[PA-8-8] 回復期脳卒中患者に対するリアルタイムフィードバックを加えた視覚誘導性自己運動錯覚療法の有効性
シングルケーススタディ
【はじめに】近年,脳卒中片麻痺患者への治療法として,視覚誘導性自己運動錯覚療法(以下,KiNesthetic illusion induced by visual stimulation:KiNvis療法)が有効であることが報告されている.我々はKiNvis療法に実際の手の映像を重ね合わせたリアルタイムに自身の手の動きをフィードバックできる訓練手法を考案した.今回は,回復期脳卒中患者に対し,シングルケースデザインを用い,その臨床効果について検証したため,考察を加え報告する.なお,発表にあたり本人に口頭及び書面にて研究の趣旨を説明し,同意を得ている.
【症例紹介】70代男性.右利き.X日農作業中に右上肢の脱力を感じ,他院に救急搬送され左放線冠に脳梗塞を認め保存的加療が行われた.X+26日リハビリ目的で当院回復期リハビリテーション病棟に転院した.入棟時の評価では,右上肢・手指上田式12段階片麻痺テスト:grade11・8,STEF32/100点,Box and Block Test(以下,BBT):19個, HDS-R27/30点,日常生活動作はFunctional Independence Measure(以下,FIM):96点,Motor FIM:67点で基本動作能力低下に伴い,セルフケア面に一部介助を要していた.
【方法】リアルタイムフィードバックを加えたKiNvis療法の実施手順は次の通りとした.まず,カメラを用い健側の手指屈伸運動を撮影し,水平反転させた動画を作成した.次に麻痺肢と重なって見える位置にタブレット端末を設置し,麻痺肢とタブレット端末との間にカメラを設置した.反転した健側肢の動画をタブレット端末上で透過度を下げた状態で再生し,さらにカメラから撮影している麻痺肢の映像を重ね合わせ,この環境下で手の動きを同調させることでKiNvis療法にリアルタイムフィードバック要素を加えた.上記の方法を用い,シングルケーススタディ(ABAB法)によって治療効果を検証した.X+76日より評価及び介入を開始した.ベースライン期(A1,A2期),介入期(B1,B2期)に分け,それぞれ平日5日間の介入を交互に4週間実施した.A期は通常OTプログラム60分/日の介入を行い,B期では通常OTプログラム50分/日+リアルタイムフィードバックを加えたKiNvis療法10分/日実施した.対象期間中,各週終了時にFugl Meyer assessment for Upper Extremity(以下,FMA-UE),Motor Activity Log(以下,MAL)-Amount of Use(以下,AOU),-Quality of Movement(以下,QOM),Wolf Motor Function Test(以下,WMFT)を実施した.また,各期の介入効果を検証するため,介入直後のBBT,10秒テストを経時的に実施し,セッション毎に二分平均による回帰直線から傾きを算出し,経過を比較した.
【結果】介入初期/1週/2週/3週/4週の各終了時の評価結果は,FMA-UE55/60/63/60/64,MAL-AOU22/30/37/41/45,-QOM24/27/33/27/38,WMFT-FAS59/63/66/63/67,WMFT-TIME934.8/144.9/21.18/29.17/23.39であった.経時的評価項目の二分平均による回帰直線では,1週/2週/3週/4週の傾きがBBT0.7/1.3/-0.7/0.6,10秒テスト1.8/0.3/-1.0/0.8であった.
【考察】リアルタイムフィードバックを加えたKiNvis療法の治療効果を検証した結果,B2期においてはA2期よりも改善の傾向がみられた.単純な運動の繰り返しではなく,修正を行いながら訓練を行うことで集中した課題の実施が可能であった.しかし,ベースライン期においても改善が見られており,急性期・回復期における自然回復の影響を排除できなかった.今後は多標本実験や神経生理学的手法を用い,多角的視点から有用性を検証していく.
【症例紹介】70代男性.右利き.X日農作業中に右上肢の脱力を感じ,他院に救急搬送され左放線冠に脳梗塞を認め保存的加療が行われた.X+26日リハビリ目的で当院回復期リハビリテーション病棟に転院した.入棟時の評価では,右上肢・手指上田式12段階片麻痺テスト:grade11・8,STEF32/100点,Box and Block Test(以下,BBT):19個, HDS-R27/30点,日常生活動作はFunctional Independence Measure(以下,FIM):96点,Motor FIM:67点で基本動作能力低下に伴い,セルフケア面に一部介助を要していた.
【方法】リアルタイムフィードバックを加えたKiNvis療法の実施手順は次の通りとした.まず,カメラを用い健側の手指屈伸運動を撮影し,水平反転させた動画を作成した.次に麻痺肢と重なって見える位置にタブレット端末を設置し,麻痺肢とタブレット端末との間にカメラを設置した.反転した健側肢の動画をタブレット端末上で透過度を下げた状態で再生し,さらにカメラから撮影している麻痺肢の映像を重ね合わせ,この環境下で手の動きを同調させることでKiNvis療法にリアルタイムフィードバック要素を加えた.上記の方法を用い,シングルケーススタディ(ABAB法)によって治療効果を検証した.X+76日より評価及び介入を開始した.ベースライン期(A1,A2期),介入期(B1,B2期)に分け,それぞれ平日5日間の介入を交互に4週間実施した.A期は通常OTプログラム60分/日の介入を行い,B期では通常OTプログラム50分/日+リアルタイムフィードバックを加えたKiNvis療法10分/日実施した.対象期間中,各週終了時にFugl Meyer assessment for Upper Extremity(以下,FMA-UE),Motor Activity Log(以下,MAL)-Amount of Use(以下,AOU),-Quality of Movement(以下,QOM),Wolf Motor Function Test(以下,WMFT)を実施した.また,各期の介入効果を検証するため,介入直後のBBT,10秒テストを経時的に実施し,セッション毎に二分平均による回帰直線から傾きを算出し,経過を比較した.
【結果】介入初期/1週/2週/3週/4週の各終了時の評価結果は,FMA-UE55/60/63/60/64,MAL-AOU22/30/37/41/45,-QOM24/27/33/27/38,WMFT-FAS59/63/66/63/67,WMFT-TIME934.8/144.9/21.18/29.17/23.39であった.経時的評価項目の二分平均による回帰直線では,1週/2週/3週/4週の傾きがBBT0.7/1.3/-0.7/0.6,10秒テスト1.8/0.3/-1.0/0.8であった.
【考察】リアルタイムフィードバックを加えたKiNvis療法の治療効果を検証した結果,B2期においてはA2期よりも改善の傾向がみられた.単純な運動の繰り返しではなく,修正を行いながら訓練を行うことで集中した課題の実施が可能であった.しかし,ベースライン期においても改善が見られており,急性期・回復期における自然回復の影響を排除できなかった.今後は多標本実験や神経生理学的手法を用い,多角的視点から有用性を検証していく.