[PA-7-17] 脳卒中片麻痺患者の上衣更衣動作の効率化
身体機能と注意機能の影響
【序論】脳卒中片麻痺患者は,上衣を着脱する際の可動域制限や衣服を選択し着用する過程の注意障害がADL低下に直結するとされており,更衣動作の困難さを引き起こす主な原因であると報告されている.片麻痺患者の更衣動作に関連する研究は散見するものの具体的に更衣動作の困難さに寄与する諸因子については明らかにされていない.更衣動作における困難さを改善するためには,これらの因子を明らかにする必要がある.本研究では上衣更衣動作の効率化を目的とし,身体機能と注意機能の複合的な影響を考慮した研究を行い,片麻痺患者のQOL向上に寄与することを目指す.更衣動作の困難さに対する新たな理解と実践的な介入の提案が期待される.
【目的】脳卒中片麻痺患者の上衣更衣の操作時間と操作部位の変更頻度に及ぼす身体機能と注意機能の影響を明らかにすることを目的とする.
【方法】対象は令和リハビリテーション病院に入院している患者の中で,研究に同意が得られた片麻痺患者10例(年齢:70.8±10.3歳,男性:6名,女性:4名,上肢Brunnstrom Recovery StageⅡ:4例,Ⅲ:1例,Ⅳ:2例,Ⅴ:3例)を対象とした.注意機能評価はTMT—Jを用いた.除外基準は重度認知症,感覚障害,運動失調を有する者とした.衣服は当院入院着を使用し,長袖被り衣服の動作を対象とした.患者の操作能力は操作に要した時間と操作部位を変える頻度を測定するために「麻痺側の袖通し,非麻痺側の袖通し,頭通し,裾下ろし」の4つの操作部位を記録し評価を実施.操作に要した時間は2名のOTが動画分析にて確認し,操作の頻度と割合を算出した.また,操作部位の変更頻度は非麻痺側上肢にて麻痺側の上肢の袖通し時の持ち替え回数を算出した.統計学的検定にはスピアマンの相関係数とMann-Whitney U検定を用い,有意水準は5%とした.研究は所属機関の倫理審査委員会の承認を受けて行われた.
【結果】BRSⅠ〜Ⅲを重症群,Ⅳ〜Ⅵを軽症群とした際に操作所要時間は重症群で81.87±29.96秒,軽症群で32.12±17.28秒,操作部位の変更頻度は重症群で50.8±32.3回,軽症群で4.6±2.3回であり,袖通し時の非麻痺側での持ち替え回数と更衣時間の間には正の相関が見られ(相関係数:0.948, p値:0.000029),これは重症群では軽症群に比べて更衣時間が長く,非麻痺側での持ち替え回数が多いことが明らかとなった.特に麻痺側の袖通しと衣服の持ち替え回数では重症群と軽症群の間で統計的に有意な差が認められた(更衣時間のU値: 23.0, p値: 0.0317,持ち替え回数のU値: 25.0, p値: 0.0119).これは更衣動作の袖通し動作が身体機能低下が顕著な困難を引き起こしていることを示唆する.また4部位の平均割合は,麻痺側の袖通し:44.82%,非麻痺側の袖通し:12.02%,頭通し:14.11%,裾下ろし:29.05%で麻痺側の袖通しに最も時間を要す結果となった.TMT-Jスコアと更衣操作に要した時間の間には,統計的に有意な相関は認められなかった(TMT(A)と更衣時間の相関係数: -0.134, p値: 0.731,TMT(B)と更衣時間の相関係数: -0.200, p値: 0.606).
【考察】更衣動作の効率化には,身体機能に着目し操作頻度を削減することが有効であることを示している.特に,非麻痺側上肢の衣服の持ち替え回数と更衣時間の間に見られた正の相関は,操作の難易度を高める主要因として身体機能の低下を示している.一方で,注意機能の低下が更衣動作の効率性に直接的な影響を与えることは確認されなかった.この結果は,更衣動作において身体機能の影響が注意障害の影響よりも強いことを示唆している.今後更衣動作の効率化に向けて動作解析装置を用いた身体機能評価が求められる.
【目的】脳卒中片麻痺患者の上衣更衣の操作時間と操作部位の変更頻度に及ぼす身体機能と注意機能の影響を明らかにすることを目的とする.
【方法】対象は令和リハビリテーション病院に入院している患者の中で,研究に同意が得られた片麻痺患者10例(年齢:70.8±10.3歳,男性:6名,女性:4名,上肢Brunnstrom Recovery StageⅡ:4例,Ⅲ:1例,Ⅳ:2例,Ⅴ:3例)を対象とした.注意機能評価はTMT—Jを用いた.除外基準は重度認知症,感覚障害,運動失調を有する者とした.衣服は当院入院着を使用し,長袖被り衣服の動作を対象とした.患者の操作能力は操作に要した時間と操作部位を変える頻度を測定するために「麻痺側の袖通し,非麻痺側の袖通し,頭通し,裾下ろし」の4つの操作部位を記録し評価を実施.操作に要した時間は2名のOTが動画分析にて確認し,操作の頻度と割合を算出した.また,操作部位の変更頻度は非麻痺側上肢にて麻痺側の上肢の袖通し時の持ち替え回数を算出した.統計学的検定にはスピアマンの相関係数とMann-Whitney U検定を用い,有意水準は5%とした.研究は所属機関の倫理審査委員会の承認を受けて行われた.
【結果】BRSⅠ〜Ⅲを重症群,Ⅳ〜Ⅵを軽症群とした際に操作所要時間は重症群で81.87±29.96秒,軽症群で32.12±17.28秒,操作部位の変更頻度は重症群で50.8±32.3回,軽症群で4.6±2.3回であり,袖通し時の非麻痺側での持ち替え回数と更衣時間の間には正の相関が見られ(相関係数:0.948, p値:0.000029),これは重症群では軽症群に比べて更衣時間が長く,非麻痺側での持ち替え回数が多いことが明らかとなった.特に麻痺側の袖通しと衣服の持ち替え回数では重症群と軽症群の間で統計的に有意な差が認められた(更衣時間のU値: 23.0, p値: 0.0317,持ち替え回数のU値: 25.0, p値: 0.0119).これは更衣動作の袖通し動作が身体機能低下が顕著な困難を引き起こしていることを示唆する.また4部位の平均割合は,麻痺側の袖通し:44.82%,非麻痺側の袖通し:12.02%,頭通し:14.11%,裾下ろし:29.05%で麻痺側の袖通しに最も時間を要す結果となった.TMT-Jスコアと更衣操作に要した時間の間には,統計的に有意な相関は認められなかった(TMT(A)と更衣時間の相関係数: -0.134, p値: 0.731,TMT(B)と更衣時間の相関係数: -0.200, p値: 0.606).
【考察】更衣動作の効率化には,身体機能に着目し操作頻度を削減することが有効であることを示している.特に,非麻痺側上肢の衣服の持ち替え回数と更衣時間の間に見られた正の相関は,操作の難易度を高める主要因として身体機能の低下を示している.一方で,注意機能の低下が更衣動作の効率性に直接的な影響を与えることは確認されなかった.この結果は,更衣動作において身体機能の影響が注意障害の影響よりも強いことを示唆している.今後更衣動作の効率化に向けて動作解析装置を用いた身体機能評価が求められる.