[PA-8-21] 片手での結髪動作獲得に向けて指導を行なった一事例
<序論>
作業療法におけるアプローチ方法は様々あるが,中でも代償的アプローチは自助具を使用する他にも,残存機能を活かすことや方法を変更することで目的の作業を達成するアプローチである.重度の片麻痺がある患者では,複雑高度な作業を行うために自助具が必要となる場合があり,自助具を用いることで日常生活動作の自立を助ける.結髪動作など両手を同時に用いないと難しいとされている作業においても同様のことが言え,片麻痺患者では自助具の使用や髪の毛を切るなどの対応を余儀なくされる.結髪動作に関して,自助具を開発したことを報告する文献は散見されるが.自助具を使用せず片手での結髪動作に着目した文献は少ない.そのため今回は,自助具を使用せずに健側上肢の機能を使い結髪動作が行える方法を考案し,動作指導を行った事例について報告する.尚,本報告に際し,本人に同意を得ている.
<事例紹介>
右放線冠脳梗塞により左片麻痺を呈した50代女性.右利きであり,髪の長さは第7頸椎棘突起から約34㎝であった.発症2日目よりリハビリテーション開始,19日目に回復期病棟に転棟となり75日目に自宅退院.79日目より外来リビリテーションを開始し現在に至る.身体機能は,Brunnstrom stage上肢Ⅵ,手指Ⅵ,下肢Ⅵ,認知機能ではMini Mental State Examination 30点,高次機能障害はなかった.Functional Independence Measureは125点であった.
<介入方法>
片手の指三本(母指,示指,中指)で髪ゴムを持ちながら束ねる.示指と中指にて母指にあるゴムを引っ掛けて母指を抜く.その後母指で髪を引き抜き,以降は同工程を3回程実施する.この方法を動画にて撮影し,外来リハビリテーション時に見せながら10分程度動作指導を実施した.自宅でも何度か練習を指示し,1週間後の外来リハビリテーション時に自主練習の成果と結髪動作の指導を再度行った.その後に結髪の完成度についての満足度を聴取した.
<結果>
初回の動作指導では,手指の細かい動作が必要なため動画を見ながらの指導と説明でほとんどの時間を要した.1週間後の外来リハビリテーションの際は,髪の乱れや緩みなどはあるもののこちらからの指導はほとんどなく動作を行うことができた.症例からは完成度の満足度は5/10であったが「入院生活の時は,髪の毛を結べなかったからストレスだった.入院生活の時に知れたら良かった.」という発言や「外に出るには満足できないが,食事の時には邪魔にならなくて良いかも」といった発言が聞かれた.
<考察>
今回,片手で結髪動作を行う方法を考案して動作指導を実施してから一週間程度で可能になった.出来栄えとしては緩みや乱れがあり良いものとは言えないものの片手で行うことは可能であった. 結髪の完成度に対する満足度は低いものであったが,片麻痺になり結髪動作をあきらめていた人にとっては一つの選択肢になるのではないかと考える.身だしなみを気遣うことは,いつまでもはつらつと元気に生活することにつながるとされている.そのため今回考案したような方法を繰り返し練習することにより身だしなみに気遣えることができ,その人らしい生活を取り戻すことを援助する方法になるのではないかと考える.
作業療法におけるアプローチ方法は様々あるが,中でも代償的アプローチは自助具を使用する他にも,残存機能を活かすことや方法を変更することで目的の作業を達成するアプローチである.重度の片麻痺がある患者では,複雑高度な作業を行うために自助具が必要となる場合があり,自助具を用いることで日常生活動作の自立を助ける.結髪動作など両手を同時に用いないと難しいとされている作業においても同様のことが言え,片麻痺患者では自助具の使用や髪の毛を切るなどの対応を余儀なくされる.結髪動作に関して,自助具を開発したことを報告する文献は散見されるが.自助具を使用せず片手での結髪動作に着目した文献は少ない.そのため今回は,自助具を使用せずに健側上肢の機能を使い結髪動作が行える方法を考案し,動作指導を行った事例について報告する.尚,本報告に際し,本人に同意を得ている.
<事例紹介>
右放線冠脳梗塞により左片麻痺を呈した50代女性.右利きであり,髪の長さは第7頸椎棘突起から約34㎝であった.発症2日目よりリハビリテーション開始,19日目に回復期病棟に転棟となり75日目に自宅退院.79日目より外来リビリテーションを開始し現在に至る.身体機能は,Brunnstrom stage上肢Ⅵ,手指Ⅵ,下肢Ⅵ,認知機能ではMini Mental State Examination 30点,高次機能障害はなかった.Functional Independence Measureは125点であった.
<介入方法>
片手の指三本(母指,示指,中指)で髪ゴムを持ちながら束ねる.示指と中指にて母指にあるゴムを引っ掛けて母指を抜く.その後母指で髪を引き抜き,以降は同工程を3回程実施する.この方法を動画にて撮影し,外来リハビリテーション時に見せながら10分程度動作指導を実施した.自宅でも何度か練習を指示し,1週間後の外来リハビリテーション時に自主練習の成果と結髪動作の指導を再度行った.その後に結髪の完成度についての満足度を聴取した.
<結果>
初回の動作指導では,手指の細かい動作が必要なため動画を見ながらの指導と説明でほとんどの時間を要した.1週間後の外来リハビリテーションの際は,髪の乱れや緩みなどはあるもののこちらからの指導はほとんどなく動作を行うことができた.症例からは完成度の満足度は5/10であったが「入院生活の時は,髪の毛を結べなかったからストレスだった.入院生活の時に知れたら良かった.」という発言や「外に出るには満足できないが,食事の時には邪魔にならなくて良いかも」といった発言が聞かれた.
<考察>
今回,片手で結髪動作を行う方法を考案して動作指導を実施してから一週間程度で可能になった.出来栄えとしては緩みや乱れがあり良いものとは言えないものの片手で行うことは可能であった. 結髪の完成度に対する満足度は低いものであったが,片麻痺になり結髪動作をあきらめていた人にとっては一つの選択肢になるのではないかと考える.身だしなみを気遣うことは,いつまでもはつらつと元気に生活することにつながるとされている.そのため今回考案したような方法を繰り返し練習することにより身だしなみに気遣えることができ,その人らしい生活を取り戻すことを援助する方法になるのではないかと考える.