[PB-1-5] 高齢PICS患者に対する作業療法の1例
【はじめに】
集中治療後症候群(PICS)は,ICUに入室中あるいは退出後に生じる身体機能,認知機能,精神機能の障害である.PICS患者に対するQOL改善の作業療法(OT)として,趣味活動やニードの高い動作練習の報告は少ない.今回,非ST上昇型急性心筋梗塞(NSTEMI)に対し,緊急冠動脈パイパス術(CABG)と僧帽弁形成術(MVP)後にPICSを生じた高齢患者を担当した.ICU退室後よりOT処方され,精神機能や認知機能の改善と,トイレ動作の介助量が軽減し,QOLの改善を示したため報告する.
【症例紹介・説明と同意】
症例は,70代男性 (BMI:17.8kg/m2), 病前ADLは自立, 物理学の大学講師だった.趣味は電子機器に触れることであった.家族背景は妻と2人暮らしだった.診断名はNSTEMI,既往歴に慢性閉塞性肺疾患等があった.現病歴は,第1病日に呼吸困難となり当院搬送された. LVEFは高度低下, 左室拡大や僧帽弁閉鎖不全症を認めた.緊急でCABGとMVPが施行され,術後人工呼吸器管理となりICU入室した.第7病日,抜管/人工呼吸器離脱し,ICUを退室した.ICU退室後,第8病日よりOT処方されたが,体動や声掛け刺激がないと閉眼し,「もういいです」と発言きかれOT実施困難であった.趣味の電子機器の話しやラジオ操作ができる環境調整をしたことで活動性が向上し,第16病日よりOT実施可能となった.本発表に関して,症例に説明し同意を得た.
【OT評価(第16病日)】
Medical Research Council (MRC) score:40点, Functional Status Score for the Intensive Care Unit (FSS-ICU):15点.FIM(トイレ動作):1点.Vitality Index(VI):1点,MMSE:19点,HADS(不安/抑うつ):14/10点 .paper版ADOCで目標選定し,COPM(遂行度/満足度)は手すりでトイレまで歩き,ズボンの上げ下ろし動作ができる(1/1)とした. 5-level EuroQol 5-dimensional questionnaire (EQ-5D-5L):0.062であった.
【経過】
症例や他職種との共通目標で,手すり歩行しトイレ動作が監視と設定した.OTは,趣味活動の提供,認知的課題,トイレ動作練習を実施した.頻度と時間は,1日1回40分,週5回を転院(第50病日)まで継続した.
第16病日から第21病日, 物理学の課題を行い, 30から40分離床が可能となった.移乗動作練習から開始し,中等度介助だった.
第22病日から第34病日, TVリモコン操作し,ニュースを見るよう促した.便座への移乗動作は,手すりで軽度介助となり,ズボンの上げ下ろしを練習した. 歩行器歩行は, 臀部介助し5m歩行が可能となった.病棟で歩行器歩行の排泄誘導を開始したが,毎日失禁した.
第35病日から第46病日, 病棟でナースコールを押し, 手すり歩行とトイレ動作はすべて監視となった.症例から「トイレはできると思った」と発言あった.1週間で2回失禁に減少した.
【最終評価(第47病日)】
MRC:48点,FSS-ICU:29点,FIM(トイレ動作):5点,VI:7点,MMSE:23点,HADS:2/0点だった.COPM:7/7であり, EQ-5D-5L:0.543となった.
【考察】
PICS患者は,不安やうつなど精神機能低下を認めるとされている(Held,2019).本症例も同様で,OT実施に影響した.趣味活動は不安など軽減するとされ(Pressman,2009),電子機器に触れたことで精神機能は改善した.達成可能な目標は自己効力感を向上するとされ(Pekmezi,2009),症例の得意な課題や段階的な動作練習により自己効力感を向上し,目標達成やQOLの改善に寄与した可能性がある.
集中治療後症候群(PICS)は,ICUに入室中あるいは退出後に生じる身体機能,認知機能,精神機能の障害である.PICS患者に対するQOL改善の作業療法(OT)として,趣味活動やニードの高い動作練習の報告は少ない.今回,非ST上昇型急性心筋梗塞(NSTEMI)に対し,緊急冠動脈パイパス術(CABG)と僧帽弁形成術(MVP)後にPICSを生じた高齢患者を担当した.ICU退室後よりOT処方され,精神機能や認知機能の改善と,トイレ動作の介助量が軽減し,QOLの改善を示したため報告する.
【症例紹介・説明と同意】
症例は,70代男性 (BMI:17.8kg/m2), 病前ADLは自立, 物理学の大学講師だった.趣味は電子機器に触れることであった.家族背景は妻と2人暮らしだった.診断名はNSTEMI,既往歴に慢性閉塞性肺疾患等があった.現病歴は,第1病日に呼吸困難となり当院搬送された. LVEFは高度低下, 左室拡大や僧帽弁閉鎖不全症を認めた.緊急でCABGとMVPが施行され,術後人工呼吸器管理となりICU入室した.第7病日,抜管/人工呼吸器離脱し,ICUを退室した.ICU退室後,第8病日よりOT処方されたが,体動や声掛け刺激がないと閉眼し,「もういいです」と発言きかれOT実施困難であった.趣味の電子機器の話しやラジオ操作ができる環境調整をしたことで活動性が向上し,第16病日よりOT実施可能となった.本発表に関して,症例に説明し同意を得た.
【OT評価(第16病日)】
Medical Research Council (MRC) score:40点, Functional Status Score for the Intensive Care Unit (FSS-ICU):15点.FIM(トイレ動作):1点.Vitality Index(VI):1点,MMSE:19点,HADS(不安/抑うつ):14/10点 .paper版ADOCで目標選定し,COPM(遂行度/満足度)は手すりでトイレまで歩き,ズボンの上げ下ろし動作ができる(1/1)とした. 5-level EuroQol 5-dimensional questionnaire (EQ-5D-5L):0.062であった.
【経過】
症例や他職種との共通目標で,手すり歩行しトイレ動作が監視と設定した.OTは,趣味活動の提供,認知的課題,トイレ動作練習を実施した.頻度と時間は,1日1回40分,週5回を転院(第50病日)まで継続した.
第16病日から第21病日, 物理学の課題を行い, 30から40分離床が可能となった.移乗動作練習から開始し,中等度介助だった.
第22病日から第34病日, TVリモコン操作し,ニュースを見るよう促した.便座への移乗動作は,手すりで軽度介助となり,ズボンの上げ下ろしを練習した. 歩行器歩行は, 臀部介助し5m歩行が可能となった.病棟で歩行器歩行の排泄誘導を開始したが,毎日失禁した.
第35病日から第46病日, 病棟でナースコールを押し, 手すり歩行とトイレ動作はすべて監視となった.症例から「トイレはできると思った」と発言あった.1週間で2回失禁に減少した.
【最終評価(第47病日)】
MRC:48点,FSS-ICU:29点,FIM(トイレ動作):5点,VI:7点,MMSE:23点,HADS:2/0点だった.COPM:7/7であり, EQ-5D-5L:0.543となった.
【考察】
PICS患者は,不安やうつなど精神機能低下を認めるとされている(Held,2019).本症例も同様で,OT実施に影響した.趣味活動は不安など軽減するとされ(Pressman,2009),電子機器に触れたことで精神機能は改善した.達成可能な目標は自己効力感を向上するとされ(Pekmezi,2009),症例の得意な課題や段階的な動作練習により自己効力感を向上し,目標達成やQOLの改善に寄与した可能性がある.