[PC-3-3] 訪問作業療法の経験を生かした退院支援
【はじめに】
私が訪問看護ステーションから高度急性期病院に部署異動し,入院早期から患者が転院か退院かの判断が迫られる場面を見かけた.その中には患者の能力のみを判断基準にし,ADL自立レベルでなければ転院と判断する場面があった.今回,ADL自立レベルではないものの,患者・家族へ訪問OTの経験から患者の状況説明と家族の支援内容,介護保険の説明・紹介,同程度ADL自立度の患者の生活状況の紹介によって転院から退院へ変更できたので報告する.本人へ説明し同意を得ている.開示すべきCOI関係にある企業等はない.
【事例紹介・作業療法開始評価】
年齢:80歳代,性別:男性,疾患:肺水腫,既往歴:慢性心不全,入院前はADL自立.散歩していた.意識レベル :JCS…I-1,SpO2:94%(NPPV),関節可動域:特記制限なし,筋力上肢3レベル,下肢4レベル,認知・高次脳機能:障害なしADL (FIM):運動項目 13+認知項目 26=総合計 39点
【介入経過】
X日,入院.X+2日,OT開始 .X+6日,NPPVからネーザルカニューラ2Lに変更.SPPB:1/12点.離床動作確認,ポータブルトイレ動作獲得に向け移乗動作評価・訓練実施.X+7日,ネーザルカニューラ2Lから1Lに変更.病室のトイレ動作獲得に向け,動線確認と移動動作確認.X+9日,SPPB:6/12点.X+12日,ネーザルカニューラ1Lから酸素OFF.立位バランス不安定さ残存.X+14日,入浴動作でSPO2が90%以上を保持可能.フリー歩行ふらつき軽減.ADL (FIM):運動項目 70+認知項目 28=総合計 98点(移乗浴槽:4,清拭:4).入浴動作は軽介助レベル,入院前の全身耐久性には戻らず,転院を検討される.そこで医師へ家族の協力,介護保険サービスの利用で退院可能と提案.同日,家族の来院に合わせ訪室し家族の思いと支援可能かを確認.本人,家族は自宅退院の意向であった.OTからは現在の患者の身体機能(筋力,全身耐久性は入院前には戻っていないが日常生活には問題はない),ADL能力(入浴以外は手すりがあれば安全に動作可能,入浴は転倒防止の介助が必要),入院前との違い(散歩はまだ自信がない状況であること)を説明した.退院後,家族に支援してもらう内容(入浴は週末に来る娘が介助すること)と入院前の状況に戻るために必要なサービス(介護保険を申請し,訪問リハビリ,必要に応じて訪問看護か訪問介護,もしくは通所リハ,通所介護の利用)を説明した.また同程度ADL自立度の人がどのように生活をしているかを紹介した.家族・患者ともに退院を希望したため医師へ報告.退院が決定.X+16日退院.
【考察】
今回,転院の方針から退院に変わった要因として,高度急性期病院の医師・看護師は,患者がADLが自立出来ず入院前の状況まで改善していなかったこと,本人・家族の退院の強い要望がなかったことで転院を検討したと考える.しかしOTに訪問OTの経験があり,ADLが自立レベルでなくても自宅での生活が出来る事を知っていた.そのため退院後の生活をイメージできるよう説明・紹介を行うことが出来た.本人・家族はOTの説明・紹介を聴き,退院できると判断した.また転院交渉の前段階で医師や病棟看護師と連携したことが退院へ導くことにつながったと考える.高度急性期病院ではADLが自立できていない患者は回復期病棟等への転院を第一選択として検討されることが多い.その中で退院可能な患者を見つけ,退院出来るかを明らかにすることはOTの役割であると考える.
今後は高度急性期病院の退院支援でのOTの支援内容・時期の明確化を行い,訪問OTの経験がなくても,急性期病院から退院できる患者を転院させない仕組みを構築していきたい.
私が訪問看護ステーションから高度急性期病院に部署異動し,入院早期から患者が転院か退院かの判断が迫られる場面を見かけた.その中には患者の能力のみを判断基準にし,ADL自立レベルでなければ転院と判断する場面があった.今回,ADL自立レベルではないものの,患者・家族へ訪問OTの経験から患者の状況説明と家族の支援内容,介護保険の説明・紹介,同程度ADL自立度の患者の生活状況の紹介によって転院から退院へ変更できたので報告する.本人へ説明し同意を得ている.開示すべきCOI関係にある企業等はない.
【事例紹介・作業療法開始評価】
年齢:80歳代,性別:男性,疾患:肺水腫,既往歴:慢性心不全,入院前はADL自立.散歩していた.意識レベル :JCS…I-1,SpO2:94%(NPPV),関節可動域:特記制限なし,筋力上肢3レベル,下肢4レベル,認知・高次脳機能:障害なしADL (FIM):運動項目 13+認知項目 26=総合計 39点
【介入経過】
X日,入院.X+2日,OT開始 .X+6日,NPPVからネーザルカニューラ2Lに変更.SPPB:1/12点.離床動作確認,ポータブルトイレ動作獲得に向け移乗動作評価・訓練実施.X+7日,ネーザルカニューラ2Lから1Lに変更.病室のトイレ動作獲得に向け,動線確認と移動動作確認.X+9日,SPPB:6/12点.X+12日,ネーザルカニューラ1Lから酸素OFF.立位バランス不安定さ残存.X+14日,入浴動作でSPO2が90%以上を保持可能.フリー歩行ふらつき軽減.ADL (FIM):運動項目 70+認知項目 28=総合計 98点(移乗浴槽:4,清拭:4).入浴動作は軽介助レベル,入院前の全身耐久性には戻らず,転院を検討される.そこで医師へ家族の協力,介護保険サービスの利用で退院可能と提案.同日,家族の来院に合わせ訪室し家族の思いと支援可能かを確認.本人,家族は自宅退院の意向であった.OTからは現在の患者の身体機能(筋力,全身耐久性は入院前には戻っていないが日常生活には問題はない),ADL能力(入浴以外は手すりがあれば安全に動作可能,入浴は転倒防止の介助が必要),入院前との違い(散歩はまだ自信がない状況であること)を説明した.退院後,家族に支援してもらう内容(入浴は週末に来る娘が介助すること)と入院前の状況に戻るために必要なサービス(介護保険を申請し,訪問リハビリ,必要に応じて訪問看護か訪問介護,もしくは通所リハ,通所介護の利用)を説明した.また同程度ADL自立度の人がどのように生活をしているかを紹介した.家族・患者ともに退院を希望したため医師へ報告.退院が決定.X+16日退院.
【考察】
今回,転院の方針から退院に変わった要因として,高度急性期病院の医師・看護師は,患者がADLが自立出来ず入院前の状況まで改善していなかったこと,本人・家族の退院の強い要望がなかったことで転院を検討したと考える.しかしOTに訪問OTの経験があり,ADLが自立レベルでなくても自宅での生活が出来る事を知っていた.そのため退院後の生活をイメージできるよう説明・紹介を行うことが出来た.本人・家族はOTの説明・紹介を聴き,退院できると判断した.また転院交渉の前段階で医師や病棟看護師と連携したことが退院へ導くことにつながったと考える.高度急性期病院ではADLが自立できていない患者は回復期病棟等への転院を第一選択として検討されることが多い.その中で退院可能な患者を見つけ,退院出来るかを明らかにすることはOTの役割であると考える.
今後は高度急性期病院の退院支援でのOTの支援内容・時期の明確化を行い,訪問OTの経験がなくても,急性期病院から退院できる患者を転院させない仕組みを構築していきたい.