[PC-3-4] COPD患者に対する外来作業療法の関わりの一例
【はじめに】呼吸リハビリテーションに関するステートメントでは作業療法士もチームにその名を連ねており,近年呼吸器疾患に対する作業療法(OT)の果たす役割が認識されつつある.呼吸リハビリテーションの実施形態は入院・外来・在宅等と幅広い病期を対応しているものの,外来リハビリテーションは実施できる施設が限られていることもあり,外来通院でのOTの関わりやその有効性が十分に普及しているとは言い難い.ここでは慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に外来通院でのOT介入の結果,日常生活動作(ADL)における自覚的な呼吸困難が軽減した症例を報告する.なお本報告の発表にあたり,症例に対し口頭で説明し同意を得た.
【症例】80歳代の男性で,妻・娘と3人暮らしである.X-19年前にCOPDの診断を受け, X-9年前に在宅酸素療法(HOT)の導入に至った.X-8年の呼吸機能検査では1秒率が30%であった.modified British Medical Research Council(mMRC)は4,GOLD分類はBである.ADLは休憩を挟みながら自立していたが,短時間の労作でも呼吸困難が増強していた.身体機能改善,セルフマネジメント教育を目的に,外来通院リハビリテーションでの理学療法・作業療法の開始に至った.
【作業療法経過】HOTは安静時1.5L/min,労作時2.0L/minの使用指示であった.初回評価時のCOPD assessment test(CAT)は18/35点,長崎大学呼吸器日常生活活動評価表(NRADL)では14/100点といずれも低値であった.特に更衣動作・入浴動作において呼吸困難を強く感じていた.更衣動作では「しゃがむと苦しいから靴下を履くのが辛い」,入浴動作では「腕を1分と上げていられない」と訴えていた.いずれの動作も福祉用具の使用や動作の工夫はなく,疲労や呼吸困難のため実際に行うことを回避しており,息切れへの不安を強く感じていた.また,なぜ苦しくなるのかといった疾病の知識が不十分であった.そこでOTでは,①「なぜ苦しくなるのか」を中心とした疾病の教育,②模擬的に更衣・入浴動作を行い,苦しくなる場面・時間を知り,より効率的に実施できる方法の模索を行う方針とした.初回介入時よりOTへの関心は高く,同日セルフマネジメント教育およびセルフチェックリストやパルスオキシメータを活用した更衣動作・入浴動作ともに訓練を開始した.2か月後にはリーチャーの購入や休憩時間の意識が高まっており,OTでは不明な点を適宜質疑に応じ,修正しつつ在宅での実践を促した.
【結果】介入より2ヶ月後の評価ではCATは18/35点,NRADLは16/100点と数値の改善を認めた.苦しくなる場面・時間を知ることで呼吸困難を感じる前に休憩を挟むことができ,呼吸困難の軽減を認めた.
【考察】呼吸器疾患患者へのADL支援では,動作の遂行だけでなく動機付けや活動量の自己調整まで含めた支援が必要とされている.本症例においても,外来通院で疾病の教育や模擬的にADL動作訓練を実施したところ,呼吸困難の軽減に繋がった.本症例は外来通院での介入であったため,入院患者と比して長期的に介入することで,行動の変化を経時的に評価し支援することができた.外来通院でのリハビリテーションは在宅ではないため実際の生活場面で訓練を行うことはできないが,模擬的に訓練した内容を自宅でも行い,試行錯誤を重ねたことにより,結果として効率的なADL動作の獲得に至ったと考えられた.
【症例】80歳代の男性で,妻・娘と3人暮らしである.X-19年前にCOPDの診断を受け, X-9年前に在宅酸素療法(HOT)の導入に至った.X-8年の呼吸機能検査では1秒率が30%であった.modified British Medical Research Council(mMRC)は4,GOLD分類はBである.ADLは休憩を挟みながら自立していたが,短時間の労作でも呼吸困難が増強していた.身体機能改善,セルフマネジメント教育を目的に,外来通院リハビリテーションでの理学療法・作業療法の開始に至った.
【作業療法経過】HOTは安静時1.5L/min,労作時2.0L/minの使用指示であった.初回評価時のCOPD assessment test(CAT)は18/35点,長崎大学呼吸器日常生活活動評価表(NRADL)では14/100点といずれも低値であった.特に更衣動作・入浴動作において呼吸困難を強く感じていた.更衣動作では「しゃがむと苦しいから靴下を履くのが辛い」,入浴動作では「腕を1分と上げていられない」と訴えていた.いずれの動作も福祉用具の使用や動作の工夫はなく,疲労や呼吸困難のため実際に行うことを回避しており,息切れへの不安を強く感じていた.また,なぜ苦しくなるのかといった疾病の知識が不十分であった.そこでOTでは,①「なぜ苦しくなるのか」を中心とした疾病の教育,②模擬的に更衣・入浴動作を行い,苦しくなる場面・時間を知り,より効率的に実施できる方法の模索を行う方針とした.初回介入時よりOTへの関心は高く,同日セルフマネジメント教育およびセルフチェックリストやパルスオキシメータを活用した更衣動作・入浴動作ともに訓練を開始した.2か月後にはリーチャーの購入や休憩時間の意識が高まっており,OTでは不明な点を適宜質疑に応じ,修正しつつ在宅での実践を促した.
【結果】介入より2ヶ月後の評価ではCATは18/35点,NRADLは16/100点と数値の改善を認めた.苦しくなる場面・時間を知ることで呼吸困難を感じる前に休憩を挟むことができ,呼吸困難の軽減を認めた.
【考察】呼吸器疾患患者へのADL支援では,動作の遂行だけでなく動機付けや活動量の自己調整まで含めた支援が必要とされている.本症例においても,外来通院で疾病の教育や模擬的にADL動作訓練を実施したところ,呼吸困難の軽減に繋がった.本症例は外来通院での介入であったため,入院患者と比して長期的に介入することで,行動の変化を経時的に評価し支援することができた.外来通院でのリハビリテーションは在宅ではないため実際の生活場面で訓練を行うことはできないが,模擬的に訓練した内容を自宅でも行い,試行錯誤を重ねたことにより,結果として効率的なADL動作の獲得に至ったと考えられた.