[PB-2-4] 心不全患者における左室駆出率と認知および前頭葉機能との関連性
【序論】
近年,認知機能および前頭葉機能の低下は,心不全 (HF) 増悪による再入院の原因の一つとして考えられている.一方,HF患者において,低心機能が脳活動の低下に影響すると考えられているが,臨床においては,収縮機能が保たれたHF患者でも認知機能が低下する例を経験する.収縮不全 (HFrEF) および拡張不全 (HFpEF) を含むHF患者において,左室駆出率 (LVEF) が認知機能および前頭葉機能に与える影響を調査することで,HF増悪の危険性を察知し,再入院予防に活用できる可能性がある.そこで本研究では,HF患者におけるLVEFと認知および前頭葉機能との関連性について検討した.
【対象・方法】
2023年5月1日から12月31日までに心不全と診断され,当院に入院された29例のうち,既往に脳血管障害などを有する7例を除外した22例を対象とした.男性9例,女性13例,在院日数は15.5±5.0日であり,入院時の脳性ナトリウム利尿ペプチド (BNP) は935.6±525.8pg/mlであった.全例に作業療法および理学療法を実施し,作業療法は入院後4.1±3.4日,理学療法は入院後2.2±2.1日に開始した.作業療法の内容として,離床,歩行練習,トイレまたは更衣動作練習を行なった.Barthel Index (BI) は,リハビリ開始時が38.2±26.9点,終了時が78.3±24.8点であり,自宅退院は19例,転院は3例であった.
認知機能および前頭葉機能の評価は作業療法開始時に行い,認知機能検査 (MMSE) および前頭葉機能検査 (FAB) を測定した.入院中に心臓超音波検査が施行され,LVEFを抽出した.統計解析には,SPSS25.0Jを使用し,MMSE,FAB,または年齢とLVEFとの関連性を,Spearmanの順位相関係数を用いた.その後,LVEFが50%未満の11例をHFrEF群,50%以上の11例をHFpEF群に分け,2群間におけるMMSE,FAB,および年齢の差を,Mann-WhitneyのU検定を用いて比較した.すべての検定における有意水準は5%未満とした.なお,全ての対象者に研究内容を説明した後,同意を得て開始した.
【結果】
MMSEは25.0±3.3点,FABは12.5±4.6点であり,年齢は82.9±14.3歳,LVEFは47.5±15.1%であった.また,LVEFとMMSE (r = -0.475,p < 0.05) またはFAB (r = -0.482,p < 0.05) との間に有意な相関が認められた.年齢との間に有意な相関は認められなかった.2群間比較にて,MMSE (HFrEF群26.7±2.2点,HFpEF群23.3±3.3点) およびFAB (HFrEF群14.9±2.1点,HFpEF群10.0±5.1点) において,それぞれ有意差が認められた (p < 0.05).年齢に有意差は認められなかった.
【考察】
LVEFとMMSEおよびFABとの間に負の相関関係が認められた原因として,収縮不全よりも,拡張不全によって,認知機能および前頭葉機能は低下しやすい可能性が考えられる.また,HFrEF群に比べてHFpEF群は MMSEおよびFABが有意に低下した.原因として,HFpEFの原因となる高血圧などの血管機能低下が,脳活動に影響を及ぼした可能性が考えられる.更に,年齢はLVEFと無相関であり,群間比較において有意差が認められなかったため,加齢による影響に関わらず,HFpEFでは認知および前頭葉機能が低下する可能性が考えられる.これらのことから,HFpEF を有するHF患者において,服薬および塩分摂取などの生活管理は,他者からの支援を考慮する必要があると考える.本研究の結果より,LVEFが比較的に保たれたHF患者において,MMSEおよびFAB は低下しやすい可能性が示唆された.
近年,認知機能および前頭葉機能の低下は,心不全 (HF) 増悪による再入院の原因の一つとして考えられている.一方,HF患者において,低心機能が脳活動の低下に影響すると考えられているが,臨床においては,収縮機能が保たれたHF患者でも認知機能が低下する例を経験する.収縮不全 (HFrEF) および拡張不全 (HFpEF) を含むHF患者において,左室駆出率 (LVEF) が認知機能および前頭葉機能に与える影響を調査することで,HF増悪の危険性を察知し,再入院予防に活用できる可能性がある.そこで本研究では,HF患者におけるLVEFと認知および前頭葉機能との関連性について検討した.
【対象・方法】
2023年5月1日から12月31日までに心不全と診断され,当院に入院された29例のうち,既往に脳血管障害などを有する7例を除外した22例を対象とした.男性9例,女性13例,在院日数は15.5±5.0日であり,入院時の脳性ナトリウム利尿ペプチド (BNP) は935.6±525.8pg/mlであった.全例に作業療法および理学療法を実施し,作業療法は入院後4.1±3.4日,理学療法は入院後2.2±2.1日に開始した.作業療法の内容として,離床,歩行練習,トイレまたは更衣動作練習を行なった.Barthel Index (BI) は,リハビリ開始時が38.2±26.9点,終了時が78.3±24.8点であり,自宅退院は19例,転院は3例であった.
認知機能および前頭葉機能の評価は作業療法開始時に行い,認知機能検査 (MMSE) および前頭葉機能検査 (FAB) を測定した.入院中に心臓超音波検査が施行され,LVEFを抽出した.統計解析には,SPSS25.0Jを使用し,MMSE,FAB,または年齢とLVEFとの関連性を,Spearmanの順位相関係数を用いた.その後,LVEFが50%未満の11例をHFrEF群,50%以上の11例をHFpEF群に分け,2群間におけるMMSE,FAB,および年齢の差を,Mann-WhitneyのU検定を用いて比較した.すべての検定における有意水準は5%未満とした.なお,全ての対象者に研究内容を説明した後,同意を得て開始した.
【結果】
MMSEは25.0±3.3点,FABは12.5±4.6点であり,年齢は82.9±14.3歳,LVEFは47.5±15.1%であった.また,LVEFとMMSE (r = -0.475,p < 0.05) またはFAB (r = -0.482,p < 0.05) との間に有意な相関が認められた.年齢との間に有意な相関は認められなかった.2群間比較にて,MMSE (HFrEF群26.7±2.2点,HFpEF群23.3±3.3点) およびFAB (HFrEF群14.9±2.1点,HFpEF群10.0±5.1点) において,それぞれ有意差が認められた (p < 0.05).年齢に有意差は認められなかった.
【考察】
LVEFとMMSEおよびFABとの間に負の相関関係が認められた原因として,収縮不全よりも,拡張不全によって,認知機能および前頭葉機能は低下しやすい可能性が考えられる.また,HFrEF群に比べてHFpEF群は MMSEおよびFABが有意に低下した.原因として,HFpEFの原因となる高血圧などの血管機能低下が,脳活動に影響を及ぼした可能性が考えられる.更に,年齢はLVEFと無相関であり,群間比較において有意差が認められなかったため,加齢による影響に関わらず,HFpEFでは認知および前頭葉機能が低下する可能性が考えられる.これらのことから,HFpEF を有するHF患者において,服薬および塩分摂取などの生活管理は,他者からの支援を考慮する必要があると考える.本研究の結果より,LVEFが比較的に保たれたHF患者において,MMSEおよびFAB は低下しやすい可能性が示唆された.