第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

呼吸器疾患

[PC-1] ポスター:呼吸器疾患 1 

2024年11月9日(土) 11:30 〜 12:30 ポスター会場 (大ホール)

[PC-1-4] 高齢肺炎患者の入院期間に影響を及ぼす因子:単一施設過去起点コホート研究

殿内 優斗1, 片岡 裕貴2 (1.京都民医連あすかい病院 リハビリテーション部, 2.京都民医連あすかい病院 内科)

【はじめに】
高齢者肺炎は重要な公衆衛生上の問題である.厚生労働省による令和2年患者調査の概況では,肺炎入院患者は約2万4千人であり,その内83%を75歳以上の高齢者が占めている.また,入院期間は病院管理の効率性や患者のケアの質の指標となり,入院期間の短縮は医療資源の効率的な利用や医療コストの削減および患者ケアの質の改善に寄与する.先行研究にて市中肺炎患者の入院期間を予測する因子に関する研究はいくつかあるが,75歳以上の肺炎患者を対象とした報告は少ない.そのため,本研究では75歳以上の高齢肺炎患者の入院期間に影響を及ぼす因子を明らかにすることを目的とした.
【方法】
本研究は既存の医療記録データを利用した過去起点コホート研究である.2016年4月から2022年3月までの期間に,二次救急医療機関である当院を退院した75歳以上の肺炎(ICD10コード J09-18)患者を対象とした.診断名がインフルエンザまたはインフルエンザ関連肺炎(ICD10コード J09-11)の患者は除外した.また,予測因子に欠損値がある対象も除外した.予測因子として,性別,年齢,入退院時のBarthel Index(BI),身長,体重,Body Mass Index (BMI),血液検査の結果,経管栄養の有無,チャ—ルソン併存疾患指数(Charlson Comorbidity Index; CCI),免疫機能バイオマーカーである好中球対リンパ球比(Neutrophil-to-lymphocyte Ratio; NLR),老年者栄養リスク指数(Geriatric Nutritional Risk Index; GNRI)を抽出した.説明変数を「性別」「入院時BI」「血液検査の結果(ヘモグロビン値,AST値)」「CCI」「GNRI」,イベント変数を「退院」,競合リスクを「死亡」としたFine-Gray回帰分析を用いて,入院期間に関連する要因を分析した.解析には,統計ソフトR studioを使用した.統計学的有意水準は5%とした.尚,本研究はA病院倫理委員会(ID:137)によって承認され,情報公開を行い拒否の機会を提供した.また,演題発表内容に関連し開示すべき利益相反関係にある企業等は無い.
【結果】
解析には対象期間中の入院423名のうち336名が含まれた.全体の退院者数は280名(83%),死亡者数は38名(11%),転院者数は18名(6%)であった.入院期間の中央値は26日(四分位範囲 15 - 51)であった.Fine-Gray回帰分析よりNLRが5点以上の患者では,調整ハザード比は0.54 (95%信頼区間0.39 - 0.75)と高齢者肺炎患者の入院期間の増加に相関している可能性が示唆された.
【結論】
高齢肺炎患者では,退院時の高NLR値が入院期間の増加に関する潜在的な予測因子となる可能性がある.患者の院内カンファレンス中にこれらの結果を共有することで,医療チーム,患者,介護者が入院期間の増加を予測するのに役立つかもしれない.しかし,本研究結果の再現性を検証するためには,さらなる質の高い研究が必要である.