第58回日本作業療法学会

Presentation information

ポスター

心大血管疾患

[PB-3] ポスター:心大血管疾患 3

Sun. Nov 10, 2024 8:30 AM - 9:30 AM ポスター会場 (大ホール)

[PB-3-2] 心臓リハビリテーションにおける作業療法の現状

文献研究による傾向と考察

井上 俊輔1,2, 石橋 裕3 (1.社会医療法人 一成会 木村病院, 2.東京都立大学 健康福祉学部作業療法学科 客員研究員, 3.東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法科学域)

【はじめに】
 日本作業療法士協会(2014)は, 心大血管疾患リハビリテーションのチームにおける作業療法士の役割について, 心機能の状態を考慮し, 徹底したリスク管理の下で行われる効率的な動作遂行への支援であり, 患者のニーズや役割に応じて, 日常生活活動指導, 環境調整指導を中心に構成されるものであると示している. 一方で, 心疾患の対象者に関与する作業療法士は少なく, これまでに心臓リハビリテーション(以下, 心リハ)における作業療法の取り組みを系統的に調査した報告は見当たらなかった. そこで, 本研究では, 心リハにおける作業療法の現状を概観することを目的に文献研究を行った.
【方法】
 事例の抽出は, 日本作業療法士協会の事例報告登録システムを使用した. 検索対象は, 心大血管疾患リハビリテーション料の施設基準に作業療法士が明記された2014年の翌年, 2015年から2023年の9年間とした. 対象事例は, 疾患コードから「循環器疾患」を選択し, その結果138件が該当した. 該当した事例のうち, 主な疾患が心リハの対象疾患になっていない事例を除外した23件を対象事例とした. 対象事例の分析手順は, 1.公開日, 2.表題, 3.年代, 4.性別, 5.時期, 6.疾患, 7.目標, 8.支援内容, 9.評価指標の9項目を設定し, 抽出した内容を要約表にまとめた. その後, 年代, 性別, 時期, 疾患, 目標, 支援内容, 評価指標に関する結果をまとめた. 年代, 性別は, 単純集計を行った. 時期, 疾患は, 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2021)の項目を参考に分類し, 複数の時期や疾患が該当したものはそれぞれ単純集計を行った. 目標, 支援内容, 評価指標は, ICFの項目に分類した.
【結果】
 年代は, 70歳代7件, 80歳代5件, 50歳代4件, 60歳代3件, 90歳代と30歳代が2件であり, 約7割の事例が60歳以上の高齢者であった. 性別は, 女性12件, 男性10件, 不明1件であった. 疾患は, 心不全15件, 冠動脈疾患6件, 心臓手術後4件, 不整脈・デバイス埋め込み後4件, 大血管疾患3件, 埋め込み型補助人工心臓装着後2件であった. 時期は, 前期回復期20件, 急性期12件, 後期回復期5件であり, 8割以上が入院中の事例であった. 目標は, 活動20件, 心身機能9件, 参加7件, 環境4件, 個人因子3件であった. 支援内容は, 活動23件, 心身機能18件, 環境12件, 参加8件, 個人因子5件であった. 評価指標は, 心身機能23件, 活動23件, 個人因子22件, 環境21件, 参加10件であった. ICFに分類した3項目は, 全て活動が最も多かった(評価指標は心身機能と活動が同数).
【考察・結論】
 今回, 文献研究した事例においては, 時期では前期回復期が多く, 目標, 支援内容, 評価指標では活動が最も多かった. 前期回復期は退院, 家庭復帰に向けて心リハを行う時期であり, 退院先でのADL・IADLを想定して活動への支援が多く行われていると考えられた. 一方で, 目標, 支援内容, 評価指標では, 活動と比較し参加が少なかった. 心リハは包括的かつ長期の介入プログラムであるため, 入院時より参加への視点も持つことで, 退院後の円滑な社会復帰に繋がるのではないかと考えられた.