMAは,15/66点,MASは,肩1+,肘1+,前腕1+,手関節1+,手指1+,日常生活動作は,FIM運動項目:61/91点(到達率:67.0%),認知項目:25/35点(到達率:71.4%)と全ての生活動作において向上を示した.ADOCは,①トイレ:5/5点,4/5点,②移乗:5/5点,4/5点,③起き上がり・立ち上がり:4/5点,4/5点,④更衣:4/5点,3/5点,⑤入浴:3/5点,3/5点(合計18/35点)と作業に対する満足度も改善する結果となった.
【考察】FIMの運動項目と認知項目が向上し,ADOCの選択した作業は,全ての項目で満足度が2点以上の変化を示した.FIMが向上した要因として,作業に対するプランニングやモニタリング能力が高められ,自らが目標指向的な行動を取るようになったからだと考える.行動の変化を含め生活自立度の向上が達成感を与え,自信に繋がり作業に対する満足度も向上した.満足度における最小可検変化量については,1.8〜2.3点と言われており(平野2017),これと比較しても,対象者の満足度の変化は,意味のある改善であったと考える.先行研究で述べたOTと対象者の間で一致している目標を互いに認識し,継続的に取り組む事が出来れば行動変容を起こすきっかけとなり,FIMの向上と共に主観的な満足度にも影響を与えているのではないか.
実際,筆者を含めOTが目標設定を行う場合,実感としてOT主体の見解や決定に偏る事が少なくないと感じており,今回は,作業選択意思決定支援ソフト(Aid for Decision-making in Occupation Choice以下,ADOC)を用いて,対象者にとって意味のある作業を共有し,協働的に目標設定を行なった事が目標到達率と満足度の変化に繋がった為,考察とともに報告する.なお,本発表についてはヘルシンキ宣言に則り,当院の倫理委員会にて承認を得ている.
【目的】ADOCを用いて対象者にとって意味のある作業を共有し,協働的に目標設定をした事で目標到達率と満足度の向上を目的とした.
【症例紹介】左視床出血と診断され,失語症と運動麻痺を呈した70歳代の女性で,利き手は右手であった.急性期病院にて28日間入院後,当院に転院となった.入院当初の評価として,Fugl-Meyer Assessment(以下,FMA)は,4/66点,Modified Ashworth Scale(以下,MAS)は肩1,肘1,機能的自立度評価(Functional Independence Measure以下,FIM)の運動項目:23/91点(到達率:25.2%),認知項目:13/35点(到達率:37.1%)であった.ADOC(記載方法:各項目:重要度○/5点,満足度○/5点)は,①トイレ:4/5点,2/5点,②移乗:4/5点,1/5点,③起き上がり・立ち上がり:3/5点,2/5点,④更衣:3/5点,1/5点,⑤入浴:3/5点,2/5点(合計8/35点)と重要度の高いものから順序付け,作業に対する満足度を確かめた.
【方法】ADOCを用いて,意味のある作業を共有すると共に協働的に目標設定を行った.ここで言う設定した目標はADOCで挙げた作業に注目した.1ヵ月ごとに目標設定の見直しをする中で,対象者自身が作業に対する方法を工夫し取り組んでおり,問題解決の指導や作業に対する介入も並行して実施した.
【結果】FMAは,15/66点,MASは,肩1+,肘1+,前腕1+,手関節1+,手指1+,日常生活動作は,FIM運動項目:61/91点(到達率:67.0%),認知項目:25/35点(到達率:71.4%)と全ての生活動作において向上を示した.ADOCは,①トイレ:5/5点,4/5点,②移乗:5/5点,4/5点,③起き上がり・立ち上がり:4/5点,4/5点,④更衣:4/5点,3/5点,⑤入浴:3/5点,3/5点(合計18/35点)と作業に対する満足度も改善する結果となった.
【考察】FIMの運動項目と認知項目が向上し,ADOCの選択した作業は,全ての項目で満足度が2点以上の変化を示した.FIMが向上した要因として,作業に対するプランニングやモニタリング能力が高められ,自らが目標指向的な行動を取るようになったからだと考える.行動の変化を含め生活自立度の向上が達成感を与え,自信に繋がり作業に対する満足度も向上した.満足度における最小可検変化量については,1.8〜2.3点と言われており(平野2017),これと比較しても,対象者の満足度の変化は,意味のある改善であったと考える.先行研究で述べたOTと対象者の間で一致している目標を互いに認識し,継続的に取り組む事が出来れば行動変容を起こすきっかけとなり,FIMの向上と共に主観的な満足度にも影響を与えているのではないか.