[PC-1-2] COPD患者に対し,生きがいに着目したことでセルフマネジメント教育が有効に働き,身体活動性が向上した一例
【はじめに】「身体活動性の低い慢性閉塞性肺疾患(以下,COPD)患者では,高い患者に比べ生存率は有意に低く,身体活動レベルがCOPD死亡の最大の危険因子である」と報告されている.今回,COPD急性増悪により,ADLや趣味に制限が生じた症例に対し,生きがいに着目し,達成のためにセルフマネジメント教育を行い身体活動性が向上した症例を経験したため報告する.なお,本症例には報告の主旨を説明し,同意を得た.
【症例紹介】70歳男性.COPD急性増悪.動作時の強い呼吸苦の為,当院へ在宅酸素療法(以下,HOT)導入目的にX日に入院となった.入院日より作業療法(以下,OT)を開始.労作時呼吸苦にて排泄時は,こまめな休憩を要していた.入浴では,洗髪と洗体を同日に実施できず,浴槽へ浸かることも避けていた.また,以前は畑作業や神社巡りを妻と行っていたが,現在は数mの歩行で息が切れる為,車内で妻の帰りを待っている.
【OT評価(X日)】第一印象は,真面目で勤勉.安静時SpO₂はRoom Air(以下,RA)で95%.労作時SpO₂はRAでトイレ移動し85%へ低下.息切れが強く,次の動作へ移る際に休憩を要した.認知機能はMoca-J30点.BIは85点,CATは21点.ADL場面での修正Borgスケール(以下,BS)は更衣4点,トイレ5点,入浴6点.
【経過】初日に「肺の健康手帳」を配布し,日々の変化を可視化することでセルフマネジメントを促した.当初は手帳内にある「退院後に実現させたい目標」の記載を促すも,その場では浮かばなかった.そこで傾聴と対話を続け,「買い物に行っても苦しくて一緒に店内を回れない」「紅葉の時も1人で写真を撮りに行かせて,僕は車で待機して情けなかった」との発言を導き出し,症例の心理に妻への想いが強いことを確認した.更に,HOTを使用し生活範囲が拡大した前例を紹介し記載することができた.COPDと身体活動性の関連性を説明後,歩数計測を開始した.初日の歩数は300歩程度であり,自身の活動量の低さを実感された.目標歩数を前日以上に設定し,介入毎に確認後,歩数の変化に賞賛を行った.その後自主的に歩行されるようになり,自ら目標歩数を1000歩以上と定め歩数を伸ばしていった.ADL指導では,疑問についての質問もされながら呼吸苦軽減の動作を獲得した.環境調整では,ADL指導で得た知識と結びつけることで呼吸苦軽減に繋がるものを選択した.また,HOTを使用し,操作練習,酸素化評価を行い各酸素流量を決定した.
【最終評価(X+10日に自宅退院)】労作時は酸素濃縮器を肩掛けで使用.労作時酸素需要は,同調式2L/分・入浴時2L/分.BIは100点.CATは11点.ADL場面でのBSは更衣2点,トイレ2点,入浴2点.
【退院後評価・結果】退院1ヶ月後の様子を聴取.HOT・手帳は継続.入浴は毎日全身を洗い,浴槽にも浸かれていた.畑作業は,負担の少ない花の栽培を妻と再開.歩行は1日1000歩以上を目標として継続.外出は妻と寿司屋やカフェに行き食事を楽しめていた.また,「日記をつけることで毎日の頑張りが目に見えて分かって良い.妻と,良い日は誉めて,悪い日は反省して続けてやれてます」との声も聞かれた.
【考察】本介入では,「やりたいけど出来ていない」ことを対話の中で引き出し,共通目標として設定することで,患者主体で目標に向かって取り組め,自身で健康状態の管理が出来るようになったと考えられた.また,手帳や歩数計の使用で,身体活動性や健康状態を可視化し,成功体験の積み重ねや周囲からの賞賛,評価内容の共有によって自己効力感が得られ,BSの軽減等の行動変容に繋がったと考えられた.元々几帳面で勤勉な症例の性格が,手帳を使用したセルフマネジメントと相性がよく,退院後も継続できていたため,入院前には諦めていた趣味や妻との外出を再開することができたと考える.
【症例紹介】70歳男性.COPD急性増悪.動作時の強い呼吸苦の為,当院へ在宅酸素療法(以下,HOT)導入目的にX日に入院となった.入院日より作業療法(以下,OT)を開始.労作時呼吸苦にて排泄時は,こまめな休憩を要していた.入浴では,洗髪と洗体を同日に実施できず,浴槽へ浸かることも避けていた.また,以前は畑作業や神社巡りを妻と行っていたが,現在は数mの歩行で息が切れる為,車内で妻の帰りを待っている.
【OT評価(X日)】第一印象は,真面目で勤勉.安静時SpO₂はRoom Air(以下,RA)で95%.労作時SpO₂はRAでトイレ移動し85%へ低下.息切れが強く,次の動作へ移る際に休憩を要した.認知機能はMoca-J30点.BIは85点,CATは21点.ADL場面での修正Borgスケール(以下,BS)は更衣4点,トイレ5点,入浴6点.
【経過】初日に「肺の健康手帳」を配布し,日々の変化を可視化することでセルフマネジメントを促した.当初は手帳内にある「退院後に実現させたい目標」の記載を促すも,その場では浮かばなかった.そこで傾聴と対話を続け,「買い物に行っても苦しくて一緒に店内を回れない」「紅葉の時も1人で写真を撮りに行かせて,僕は車で待機して情けなかった」との発言を導き出し,症例の心理に妻への想いが強いことを確認した.更に,HOTを使用し生活範囲が拡大した前例を紹介し記載することができた.COPDと身体活動性の関連性を説明後,歩数計測を開始した.初日の歩数は300歩程度であり,自身の活動量の低さを実感された.目標歩数を前日以上に設定し,介入毎に確認後,歩数の変化に賞賛を行った.その後自主的に歩行されるようになり,自ら目標歩数を1000歩以上と定め歩数を伸ばしていった.ADL指導では,疑問についての質問もされながら呼吸苦軽減の動作を獲得した.環境調整では,ADL指導で得た知識と結びつけることで呼吸苦軽減に繋がるものを選択した.また,HOTを使用し,操作練習,酸素化評価を行い各酸素流量を決定した.
【最終評価(X+10日に自宅退院)】労作時は酸素濃縮器を肩掛けで使用.労作時酸素需要は,同調式2L/分・入浴時2L/分.BIは100点.CATは11点.ADL場面でのBSは更衣2点,トイレ2点,入浴2点.
【退院後評価・結果】退院1ヶ月後の様子を聴取.HOT・手帳は継続.入浴は毎日全身を洗い,浴槽にも浸かれていた.畑作業は,負担の少ない花の栽培を妻と再開.歩行は1日1000歩以上を目標として継続.外出は妻と寿司屋やカフェに行き食事を楽しめていた.また,「日記をつけることで毎日の頑張りが目に見えて分かって良い.妻と,良い日は誉めて,悪い日は反省して続けてやれてます」との声も聞かれた.
【考察】本介入では,「やりたいけど出来ていない」ことを対話の中で引き出し,共通目標として設定することで,患者主体で目標に向かって取り組め,自身で健康状態の管理が出来るようになったと考えられた.また,手帳や歩数計の使用で,身体活動性や健康状態を可視化し,成功体験の積み重ねや周囲からの賞賛,評価内容の共有によって自己効力感が得られ,BSの軽減等の行動変容に繋がったと考えられた.元々几帳面で勤勉な症例の性格が,手帳を使用したセルフマネジメントと相性がよく,退院後も継続できていたため,入院前には諦めていた趣味や妻との外出を再開することができたと考える.