[PC-2-4] 在宅酸素機器定着に対する認知機能の影響について
【背景】2025年には,65歳以上の5.4人に一人は認知症を患う高齢社会になると予測されている.一方,2004年の診療報酬改定を皮切りに,呼吸器疾患以外の疾患で在宅酸素療法(以下HOT)を行う患者数は増加傾向である.このことから,在宅や施設においてHOTを導入して生活する認知症患者数も増加していくことが予測される.
【目的】退院にむけた患者教育をする中で,退院後の主治医と酸素会社の契約によって,酸素濃縮器や流量計の変更を余儀なくされることがある.これにより,患者は1度獲得した酸素濃縮器などの操作を再学習する必要があり,学習過程で患者が混乱し,退院調整に難渋することもある.入院初期から在宅調整を見据えた関わりとして,スクリーニングで患者の認知機能の傾向を知り,酸素機器の操作自立にむけた教育に活かせる指標はないかと文献検索を行ったが,有効性のある手段や検査方法などの先行研究はなく,日々の作業療法の展開の中で一定の仮説を設けていたため,仮説検証の目的で本研究を実施した.
【方法】本研究は,評価精度を高めるために,検者である当リハビリテーション科の全員に認知機能評価研修を実施し,下記のように評価手技の統一を図った.
対象者:65歳上の年齢で,入院中に酸素療法を実施している患者.対象疾患は問わず,言語性検査を実施できない高次脳機能障害,重度認知症は対象から除いた.
対象者数:自立群24例・非自立群33例 期間:2023年8月~2024年2月の約半年間
検査方法:①認知症スクリーニング検査(MMSE-J)を入院時せん妄の影響を避ける為,入院3~4日以降に検査を実施した.②入院中の酸素機器の操作の自立判定を実施した.自立判定の評価方法は,鼻カニューレ装着・酸素ボンベ開閉または酸素流量設定の2項目が行えたことで自立と判定することにした.
分析方法:①対象患者を酸素機器操作の自立群と非自立群に分け,MMSE-Jの総合得点と下位項目得点を統計処理し,有意差を確認した.②統計処理ソフトはEZRを使用.危険率(P値)は5%とした.
【仮説】①MMSE-J総合得点は,酸素機器操作自立の判断基準にはなりにくい.②ワーキングメモリー・記憶・物品操作能力に影響する下位項目の計算・遅延再生・描画において,失点が多ければ酸素機器操作は自立困難.
【結果】MMSE-J総合得点の平均値は自立群26点・非自立群20点,標準偏差は自立群2.5・非自立群3.6,標本分散は自立群6.3・非自立群13.9であった.総合得点は,P=0.001と有意差を確認した.MMSE-J下位項目は,見当識:P=0.002 計算:P=0.03 遅延再生:P=0.003 描画:P=0.07と見当識・計算・遅延再生項目に有意差を確認した.描画項目では有意差は確認できなかった.
【考察】酸素機器操作は,自立群・非自立群ともにMMSE-Jの総合得点で有意差がみられた.しかし,非自立群については,総合得点のバラつきがみられ一概に総合得点のカットオフ点のみを指標に酸素機器の操作が自立可能と判断は出来ない.下位項目得点では,見当識・計算・遅延再生項目に有意差を確認した.MMSE-Jの見当識・計算・遅延再生の項目は酸素機器操作自立の可否判断の目安になると考える.また,失点項目が多い認知機能を重点的に訓練する,代償手段を調整することで,酸素機器の操作を自立に促す一助になるのではないかと思う.今回の研究で,MMSE-Jをスクリーニングに用い患者の認知機能の傾向を把握することは,酸素機器操作習得の患者教育に生かすことができる一つの指標になると言える.訓練プログラムの有効性については,今回調査は行えていないため,さらなる追跡調査を行っていたいと思う.
【目的】退院にむけた患者教育をする中で,退院後の主治医と酸素会社の契約によって,酸素濃縮器や流量計の変更を余儀なくされることがある.これにより,患者は1度獲得した酸素濃縮器などの操作を再学習する必要があり,学習過程で患者が混乱し,退院調整に難渋することもある.入院初期から在宅調整を見据えた関わりとして,スクリーニングで患者の認知機能の傾向を知り,酸素機器の操作自立にむけた教育に活かせる指標はないかと文献検索を行ったが,有効性のある手段や検査方法などの先行研究はなく,日々の作業療法の展開の中で一定の仮説を設けていたため,仮説検証の目的で本研究を実施した.
【方法】本研究は,評価精度を高めるために,検者である当リハビリテーション科の全員に認知機能評価研修を実施し,下記のように評価手技の統一を図った.
対象者:65歳上の年齢で,入院中に酸素療法を実施している患者.対象疾患は問わず,言語性検査を実施できない高次脳機能障害,重度認知症は対象から除いた.
対象者数:自立群24例・非自立群33例 期間:2023年8月~2024年2月の約半年間
検査方法:①認知症スクリーニング検査(MMSE-J)を入院時せん妄の影響を避ける為,入院3~4日以降に検査を実施した.②入院中の酸素機器の操作の自立判定を実施した.自立判定の評価方法は,鼻カニューレ装着・酸素ボンベ開閉または酸素流量設定の2項目が行えたことで自立と判定することにした.
分析方法:①対象患者を酸素機器操作の自立群と非自立群に分け,MMSE-Jの総合得点と下位項目得点を統計処理し,有意差を確認した.②統計処理ソフトはEZRを使用.危険率(P値)は5%とした.
【仮説】①MMSE-J総合得点は,酸素機器操作自立の判断基準にはなりにくい.②ワーキングメモリー・記憶・物品操作能力に影響する下位項目の計算・遅延再生・描画において,失点が多ければ酸素機器操作は自立困難.
【結果】MMSE-J総合得点の平均値は自立群26点・非自立群20点,標準偏差は自立群2.5・非自立群3.6,標本分散は自立群6.3・非自立群13.9であった.総合得点は,P=0.001と有意差を確認した.MMSE-J下位項目は,見当識:P=0.002 計算:P=0.03 遅延再生:P=0.003 描画:P=0.07と見当識・計算・遅延再生項目に有意差を確認した.描画項目では有意差は確認できなかった.
【考察】酸素機器操作は,自立群・非自立群ともにMMSE-Jの総合得点で有意差がみられた.しかし,非自立群については,総合得点のバラつきがみられ一概に総合得点のカットオフ点のみを指標に酸素機器の操作が自立可能と判断は出来ない.下位項目得点では,見当識・計算・遅延再生項目に有意差を確認した.MMSE-Jの見当識・計算・遅延再生の項目は酸素機器操作自立の可否判断の目安になると考える.また,失点項目が多い認知機能を重点的に訓練する,代償手段を調整することで,酸素機器の操作を自立に促す一助になるのではないかと思う.今回の研究で,MMSE-Jをスクリーニングに用い患者の認知機能の傾向を把握することは,酸素機器操作習得の患者教育に生かすことができる一つの指標になると言える.訓練プログラムの有効性については,今回調査は行えていないため,さらなる追跡調査を行っていたいと思う.