[PB-3-4] 認知機能障害を合併した高齢心不全患者への介入と認知症性疾患分類
【背景】
高齢化の進展に伴い,認知症の有病率も年々増加している.本邦の65歳以上における認知症患者数は2025年には675万人(有病率18.5%)と5.4人に1人程度が認知症になると予測されている.また,心不全患者も2035年に130万人に達すると予測されており,海外では心不全患者の約25∼80%が認知機能障害を合併していると報告されている.認知機能障害を合併する心不全患者は,服薬厳守・減塩食などの心不全管理が十分に行えず,心不全増悪入院を繰り返す傾向にあるため,患者の認知機能を把握し心不全指導をする必要がある.
【目的】
当院認知症ケアサポートチーム(Dementia-care support team:D-CAST)介入群と非介入群の退院3年以内の心不全再入院回避率を調査した.また,脳血流シンチグラフィ検査(SPECT)による心不全患者の認知症性疾患分類も調査した.
【対象・方法】
対象は2016年5月~2017年4月に心不全指導前の評価目的で作業療法士(OT)へ認知機能評価依頼があり,協力の得られた患者63名 (年齢75.7±10.2歳,男性41名)とし,対象者をD-CAST介入群,非介入群に分類した.除外基準は,検査拒否・寝たきり・高度難聴・高度視力低下などとした.既往歴・血液検査・心臓超音波検査・心不全指導方法・心不全指導対象者・退院後3年以内の心不全増悪による再入院時情報などは診療録より後方視的に調査した.また介入群にはMMSE, SPECTを退院2週間前に評価した.
【倫理】
本研究は心臓病センター榊原病院倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:B201707-55).
【結果】
介入群25名(47%)未介入群38名,(53%)であった.高血圧・糖尿病・脳血管疾患・腎機能障害などの併存疾患に差はなかった.介入群は高齢で(年齢81.8vs71.6歳,P<0.001),認知機能低下を認め(MMSE21.5点vs26.1±2.9点,P<0.001),心不全指導は簡素化した心不全手帳や服薬体重管理のみに重点を絞り(55%vs0%,P<0.001),心不全指導対象者は本人のみでなく,家族や在宅スタッフにも実施していた(64%vs3%,P<0.001).
また,退院後3年の心不全増悪による再入院は非介入群で多く(14%vs47%,P<0.01),救急搬送率も高かった(0%vs21%,P<0.001).未介入群が有意に低下していた.
また,介入群で実施したSPECTでは,正常2名(8%),軽度認知機能障害(MCI)5名(20%),アルツハイマー型認知症(AD)10名(40%),前頭側頭型認知症(FTD)5名(20%),脳血管性認知症(VaD)2名(8%),レビー小体型認知症(DLB)1名(4%)であった.
【結論】
MMSEやSPECTを用いて,客観的に患者の認知機能や心不全管理能力を把握し,家族を含めた患者背景を把握することが重要である.また,患者個々に応じた心不全指導を行うことや,本人のみでなく家族や在宅スタッフと情報共有をし,心不全増悪による再入院を軽減させることが出来る可能性が示唆された.
高齢化の進展に伴い,認知症の有病率も年々増加している.本邦の65歳以上における認知症患者数は2025年には675万人(有病率18.5%)と5.4人に1人程度が認知症になると予測されている.また,心不全患者も2035年に130万人に達すると予測されており,海外では心不全患者の約25∼80%が認知機能障害を合併していると報告されている.認知機能障害を合併する心不全患者は,服薬厳守・減塩食などの心不全管理が十分に行えず,心不全増悪入院を繰り返す傾向にあるため,患者の認知機能を把握し心不全指導をする必要がある.
【目的】
当院認知症ケアサポートチーム(Dementia-care support team:D-CAST)介入群と非介入群の退院3年以内の心不全再入院回避率を調査した.また,脳血流シンチグラフィ検査(SPECT)による心不全患者の認知症性疾患分類も調査した.
【対象・方法】
対象は2016年5月~2017年4月に心不全指導前の評価目的で作業療法士(OT)へ認知機能評価依頼があり,協力の得られた患者63名 (年齢75.7±10.2歳,男性41名)とし,対象者をD-CAST介入群,非介入群に分類した.除外基準は,検査拒否・寝たきり・高度難聴・高度視力低下などとした.既往歴・血液検査・心臓超音波検査・心不全指導方法・心不全指導対象者・退院後3年以内の心不全増悪による再入院時情報などは診療録より後方視的に調査した.また介入群にはMMSE, SPECTを退院2週間前に評価した.
【倫理】
本研究は心臓病センター榊原病院倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:B201707-55).
【結果】
介入群25名(47%)未介入群38名,(53%)であった.高血圧・糖尿病・脳血管疾患・腎機能障害などの併存疾患に差はなかった.介入群は高齢で(年齢81.8vs71.6歳,P<0.001),認知機能低下を認め(MMSE21.5点vs26.1±2.9点,P<0.001),心不全指導は簡素化した心不全手帳や服薬体重管理のみに重点を絞り(55%vs0%,P<0.001),心不全指導対象者は本人のみでなく,家族や在宅スタッフにも実施していた(64%vs3%,P<0.001).
また,退院後3年の心不全増悪による再入院は非介入群で多く(14%vs47%,P<0.01),救急搬送率も高かった(0%vs21%,P<0.001).未介入群が有意に低下していた.
また,介入群で実施したSPECTでは,正常2名(8%),軽度認知機能障害(MCI)5名(20%),アルツハイマー型認知症(AD)10名(40%),前頭側頭型認知症(FTD)5名(20%),脳血管性認知症(VaD)2名(8%),レビー小体型認知症(DLB)1名(4%)であった.
【結論】
MMSEやSPECTを用いて,客観的に患者の認知機能や心不全管理能力を把握し,家族を含めた患者背景を把握することが重要である.また,患者個々に応じた心不全指導を行うことや,本人のみでなく家族や在宅スタッフと情報共有をし,心不全増悪による再入院を軽減させることが出来る可能性が示唆された.