第58回日本作業療法学会

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ポスター

呼吸器疾患

[PC-2] ポスター:呼吸器疾患 2 

Sat. Nov 9, 2024 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (大ホール)

[PC-2-1] 間質性肺疾患急性増悪患者の酸素療法離脱に対する早期離床と離床進行度の影響

町田 直之, 岡田 康佑, 馬場 優季, 小野田 翔太 (医療法人社団 上尾中央総合病院 診療技術部 リハビリテーション技術科)

【序論】間質性肺疾患(以下ILD)は様々な基準により分類され,一部の分類では5年生存率が30%と言われ,急性増悪の経過を辿る患者は更に予後不良とされる.ILDの主症状は労作時の低酸素血症が挙げられ,酸素療法を離脱できずに退院する症例を経験する.また重症例はICUに入室するが,病状悪化を危惧し離床進行に悩む機会も多い.在宅酸素療法について宮崎らは,ILDに対し生存率を改善すると証明されていないが,低酸素性肺血管攣縮の予防に有効と報告しており,退院後の疾病管理には重要と考える.当院では退院支援を進める際に多職種で酸素療法の継続について検討しているが,急性期病院ではより早期の判断を求められる.ILD急性増悪症例に対し,早期離床や離床進行度が酸素療法離脱に影響を及ぼすか否かの報告は渉猟する限り見受けられない.
【目的】ILD急性増悪症例に対し,ICUにおける早期離床や離床進行度が酸素療法離脱可否に影響があるか明らかにすること.
【対象と方法】対象は2018年1月~2023年12月末までに当院ICU,HCUにILD急性増悪で入院した377例のうち,入院前よりADLがベッド上または在宅酸素療法を使用していた症例,原疾患の増悪を要因に死亡退院した症例を除外し73例とした.基本情報等を診療録より後方視的に調査し,退院時に酸素療法を離脱した症例を離脱群33例(男性24例,年齢80±13.9歳),それ以外を離脱不可群40例(男性31例,年齢77±8.6歳)に分類した.酸素療法の離脱は労作時の酸素飽和度を評価し多職種で判断した.統計学的解析は,従属変数を酸素療法離脱可否,独立変数を離床達成日数,離床進行度としてICU退室時のICU mobility scale(以下IMS),交絡因子に喫煙指数,入院時栄養状態(Geriatric Nutritional Risk Index:以下GNRI),ICU入室時のP/F比,APACHEⅡscore,SOFA scoreとした多重ロジスティック回帰分析を実施した.離床は当院離床プロトコルに準じ実施し,車椅子乗車20分以上達成を離床達成の定義とした.統計処理はR(version4.3.2)を用い,統計学的有意水準は5%とした.倫理的配慮として,本研究は当院倫理委員会(承認番号1199)にて承認を得て実施した.【結果】各変数の内訳は離脱群/離脱不可群で,離床達成日数3±5.6日/4.5±9.9日,IMS8±2.3/5±2.8,GNRI91.3±13.1/81.6±13.6,喫煙指数220±569.7/800±654.8,P/F 比261±89.1/157±78.4,APACHEⅡscore12±4.1/17±6.2,SOFA score1±2.7/3±2.2であった.多重ロジスティック回帰分析の結果は,IMS(OR 0.72,95%CI 0.53-0.93),APACHEⅡscore(OR 1.16,95%CI 1.02-1.36),GNRI(OR 0.94,95%CI 0.88-0.98),喫煙指数(OR 1.01,95%CI 1.00-1.02)が抽出された(尤度比検定p<0.01,Hosmer-Lemeshow検定p=0.91,判別的中率83.56%).VIFはいずれも10未満で多重共線性に問題は無かった.
【考察】ILD急性増悪患者の酸素療法離脱に影響を与える因子として,IMSが抽出されICUにおける離床進行度の影響が示唆された.ただし交絡因子として扱ったAPACHEⅡscore,栄養状態,喫煙指数も抽出されており,重症病態や栄養状態不良に伴う骨格筋量の低下及び筋酸素抽出能低下による酸素需要の増加や,長年の喫煙による呼吸機能の低下が酸素療法離脱に影響を与えている可能性も考えられる.一方で離床達成日数は影響度として抽出されず離床達成時期においては検討の余地があると考える.離脱不可群におけるIMSの中央値は5(ベッドから椅子への移乗)であり立位以降で離床プロトコル基準値外に該当し交絡因子の存在が背景にある症例は在宅酸素療法の導入を予測し早期の退院支援,在院日数の短縮に寄与できる可能性があると考える.