[PA-7-6] 回復期リハビリテーション病棟入院中の脳卒中片麻痺患者がブローチ作りを通して他者と交流した事例
【はじめに】脳梗塞により右片麻痺を呈した事例(以下A氏)を担当した.A氏は病前からブローチ作りを趣味として行っていた.上肢機能訓練,ADLに対する環境調整,作業活動を段階的に実施することで作業の再獲得や病棟内の他者交流が生まれた事例を経験したため,以下に報告する.発表にあたり,事前にA氏への同意を得ている.
【事例紹介】70歳代後半の女性,右利き.A病院にて軽度の脳梗塞を認め,一度帰宅される.病日4日目に増悪して当院を受診した際に左放線冠近傍に急性期脳梗塞を認め,回復期リハビリテーション病棟へ入院.病日6日目にリハビリテーション介入開始となる.病前ADL・IADLは自立.上着に自作の花のブローチを付けていた.
【作業療法評価】BRS:ALLⅤ,SIAS:53点,上肢FMA:35点,STEF:Rt20/Lt64点,MMSE:27点.FIM:運動項目25点,認知項目16点.基本動作:自立~見守りレベル.麻痺側上肢は肩甲骨の固定性低下や末梢の随意性低下,感覚障害が認められた.身の回りのことは一人でできるようになりたいとのHOPE達成の為,上肢機能の改善,ADL動作での介助量軽減を目標とした.
【経過】前期:上肢機能訓練では肩甲骨周囲への訓練と並行して手指機能へ物品操作を実施した.ADL動作は,環境調整を行うことで自立レベルにて実施できるようになった.中期:上肢機能訓練は継続して実施した.病棟では臥床傾向であり,訓練量増加と離床目的のために訓練と同一の物品を貸し出し,自主訓練を導入した.それにより,病棟では右上肢の使用機会が増加した.しかし,引き続き臥床傾向であった.病前は塗り絵や手芸を行っていたことを聴取し,まずは巧緻性難易度の低い塗り絵を訓練中に行い,終わらなかったものを病棟に持ち帰って実施したことにより離床機会が増えていった.後期:塗り絵活動が定着し,別の作業の意欲が聞かれ始めた.そこで,A氏が病前より行っていたブローチ作りを提案した.当初は手指機能低下を理由に自信がないと話していたため,まずは作成方法や背景などを聴取した.ブローチの飾り作りから取り組み,OTRと共同で行い徐々にA氏に行ってもらった.その後は作成した飾りを使用し台座に取り付けるに着手した.病棟で行う姿を他患や病棟看護師が見て会話が生まれていった.その人たちから作品制作の依頼が聞かれ,A氏も了承し訓練時や空いている時間に作成した.退院間近には準備の工程から行いたい希望が聞かれ,動作確認後に材料と道具を貸し出すことで全ての工程を自身で行うようになった.そして,退院先の施設に経過を申し送り,A氏に使用していた材料を渡し介入終了となった.
【結果】BRS:Ⅴ-Ⅴ-Ⅴ,SIAS:60点,上肢FMA:56点,STEF:Rt51/Lt69点,MMSE:28点,FIM:運動項目69点,認知項目29点と各項目で点数の改善を認めた.
【考察】今回,作業活動を導入できた要因の1つとして運動麻痺が早期に改善したこと,病棟ADLが初期の段階で自立できたことが考えられる.作業活動はA氏が病前から行っていた塗り絵とブローチ作りを選択した.しかし,この選択は病前との比較や失敗の経験により自己否定的な思考や作業への拒否を助長しかねない(菊池,2018).そのため,A氏から作成方法を聴取し作業分析を行い段階的にA氏が行う範囲を拡大していくことで自己効力感を感じられ作業を継続できたと考える.集団の中で作業を行うことがコミュニケーションと交流技能を磨き社会的関係性を構築し生活の質の向上に繋がるということが言われている (谷村,2012).本事例においても病棟でブローチ作りを行うことで,作業を通しての周囲との関わりが発生し病院内での他者交流へと繋がったと考えられる.
【事例紹介】70歳代後半の女性,右利き.A病院にて軽度の脳梗塞を認め,一度帰宅される.病日4日目に増悪して当院を受診した際に左放線冠近傍に急性期脳梗塞を認め,回復期リハビリテーション病棟へ入院.病日6日目にリハビリテーション介入開始となる.病前ADL・IADLは自立.上着に自作の花のブローチを付けていた.
【作業療法評価】BRS:ALLⅤ,SIAS:53点,上肢FMA:35点,STEF:Rt20/Lt64点,MMSE:27点.FIM:運動項目25点,認知項目16点.基本動作:自立~見守りレベル.麻痺側上肢は肩甲骨の固定性低下や末梢の随意性低下,感覚障害が認められた.身の回りのことは一人でできるようになりたいとのHOPE達成の為,上肢機能の改善,ADL動作での介助量軽減を目標とした.
【経過】前期:上肢機能訓練では肩甲骨周囲への訓練と並行して手指機能へ物品操作を実施した.ADL動作は,環境調整を行うことで自立レベルにて実施できるようになった.中期:上肢機能訓練は継続して実施した.病棟では臥床傾向であり,訓練量増加と離床目的のために訓練と同一の物品を貸し出し,自主訓練を導入した.それにより,病棟では右上肢の使用機会が増加した.しかし,引き続き臥床傾向であった.病前は塗り絵や手芸を行っていたことを聴取し,まずは巧緻性難易度の低い塗り絵を訓練中に行い,終わらなかったものを病棟に持ち帰って実施したことにより離床機会が増えていった.後期:塗り絵活動が定着し,別の作業の意欲が聞かれ始めた.そこで,A氏が病前より行っていたブローチ作りを提案した.当初は手指機能低下を理由に自信がないと話していたため,まずは作成方法や背景などを聴取した.ブローチの飾り作りから取り組み,OTRと共同で行い徐々にA氏に行ってもらった.その後は作成した飾りを使用し台座に取り付けるに着手した.病棟で行う姿を他患や病棟看護師が見て会話が生まれていった.その人たちから作品制作の依頼が聞かれ,A氏も了承し訓練時や空いている時間に作成した.退院間近には準備の工程から行いたい希望が聞かれ,動作確認後に材料と道具を貸し出すことで全ての工程を自身で行うようになった.そして,退院先の施設に経過を申し送り,A氏に使用していた材料を渡し介入終了となった.
【結果】BRS:Ⅴ-Ⅴ-Ⅴ,SIAS:60点,上肢FMA:56点,STEF:Rt51/Lt69点,MMSE:28点,FIM:運動項目69点,認知項目29点と各項目で点数の改善を認めた.
【考察】今回,作業活動を導入できた要因の1つとして運動麻痺が早期に改善したこと,病棟ADLが初期の段階で自立できたことが考えられる.作業活動はA氏が病前から行っていた塗り絵とブローチ作りを選択した.しかし,この選択は病前との比較や失敗の経験により自己否定的な思考や作業への拒否を助長しかねない(菊池,2018).そのため,A氏から作成方法を聴取し作業分析を行い段階的にA氏が行う範囲を拡大していくことで自己効力感を感じられ作業を継続できたと考える.集団の中で作業を行うことがコミュニケーションと交流技能を磨き社会的関係性を構築し生活の質の向上に繋がるということが言われている (谷村,2012).本事例においても病棟でブローチ作りを行うことで,作業を通しての周囲との関わりが発生し病院内での他者交流へと繋がったと考えられる.