[PA-9-12] 地域在住脳卒中者の参加に影響を及ぼす要因はなにか?
ナラティブレビュー
【背景と目的】世界作業療法士連盟は「作業療法の主目標は,人々が日常の生活活動に参加できるようにすることである.その為に,作業療法士は人々が参加する能力を強化できるようにし,参加を支援する環境を調整する」としている.我が国でも介護保険において社会参加支援加算が設けられるなど,参加の支援の重要性は明らかであるが,臨床ではどのように「参加」を支援すれば良いのか苦慮することも多い.そこで,我が国の身体障害領域作業療法における最多の対象疾患である脳血管疾患に着目し,脳卒中者の参加にどのような要因が影響しているのかを明らかにする為,文献研究を行った.なお,本研究において開示すべきCOIはない.
【方法】検索にはPubMedを用いた.検索キーワードはStroke,Community Dwelling,Participation(最終検索:2024年2月27日).包含基準は①研究目的で参加に言及,②地域在住脳卒中者を対象,③量的研究,④査読付き原著論文とした.除外基準は①文献研究,②総論・特集・解説,③理論や評価法の開発論文,④質的研究,⑤本文が入手不可とした.
対象文献の分析は,①アブストラクトから各論文を包含・除外基準に基づいて選別,②文献数の単純集計,③包含基準に合致した論文の本文チェックを行い,地域在住脳卒中者の参加に影響する因子としてどのような要因が検証されているか,それぞれどのような影響を及ぼすとされているのかを抽出し,結果を考察した.
【結果】1390本の論文が抽出され,包含・除外基準に則って38本の論文が分析対象となった.発行年は2008年から2022年であり,欧米,アジア,アフリカなど各地で報告がなされていた.
地域在住脳卒中者の参加に影響を及ぼす要因としては,年齢や性差,社会的サポートの有無,物理的構造的障壁,抑うつなどに着目した報告が多く,その他にバランス能力,下肢筋力などの身体機能,認知および精神機能,経済状況,日常生活自立度,尿失禁の有無,糖尿病など合併症の有無,動機付け,移動能力の有無,能力の自己認識,バランスやセルフケアなどに対する自己効力感,レジリエンス,季節の影響などの面から検証されていた.しかし,性差やレジリエンスなどは参加への影響があるとする報告とそうでないものとが混在しており,特に性差に関しては論文によって全く異なる結果が論じられている現状があった.
【考察】本結果より,脳卒中者の参加は世界的にも重要な課題として着目されており,研究が進められている現状が見て取れた.しかし,脳卒中者の参加に影響を与える要因として論じられている年齢や性差,経済状況や合併症の有無などは作業療法支援では変化を生じさせることは不可能である.また,他に挙げられている身体機能や認知機能といった項目も,地域在住脳卒中者においては大きな変化を得られにくい現状もある.
リハビリテーションにおける社会参加に着目した先行研究では(Adebimpe O. Obembe,2016),社会参加をはじめとした「参加」の支援の重要性を論じると同時に,これまで行われてきた研究は身体機能からの視点や移動能力に偏重していると指摘しており,異なる視点からの更なる研究が必要不可欠であるとされている.本結果からも,少数ではあるが,動機付けや各種自己効力感,レジリエンスといった視点からの研究が展開されている現状を見て取ることができる.「参加」への支援が求められる現在の臨床現場において,我々作業療法士がどのような切り口から対象者の「参加」を捉え,支援することができるのか,作業療法士が変化を生じさせ得る要因を明らかにし,それを支援する為の方法を構築する為の研究が急務であると考える.
【方法】検索にはPubMedを用いた.検索キーワードはStroke,Community Dwelling,Participation(最終検索:2024年2月27日).包含基準は①研究目的で参加に言及,②地域在住脳卒中者を対象,③量的研究,④査読付き原著論文とした.除外基準は①文献研究,②総論・特集・解説,③理論や評価法の開発論文,④質的研究,⑤本文が入手不可とした.
対象文献の分析は,①アブストラクトから各論文を包含・除外基準に基づいて選別,②文献数の単純集計,③包含基準に合致した論文の本文チェックを行い,地域在住脳卒中者の参加に影響する因子としてどのような要因が検証されているか,それぞれどのような影響を及ぼすとされているのかを抽出し,結果を考察した.
【結果】1390本の論文が抽出され,包含・除外基準に則って38本の論文が分析対象となった.発行年は2008年から2022年であり,欧米,アジア,アフリカなど各地で報告がなされていた.
地域在住脳卒中者の参加に影響を及ぼす要因としては,年齢や性差,社会的サポートの有無,物理的構造的障壁,抑うつなどに着目した報告が多く,その他にバランス能力,下肢筋力などの身体機能,認知および精神機能,経済状況,日常生活自立度,尿失禁の有無,糖尿病など合併症の有無,動機付け,移動能力の有無,能力の自己認識,バランスやセルフケアなどに対する自己効力感,レジリエンス,季節の影響などの面から検証されていた.しかし,性差やレジリエンスなどは参加への影響があるとする報告とそうでないものとが混在しており,特に性差に関しては論文によって全く異なる結果が論じられている現状があった.
【考察】本結果より,脳卒中者の参加は世界的にも重要な課題として着目されており,研究が進められている現状が見て取れた.しかし,脳卒中者の参加に影響を与える要因として論じられている年齢や性差,経済状況や合併症の有無などは作業療法支援では変化を生じさせることは不可能である.また,他に挙げられている身体機能や認知機能といった項目も,地域在住脳卒中者においては大きな変化を得られにくい現状もある.
リハビリテーションにおける社会参加に着目した先行研究では(Adebimpe O. Obembe,2016),社会参加をはじめとした「参加」の支援の重要性を論じると同時に,これまで行われてきた研究は身体機能からの視点や移動能力に偏重していると指摘しており,異なる視点からの更なる研究が必要不可欠であるとされている.本結果からも,少数ではあるが,動機付けや各種自己効力感,レジリエンスといった視点からの研究が展開されている現状を見て取ることができる.「参加」への支援が求められる現在の臨床現場において,我々作業療法士がどのような切り口から対象者の「参加」を捉え,支援することができるのか,作業療法士が変化を生じさせ得る要因を明らかにし,それを支援する為の方法を構築する為の研究が急務であると考える.