[PC-1-1] 人工呼吸器管理下でトイレ歩行が自立した1例
ADOCを使用して多職種との目標共有
【はじめに】作業選択意思決定支援ソフト(Aid for Decision-making in Occupation Choice;以下,ADOC)の使用が,QOLやADL,費用対効果に効果的であると報告されている.また,ADOCを使用した情報共有が,多職種連携促進につながるといった報告もある.今回ADOCを用いることで多職種連携の促進と人工呼吸器管理であってもトイレ歩行自立となった事例を経験したため報告する.本報告に際し,十分に説明を行い,紙面で同意を得た.また,開示すべきCOI関係にある企業等はない.
【事例紹介】50歳代男性,入院前から慢性閉塞性肺疾患,若年性関節リウマチに伴う心膜炎・胸膜炎の既往を認め,在宅酸素療法(労作時NC2~3L),夜間に非侵襲的陽圧換気を使用しており,X-1年の肺機能検査で%VC45.2%,1秒率90.6%,DLCO58.0%と肺機能は著明に低下していた.入院前のADLは自立,公共交通機関を使用して1時間ほどかけて通勤し事務仕事を行っていた. X年Y月気道感染などを契機にCO2ナルコーシス,意識障害を認め入院となり同日集中治療室へ入室,挿管管理となった.10病日に気管切開術を施行され,15病日で一般病棟へ退室,20病日よりOT開始となった.
【OT評価】OT開始時のROMは肩関節屈曲右130°/左135°肘関節屈曲右105°/左90°伸展右-65°/左-55°手指もボタンホール変形とスワンネック変形があり上肢全体に屈曲拘縮を認めていた.上下肢MMTは3レベル,total-FIM44点(m-FIM13点,c-FIM31点であった). ICDSCは0-1点でせん妄は見られなかった. コミュニケーションは筆談やスマホに文字を打っていた.ADOC(アプリ版)で行いたい活動を聴取すると,食事・排泄・更衣・入浴・健康管理の5項目を選定し,満足度はどれも5段階のうち1であった.
【経過】リハビリ時には監視にて車椅子移乗や歩行練習が可能となるなど徐々に離床は促進されたが,ADLは全介助の状況が続いていた.人工呼吸器が離脱できないかもしれないという話がでると「リハビリをやっても呼吸器が外れないならやる意味がない」と受け入れが不良となったこともあった.意欲低下を防ぐためにできるADLを増やそうと看護師とのPトイレ排泄を提案してみたが,経鼻経管栄養での下痢症状が持続しており切迫性便失禁となっていたことから本人の受け入れがなく「自分の行きたいタイミングで1人でトイレに行かせてほしい」との訴えがあった.そこでADOCの目標設定説明シートで可視化しながら理学療法士,呼吸サポートチーム(RST)看護師,病棟看護師の多職種でディスカッションを行い,60病日にトイレ歩行のためにベッドや床頭台など居室内のレイアウト変更,人工呼吸器やモニターのコードをS字フックで整理するなどの環境整備を行い,人工呼吸器管理下であっても居室内トイレでの排泄を開始することができた.
【結果】人工呼吸器管理下であっても居室内トイレでの排泄は終日自立となり,95病日にADOCで再評価したところ排泄の満足度が1から4へ改善していた. m-FIMも54点と改善を認めた.
【考察】人工呼吸器管理患者の観察項目や急変時の対応などに不安を感じる看護師が多く,「できるはずがない」という医療者側の思い込みが早期離床の最大の障害と報告されている.会話が困難なためインタビュー形式よりはイラストで作業をイメージしやすいという観点から今回はADOCを使用した.さらに可視化できる情報共有手段であり,本症例においては身体機能が良好で,本人のできるADLを拡大させて意欲低下を防ぎたいという多職種の意思共有が促進され,協働につながったことでトイレ歩行自立が達成され,本人の満足度も改善したと考えられる.
【事例紹介】50歳代男性,入院前から慢性閉塞性肺疾患,若年性関節リウマチに伴う心膜炎・胸膜炎の既往を認め,在宅酸素療法(労作時NC2~3L),夜間に非侵襲的陽圧換気を使用しており,X-1年の肺機能検査で%VC45.2%,1秒率90.6%,DLCO58.0%と肺機能は著明に低下していた.入院前のADLは自立,公共交通機関を使用して1時間ほどかけて通勤し事務仕事を行っていた. X年Y月気道感染などを契機にCO2ナルコーシス,意識障害を認め入院となり同日集中治療室へ入室,挿管管理となった.10病日に気管切開術を施行され,15病日で一般病棟へ退室,20病日よりOT開始となった.
【OT評価】OT開始時のROMは肩関節屈曲右130°/左135°肘関節屈曲右105°/左90°伸展右-65°/左-55°手指もボタンホール変形とスワンネック変形があり上肢全体に屈曲拘縮を認めていた.上下肢MMTは3レベル,total-FIM44点(m-FIM13点,c-FIM31点であった). ICDSCは0-1点でせん妄は見られなかった. コミュニケーションは筆談やスマホに文字を打っていた.ADOC(アプリ版)で行いたい活動を聴取すると,食事・排泄・更衣・入浴・健康管理の5項目を選定し,満足度はどれも5段階のうち1であった.
【経過】リハビリ時には監視にて車椅子移乗や歩行練習が可能となるなど徐々に離床は促進されたが,ADLは全介助の状況が続いていた.人工呼吸器が離脱できないかもしれないという話がでると「リハビリをやっても呼吸器が外れないならやる意味がない」と受け入れが不良となったこともあった.意欲低下を防ぐためにできるADLを増やそうと看護師とのPトイレ排泄を提案してみたが,経鼻経管栄養での下痢症状が持続しており切迫性便失禁となっていたことから本人の受け入れがなく「自分の行きたいタイミングで1人でトイレに行かせてほしい」との訴えがあった.そこでADOCの目標設定説明シートで可視化しながら理学療法士,呼吸サポートチーム(RST)看護師,病棟看護師の多職種でディスカッションを行い,60病日にトイレ歩行のためにベッドや床頭台など居室内のレイアウト変更,人工呼吸器やモニターのコードをS字フックで整理するなどの環境整備を行い,人工呼吸器管理下であっても居室内トイレでの排泄を開始することができた.
【結果】人工呼吸器管理下であっても居室内トイレでの排泄は終日自立となり,95病日にADOCで再評価したところ排泄の満足度が1から4へ改善していた. m-FIMも54点と改善を認めた.
【考察】人工呼吸器管理患者の観察項目や急変時の対応などに不安を感じる看護師が多く,「できるはずがない」という医療者側の思い込みが早期離床の最大の障害と報告されている.会話が困難なためインタビュー形式よりはイラストで作業をイメージしやすいという観点から今回はADOCを使用した.さらに可視化できる情報共有手段であり,本症例においては身体機能が良好で,本人のできるADLを拡大させて意欲低下を防ぎたいという多職種の意思共有が促進され,協働につながったことでトイレ歩行自立が達成され,本人の満足度も改善したと考えられる.