[PA-8-17] 病棟リハ室における自主練習としての経皮的電気刺激療法の効果検証
脳卒中患者の痙性抑制に介入した一例
【はじめに】脳卒中治療ガイドライン2021では, 回復期リハビリテーション診療において, 訓練時間を長くすることが推奨されていて, 自主練習も積極的に提供している施設が多い. 痙縮はリハビリテーションや日常生活動作の阻害因子であることが報告されている (松本ら2008). 痙縮の自主練習は, ストレッチや麻痺側上肢の自動運動が中心である (Alainら2010). 近年, 痙縮の改善方法として, Transcutaneous electrical nerve stimulation: TENSが注目されており, 痙縮抑制効果が報告されている (福井ら 2011). しかし, 上肢に重度麻痺を呈している患者が, 自ら触診し, 正確に電極を貼る事は困難であることが予想される. 当院は, 回復期リハビリテーション病棟に併設されたリハビリテーション室 (病棟リハ室) を有しており, リハスタッフが介入しやすい環境のため, 安全かつ短期間で電気刺激療法を使用した痙縮抑制の自主練習を導入することが出来ると考えた. 本研究の目的は, 病棟自主練習における痙縮抑制TENSの有効性を検討した.
【事例紹介】左中大脳動脈梗塞を発症した30代男性 (右利き). 運動性優位の重度失語症を呈していたが, 失語症以外の著明な高次脳機能障害は認めなかった. 入院時より病棟内ADLは独歩で自立. 自主練習導入時の50日目の評価ではFugl-Meyer Assessment_Upper Extremity: FMA_UE 31/66点, Action Research Arm Test: ARAT 7/57点, Modified Ashworth Scale: MAS 右手関節屈筋群2, 手指屈筋群2であった.
【方法】自主練習の実施場所は病棟リハ室内の自主練習スペース. 機器は伊藤超音波株式会社のイトー ESPURGEを使用し, 前腕屈筋群, 手内在筋をターゲットに周波数100Hz, パルス幅300㎲, 刺激強度は感覚閾値で実施した. 電極の装着, 機器の設定はリハスタッフが実施し, 安全面に配慮し, リハスタッフによる見守りの下, 自主練習を実施した. メインアウトカムは, 作業療法介入中の上肢運動時間. サブアウトカムは患者の上肢機能評価としてFMA_UE, MASを使用した.
【倫理的配慮】対象者に対して同意書を用いて同意を得た. また, 当院倫理委員会より承認を得ている.
【結果】自主練習導入前の作業療法介入では, 電気刺激療法20分に加え, 痙性抑制のROM訓練20分を実施していたため, 上肢運動時間は20分であった. 導入後の上肢運動時間は50分に増加した. 上肢機能評価では, FMA_UE 46/66点, MAS 右手関節屈筋群1, 右手指屈筋群1+であり, 自主練習導入前と比較して改善を認めた. 自主練習TENSによる有害事象の訴えはなく, 安全に実施することができた.
【考察】作業療法前の自主練習として, TENSを実施する事で介入時間の上肢運動時間を増加できた. 痙縮抑制を目的としたTENSの実施時間は, 安静状態で痙縮筋に対し連続した30分から60分の刺激が効果的である (Amreen 2018). TENSにより, リハビリテーション進行の阻害因子である痙縮を抑制できた為, 作業療法介入中の上肢運動時間が増加したと考える. 先行研究では, 上肢運動時間と上肢機能改善には相関があることが報告されている (Catherine 2016). 本事例でも, 作業療法介入中の上肢運動時間増加が, 上肢機能改善に寄与したと考える. 病棟リハ室での電気刺激療法を使用した自主練習は, リハスタッフが機器の設定, 見守りを行う事が出来る為, 患者指導の時間が不要であった. その為, 円滑かつ安全で効果的な自主練習を提供できた. 病棟リハ室における自主練習TENSは, 安全面やスタッフの労力の面から考慮しても導入しやすく, 効果的な痙縮抑制ができる方法であり, 運動時間増加による上肢機能改善も期待できる有効な自主練習となりえる方法であると考える.
【事例紹介】左中大脳動脈梗塞を発症した30代男性 (右利き). 運動性優位の重度失語症を呈していたが, 失語症以外の著明な高次脳機能障害は認めなかった. 入院時より病棟内ADLは独歩で自立. 自主練習導入時の50日目の評価ではFugl-Meyer Assessment_Upper Extremity: FMA_UE 31/66点, Action Research Arm Test: ARAT 7/57点, Modified Ashworth Scale: MAS 右手関節屈筋群2, 手指屈筋群2であった.
【方法】自主練習の実施場所は病棟リハ室内の自主練習スペース. 機器は伊藤超音波株式会社のイトー ESPURGEを使用し, 前腕屈筋群, 手内在筋をターゲットに周波数100Hz, パルス幅300㎲, 刺激強度は感覚閾値で実施した. 電極の装着, 機器の設定はリハスタッフが実施し, 安全面に配慮し, リハスタッフによる見守りの下, 自主練習を実施した. メインアウトカムは, 作業療法介入中の上肢運動時間. サブアウトカムは患者の上肢機能評価としてFMA_UE, MASを使用した.
【倫理的配慮】対象者に対して同意書を用いて同意を得た. また, 当院倫理委員会より承認を得ている.
【結果】自主練習導入前の作業療法介入では, 電気刺激療法20分に加え, 痙性抑制のROM訓練20分を実施していたため, 上肢運動時間は20分であった. 導入後の上肢運動時間は50分に増加した. 上肢機能評価では, FMA_UE 46/66点, MAS 右手関節屈筋群1, 右手指屈筋群1+であり, 自主練習導入前と比較して改善を認めた. 自主練習TENSによる有害事象の訴えはなく, 安全に実施することができた.
【考察】作業療法前の自主練習として, TENSを実施する事で介入時間の上肢運動時間を増加できた. 痙縮抑制を目的としたTENSの実施時間は, 安静状態で痙縮筋に対し連続した30分から60分の刺激が効果的である (Amreen 2018). TENSにより, リハビリテーション進行の阻害因子である痙縮を抑制できた為, 作業療法介入中の上肢運動時間が増加したと考える. 先行研究では, 上肢運動時間と上肢機能改善には相関があることが報告されている (Catherine 2016). 本事例でも, 作業療法介入中の上肢運動時間増加が, 上肢機能改善に寄与したと考える. 病棟リハ室での電気刺激療法を使用した自主練習は, リハスタッフが機器の設定, 見守りを行う事が出来る為, 患者指導の時間が不要であった. その為, 円滑かつ安全で効果的な自主練習を提供できた. 病棟リハ室における自主練習TENSは, 安全面やスタッフの労力の面から考慮しても導入しやすく, 効果的な痙縮抑制ができる方法であり, 運動時間増加による上肢機能改善も期待できる有効な自主練習となりえる方法であると考える.