第58回日本作業療法学会

Presentation information

ポスター

脳血管疾患等

[PA-7] ポスター:脳血管疾患等 7

Sun. Nov 10, 2024 8:30 AM - 9:30 AM ポスター会場 (大ホール)

[PA-7-14] 修正CI療法と加速度計を使用しモニタリングした経過;二度の脳卒中による内省の変化

坂西 泰輔1, 南川 勇二2,3, 田口 潤智4, 芝 貴裕1 (1.宝塚リハビリテーション病院 療法部, 2.西大和リハビリテーション病院 リハビリテーション部, 3.畿央大学大学院 健康科学研究科神経リハビリテーション学研究室, 4.宝塚リハビリテーション病院 診療部)

【序論】健常高齢者は両手が補完的に連携することで両上肢の活動が対称的となる.一方で,脳卒中患者は非麻痺側上肢の活動に比べて麻痺側上肢の活動が低下することにより,上肢活動の非対称性を示すと報告されている.しかし,両側の麻痺を呈した症例の両上肢活動の特徴や経過に着目した報告は散見されない.今回,二度の脳卒中により両側麻痺を認め,両上肢の活動量が低下した症例を経験した.その症例に両手動作を中心とした修正CI療法や,加速度計による両上肢活動のモニタリングを促した結果,上肢使用の改善を認めたため報告する.尚,発表にあたり本症例に口頭と書面で同意を得ている.
【症例紹介】本症例は第16病日に右視床出血により左片麻痺を呈し,当院へ入院された右利きの80歳代女性である.退院時のFugl-Meyer Assessment上肢項目(FMA-UE)は61点,Box and Block Test(BBT)はR44/L39個,Motor Activity Log(MAL)はAmount of use(AOU)/Quality of Movement(QOM)で4.0/4.0点となった.加速度計(AX6:Axivity社製)を両手首に装着し,24時間の上肢活動を評価した結果,活動時間は左右対称的となり,両側活動強度の和も高くなった.内省では「左手は右手と同じようにいかんけど,お茶碗が持てるようになった」等の発言があった.しかし,第175病日後に左アテローム性脳梗塞により当院へ再入院となった.再入院時のFMA-UEはR54/L58点,BBTはR31/L33個,MAL(AOU/QOM)はR3.7/3.8点,L4.0/3.0点であり,右上肢に加え左上肢機能も低下していた.また,加速度計の結果では,左右の活動時間は減少し,両側活動強度の和も退院時より著明に低下していた.食事場面では右手の箸操作加え,左手で皿を持ち上げることの困難さを認めた.内省では,両上肢ともに「使っていたら疲れる」と発言があった.そこで,右上肢への介入だけでなく,両手活動の向上の戦略を立案し,介入を試みた.
【方法】介入は1日1時間,週7回実施した.修正CI療法は食事やトイレ動作等,両手操作を中心とした課題指向型訓練やTransfer Package(TP)を実施した.TPはBehavioral Contract(BC)とCaregiver Contract(CC)を実施した.BCは下衣操作時に手すりを把持する等,本症例ができると感じた両手を使用するADL課題とし,CCはBCを参考に行ってよい介助とそうでない介助を明記し,過介助とならないよう病室に張り紙を掲示した.加速度計は入浴日を除き3週間毎に24時間計測し,結果をフィードバック(FB)した.
【結果】介入10週目ではFMA-UEはR57/L58点,BBTはR34/L33個,MAL(AOU/QOM)はR4.0/3.7点,L4.0/3.2点となった.また,ADLは見守り,上肢活動の評価では左右の活動時間は増加し,両側活動強度の和も高くなった.上肢に対しては「補助的に使えている」「前よりはマシ」との内省の変化を認めた.食事場面では右手で箸を使用して麺類や豆腐を摘まめるようになり,左手で皿を持ちあげながらの食事が可能となった.
【考察】本症例は初回入院時の経過において麻痺側である左上肢の使用は改善していた.しかし,右片麻痺を呈し,再入院した際に,再度左上肢の使用が低下した.その理由は元々非麻痺側であった右上肢の運動麻痺により,両上肢の協調的な動作が困難となったことでADLにおける左上肢の使用量が低下したと考えられた.今回,両手動作を中心とした課題指向型訓練やTPの実施に加え,両上肢の活動量の関係性について加速度計を用いながらFBし,モニタリングを促したことで上肢の使用頻度の向上や,左右の活動強度の向上に繋がったと考えられた.