[PB-2-2] 平衡機能障害と高次脳機能障害,心不全を重複しADL拡大に難渋した症例
【序論】超高齢社会では複数疾患を同時に抱える患者が増え,重複障害という新たな課題に直面している.今回,平衡機能障害,高次脳機能障害,慢性心不全を重複しADL拡大に難渋した症例を担当し,包括的な状態把握,在宅生活へのシームレスな支援の重要性を感じたため報告する.本報告に際して本人家族より口頭同意を得た.
【症例紹介】70歳代女性 診断名:小脳梗塞,延髄外側症候群 併存疾患:慢性心不全,閉塞性肥大型心筋症,持続性心房細動 現病歴:めまい,嘔吐のためA病院へ入院.第2病日片麻痺を認め検査の結果脳梗塞と診断.同日B病院へ転院し外減圧術を施行.第30病日当院回復期リハビリテーション(以下リハ)病棟へ転院.生活歴:夫,子供との4人暮らしで,労作時呼吸困難感がありながらも自立した生活を送っていた.
【経過】(第30病日~)転院時,身体機能はSPPB0点,筋力低下(握力:右18.5/左7.5kgf),四肢体幹失調,易疲労性を認め,高次脳機能は全般的な機能障害に加え,病識は低下,会話も噛み合わない状態であった.ADLはFIM28/126点(運動:15/91,認知:13/35)と重度介助を要した.平衡機能障害に伴うめまいや嘔吐を認め積極的な介入が困難であった.第40病日心房細動を契機としたうっ血所見を認め,慢性心不全急性増悪の診断でB病院へ転院した.
(第59病日~)第59病日当院再転院以降,心不全症状として低心拍出所見,うっ血所見のモニタリングを強化し心不全増悪予防に努め,低負荷での運動療法と動作練習を実施した.また,多職種での情報共有を重視し,運動負荷量や介入時間,活動,環境の調整,内服薬の相談を実施した.めまいは改善したが,嘔吐や易疲労性が強く,運動負荷量の増加,排泄や入浴等ベッドから離れるADLの拡大が難しい状況が続いた.症例からは悲観的な発言や不安を聴取した.
(第110病日~)嘔吐,易疲労性に改善傾向を認め,運動負荷量の増加が可能となり,積極的な運動療法,ADL練習を開始した.その際,循環動態の変化と自覚的運動強度,翌日の体調を指標に運動負荷量を調整した.症例からは前向きな発言が増えた.
(第170病日~)退院時,身体機能はSPPB4点,筋力は握力:右25.8/左17.4kgf,体幹失調軽度と改善し,ADLはFIM81/126点(運動:59/91,認知:22/35)と拡大したが,立位活動での転倒の危険性が残った.高次脳機能は病識低下,遂行機能障害(FAB:12点),注意機能障害(TMT-J PartA154秒)を認めたため,転倒への配慮が難しく,自立した活動には至らなかった.再転院以降は心不全増悪なく経過した.在宅復帰を目指し,リハ見学,外出外泊練習にて,家族,地域スタッフとの情報共有,環境調整を実施した.情報共有は心不全のモニタリング方法や増悪因子,転倒対策を中心とした.外泊後,家族の疲労,不安が強い状態であった.退院が近づき症例からは自身を過大評価する発言が目立ち始めた.第208病日自宅へ退院した.
(退院2週間後)転倒や心不全増悪なく生活しているが,単独での動き出しが多く症例から目が離せない等,介護負担が大きい状況であった.介護指導,環境調整,デイサービス頻度増加にて対応した.
【考察】
本症例は既往の慢性心不全,小脳梗塞に伴う平衡機能障害と高次脳機能障害が相互に影響しADL拡大を阻害する要因となった.病態の複雑な重複障害を個別的にではなく包括的に捉え,多職種で共有し,状態に合わせ柔軟に対応する事が重要であると考えられる.また,リハ見学や外出外泊練習,家族,地域スタッフとの連携により在宅生活へ移行できたが,家族の介護負担の大きな状況となった.本人,家族に対するシームレスな支援が重要であると考えられる.
【症例紹介】70歳代女性 診断名:小脳梗塞,延髄外側症候群 併存疾患:慢性心不全,閉塞性肥大型心筋症,持続性心房細動 現病歴:めまい,嘔吐のためA病院へ入院.第2病日片麻痺を認め検査の結果脳梗塞と診断.同日B病院へ転院し外減圧術を施行.第30病日当院回復期リハビリテーション(以下リハ)病棟へ転院.生活歴:夫,子供との4人暮らしで,労作時呼吸困難感がありながらも自立した生活を送っていた.
【経過】(第30病日~)転院時,身体機能はSPPB0点,筋力低下(握力:右18.5/左7.5kgf),四肢体幹失調,易疲労性を認め,高次脳機能は全般的な機能障害に加え,病識は低下,会話も噛み合わない状態であった.ADLはFIM28/126点(運動:15/91,認知:13/35)と重度介助を要した.平衡機能障害に伴うめまいや嘔吐を認め積極的な介入が困難であった.第40病日心房細動を契機としたうっ血所見を認め,慢性心不全急性増悪の診断でB病院へ転院した.
(第59病日~)第59病日当院再転院以降,心不全症状として低心拍出所見,うっ血所見のモニタリングを強化し心不全増悪予防に努め,低負荷での運動療法と動作練習を実施した.また,多職種での情報共有を重視し,運動負荷量や介入時間,活動,環境の調整,内服薬の相談を実施した.めまいは改善したが,嘔吐や易疲労性が強く,運動負荷量の増加,排泄や入浴等ベッドから離れるADLの拡大が難しい状況が続いた.症例からは悲観的な発言や不安を聴取した.
(第110病日~)嘔吐,易疲労性に改善傾向を認め,運動負荷量の増加が可能となり,積極的な運動療法,ADL練習を開始した.その際,循環動態の変化と自覚的運動強度,翌日の体調を指標に運動負荷量を調整した.症例からは前向きな発言が増えた.
(第170病日~)退院時,身体機能はSPPB4点,筋力は握力:右25.8/左17.4kgf,体幹失調軽度と改善し,ADLはFIM81/126点(運動:59/91,認知:22/35)と拡大したが,立位活動での転倒の危険性が残った.高次脳機能は病識低下,遂行機能障害(FAB:12点),注意機能障害(TMT-J PartA154秒)を認めたため,転倒への配慮が難しく,自立した活動には至らなかった.再転院以降は心不全増悪なく経過した.在宅復帰を目指し,リハ見学,外出外泊練習にて,家族,地域スタッフとの情報共有,環境調整を実施した.情報共有は心不全のモニタリング方法や増悪因子,転倒対策を中心とした.外泊後,家族の疲労,不安が強い状態であった.退院が近づき症例からは自身を過大評価する発言が目立ち始めた.第208病日自宅へ退院した.
(退院2週間後)転倒や心不全増悪なく生活しているが,単独での動き出しが多く症例から目が離せない等,介護負担が大きい状況であった.介護指導,環境調整,デイサービス頻度増加にて対応した.
【考察】
本症例は既往の慢性心不全,小脳梗塞に伴う平衡機能障害と高次脳機能障害が相互に影響しADL拡大を阻害する要因となった.病態の複雑な重複障害を個別的にではなく包括的に捉え,多職種で共有し,状態に合わせ柔軟に対応する事が重要であると考えられる.また,リハ見学や外出外泊練習,家族,地域スタッフとの連携により在宅生活へ移行できたが,家族の介護負担の大きな状況となった.本人,家族に対するシームレスな支援が重要であると考えられる.