第58回日本作業療法学会

Presentation information

ポスター

脳血管疾患等

[PA-9] ポスター:脳血管疾患等 9

Sun. Nov 10, 2024 10:30 AM - 11:30 AM ポスター会場 (大ホール)

[PA-9-14] 片麻痺者の回復期における麻痺手の使用頻度と健康統制感の関連

林 慎也1, 笹田 哲2 (1.アール・クラ横浜, 2.神奈川県立保健福祉大学大学院 保健福祉学研究科)

はじめに:
Constraint-induced movement therapy(以下,CIMT)は片麻痺者の麻痺手の使用頻度を向上させる治療である.CIMTは行動心理学的手法に基づいているが動機付けに関する報告はない.動機付けを評価する1つの方法は,日本版健康統制感尺度(Japan Health Locus of Control scale:以下,JHLC)である.JHLCの内的統制は,健康を自分自身の努力によって得られると認知するタイプを測定できる.片麻痺者が麻痺手を生活で使用することは,不自由な手を努力して使用する行動であると考えた.以上から,麻痺手の使用頻度と健康統制感の内的統制(以下,内的統制)に関連があると仮説を立てた.
目的:
麻痺手の使用頻度と内的統制の関連を検証すること.
方法:
対象は,回復期リハビリテーション病院(以下,リハ病院)に入院している弛緩性麻痺ではない片麻痺者であり,著明な認知機能・精神機能障害がない者とした.麻痺手の使用頻度と内的統制の変化を評価するため,初回評価,1ヶ月後,2ヶ月後に評価する前向き観察研究を採用した.9つのリハ病院で同意が得られた35名を対象としたが,2ヶ月後は12名が退院し23名を対象とした.解析は,強制投入法の重回帰分析を使用し,従属変数は麻痺手の使用頻度(Motor Activity Log のAmount of use:以下,MAL AOU),独立変数はJHLCの内的統制として偏回帰係数を算出した.独立変数は,以下の交絡因子を含む複数のモデルで調整した.モデル1は,年齢,性別で調整した.モデル2は,年齢,性別,罹患期間,利き手と麻痺側の同側の有無(以下,利き手),Fugl-Meyer Assessment (以下,FMA)で調整した.モデル3は,年齢,性別,罹患期間,利き手,FMA,Self-rating Depression Scale(以下,SDS),General Self-Efficacy Scale(以下,GSES)で調整した.モデル4は,年齢,性別,罹患期間,利き手,FMA,SDS,GSES,JHLCの家族,JHLCの専門職,JHLCの偶然,JHLCの神仏の存在で調整した.また,MAL AOUと日常生活動作(Activities of Daily Living:以下,ADL)のFunctional Independence Measure(以下,FIM),GSESの相関を検証した.相関分析は,Shapiro-Wilk検定で正規性を認めずSpearmanの順位相関係数(rs)を算出した.本研究は大学の研究倫理審査委員会で承認を得て実施した.
結果:
MAL AOU:初回評価は平均1.30点,2ヶ月後は平均1.47点,FMA:初回評価は平均30.6点,2ヶ月後は平均30.4点,FIM:初回評価は平均68.6点,2ヶ月後は平均85.6点であった.初回評価,1ヶ月後は,MAL AOUと内的統制に有意な関連を認めなかった.2ヶ月後は,全てのモデルで麻痺手の使用頻度と内的統制(偏回帰係数=0.171-0.244,p=0.02-0.029)は有意な関連を認めた.初回評価,1ヶ月後は,MAL AOUとGSESに相関を認めなかったが,2ヶ月後はMAL AOUとFIM(rs=0.69,p<0.001),GSES(rs=0.45,p=0.03)に有意な正の相関を認めた.
考察:
初回評価,1ヶ月後は麻痺手の使用頻度と内的統制に関連を認めず,2ヶ月後に関連を認めた.初回評価,1ヶ月後は,麻痺手の使用頻度と自己効力感に正の相関を認めず,2ヶ月後は,麻痺手の使用頻度とADL,自己効力感に有意な正の相関を認めた.したがって,2ヶ月の作業療法によって麻痺手の使用頻度とADLが向上する過程が自己効力感の向上に繋がり,片麻痺者が健康を自分の努力によって得ることを認知したと考えられる.本研究は,麻痺手の使用頻度と内的統制の関連を示唆した.