[PD-1-5] 頸椎術後C5麻痺患者に対して,アームスリング着用で上肢満足度が向上した症例
肩関節外旋を補助するアームスリングの作製
【はじめに】
頸椎後方除圧固定術後の合併症として,C5麻痺はよく知られている.症例は頸椎術後のC5麻痺により三角巾を着用され上肢の使用が制限されていた.今回,手指の動きは可能であり肘関節屈曲保持と肩関節外旋方向への動きを補助するアームスリングを着用することで,日常生活動作(以下ADL)での麻痺側上肢の使用と上肢の使用満足度が増えた.以下に作業療法評価と経過,アームスリングの作製方法と結果について報告する.
【事例提示】
症例は独居の70歳代女性.術前より手指巧緻運動障害,右下肢脱力が出現し近隣のA病院でX年Y月に後方除圧固定術(C2-Th1)を施行.術後より右上肢肩関節亜脱臼がみられ,三角筋,上腕二頭筋の徒手筋力検査(以下MMT)が右1/左4と低下,右C5麻痺の症状が確認された.その後リハビリ目的でX年Y+1月に当院回復期病棟に転院となった.
【作業療法評価と経過】
入院当初より右上肢手指を使用すると,肩甲骨挙上と内転,肩関節内転と内旋,肘関節伸展,手関節屈曲と撓屈を強める代償動作が観察された.術後3ヵ月でMMTは三角筋,上腕二頭筋が右2/左4へ改善した.術後5ヵ月に座位にて肘関節伸展位で肩関節屈曲が30度可能となったが肘関節屈曲は困難で肩甲骨挙上の代償と大胸筋の過剰収縮が残存していた.手指の動きは可能だが,肩関節亜脱臼は残存がみられループ形状のアームスリングを着用し,ADLでの右上肢の使用がない状態であった.症例は上肢の改善を希望されているが,入院期間中の大きな変化は認められない可能性があり,アームスリングを着用して上肢の参加を促すことで,上肢に対しての意識を変えていくこととした.
【スリング作製方法と結果】
症例よりアームスリングを着用した手を前方へ出すと使いやすくなる感想があった.肩関節亜脱臼予防と肩関節外旋補助,肘関節屈曲保持の条件と安価でできることを条件として作製を開始した.材料はバスタオル生地を使用し,重ねて縫うことで強度を図った.肩部分は肩から上腕を覆う形にし,アクリルテープを使用して体幹ベルトを引っ張ることで固定できるようにした.肘部分と前腕部分は上肢の重さを受け止め,肩関節外旋の動きを阻害しない形にした.肩部分と肘部分,肩部分と前腕部分はアクリルテープを使用して連結した.ADLで肩関節屈曲もしくは肘関節屈曲を行う両手動作を選択し,アームスリング着用前と後で比較するために実行度と満足度の聞き取りを行った.洗濯物干しの実行度0/10-7/10,満足度は0/10-7/10,調理(包丁動作)の実行度は0/10-8/10,満足度は0/10-10/10,調理(食器洗い)の実行度5/10-5/10,満足度6/10-6/10となった.上肢の満足度では入院時上肢機能とアームスリング着用前と後の3つを比較し0/10-3/10-6/10となった.
【考察】
三角巾は整復力が強く固定性が高いといったメリットがあるが,上肢の関節拘縮を起こしやすく,上肢に対する認識の低下など活動時に参加ができないといったデメリットもある.また肩関節内旋固定のため,上肢を使用とすると体幹の回旋がでてしまい使いにくさを感じてしまう.症例は上肢の改善は望んでいたが,C5麻痺の改善は大きな変化なく活動時の上肢使用がほとんどない状況になっており,肩関節外旋方向への動きを補助するアームスリングを着用することで上肢を使用するこに対して前向きになり,独居生活で自分のできることが継続できると思っていただけたと考えられる.またタオル生地を使った簡便なものにすることでコストの軽減も図れたと考えている.
頸椎後方除圧固定術後の合併症として,C5麻痺はよく知られている.症例は頸椎術後のC5麻痺により三角巾を着用され上肢の使用が制限されていた.今回,手指の動きは可能であり肘関節屈曲保持と肩関節外旋方向への動きを補助するアームスリングを着用することで,日常生活動作(以下ADL)での麻痺側上肢の使用と上肢の使用満足度が増えた.以下に作業療法評価と経過,アームスリングの作製方法と結果について報告する.
【事例提示】
症例は独居の70歳代女性.術前より手指巧緻運動障害,右下肢脱力が出現し近隣のA病院でX年Y月に後方除圧固定術(C2-Th1)を施行.術後より右上肢肩関節亜脱臼がみられ,三角筋,上腕二頭筋の徒手筋力検査(以下MMT)が右1/左4と低下,右C5麻痺の症状が確認された.その後リハビリ目的でX年Y+1月に当院回復期病棟に転院となった.
【作業療法評価と経過】
入院当初より右上肢手指を使用すると,肩甲骨挙上と内転,肩関節内転と内旋,肘関節伸展,手関節屈曲と撓屈を強める代償動作が観察された.術後3ヵ月でMMTは三角筋,上腕二頭筋が右2/左4へ改善した.術後5ヵ月に座位にて肘関節伸展位で肩関節屈曲が30度可能となったが肘関節屈曲は困難で肩甲骨挙上の代償と大胸筋の過剰収縮が残存していた.手指の動きは可能だが,肩関節亜脱臼は残存がみられループ形状のアームスリングを着用し,ADLでの右上肢の使用がない状態であった.症例は上肢の改善を希望されているが,入院期間中の大きな変化は認められない可能性があり,アームスリングを着用して上肢の参加を促すことで,上肢に対しての意識を変えていくこととした.
【スリング作製方法と結果】
症例よりアームスリングを着用した手を前方へ出すと使いやすくなる感想があった.肩関節亜脱臼予防と肩関節外旋補助,肘関節屈曲保持の条件と安価でできることを条件として作製を開始した.材料はバスタオル生地を使用し,重ねて縫うことで強度を図った.肩部分は肩から上腕を覆う形にし,アクリルテープを使用して体幹ベルトを引っ張ることで固定できるようにした.肘部分と前腕部分は上肢の重さを受け止め,肩関節外旋の動きを阻害しない形にした.肩部分と肘部分,肩部分と前腕部分はアクリルテープを使用して連結した.ADLで肩関節屈曲もしくは肘関節屈曲を行う両手動作を選択し,アームスリング着用前と後で比較するために実行度と満足度の聞き取りを行った.洗濯物干しの実行度0/10-7/10,満足度は0/10-7/10,調理(包丁動作)の実行度は0/10-8/10,満足度は0/10-10/10,調理(食器洗い)の実行度5/10-5/10,満足度6/10-6/10となった.上肢の満足度では入院時上肢機能とアームスリング着用前と後の3つを比較し0/10-3/10-6/10となった.
【考察】
三角巾は整復力が強く固定性が高いといったメリットがあるが,上肢の関節拘縮を起こしやすく,上肢に対する認識の低下など活動時に参加ができないといったデメリットもある.また肩関節内旋固定のため,上肢を使用とすると体幹の回旋がでてしまい使いにくさを感じてしまう.症例は上肢の改善は望んでいたが,C5麻痺の改善は大きな変化なく活動時の上肢使用がほとんどない状況になっており,肩関節外旋方向への動きを補助するアームスリングを着用することで上肢を使用するこに対して前向きになり,独居生活で自分のできることが継続できると思っていただけたと考えられる.またタオル生地を使った簡便なものにすることでコストの軽減も図れたと考えている.