[PD-1-7] 屈指症の対する作業療法の経験
【はじめに】
屈指症は近位指節間(以下PIP)関節の屈曲拘縮を呈する先天異常である.屈指症に対する後療法に関してスプリント療法や関節可動域(以下ROM)訓練の実施が有用とされているが,その報告は少ない.今回,屈指症を呈した症例の作業療法を経験し良好な成績を得たため,考察を加え報告する.本発表について本人及び,家族の同意を得ている.
【症例】
5歳女児.右利き.生後5ヶ月頃より左中指PIP関節自動伸展不全,他動伸展時に礫音を認め,経過を見ていたが症状は改善せず,手術の方針となった.術前MP関節過伸展位,PIP自動伸展-90°他動伸展-30°.母親より,「食器が持ちづらそう.保育園の先生からボールで遊ぶことができない.どこまで手を使わせていいのかが分からないと言われる.」との情報があった.
【術中所見】
左手掌部~中指基節骨部に切開を加えA1pullyを切開したが,屈筋腱の明らかな肥厚はなし.その時点で他動での完全伸展は可能となり閉創.基節骨頭背側の低形成を認め,屈指症の診断となった.
【経過】
術後1日目より入院リハビリテーション(以下リハ)を開始.術創部の疼痛があり,PIP関節伸展-30°に設定した状態で掌側支持のスタッティックスプリントを作製し,終日装着とした.術後2日目に自宅退院となり,皮膚トラブルや血行障害に注意するように家族指導を行った.
術後7日目より外来リハを開始.疼痛に応じて自他動でのROM訓練や遊びの中での手指操作練習を実施.PIP関節自動伸展-50°,他動伸展-30°と伸展不足があり,MP関節中間位でのPIP関節伸展運動時は,総指伸筋による代償を認めていた.
術後12日目に日中は示指を使用してバディテープ,夜間はセーフティーピンへと変更.スプリントの装着方法や,自主訓練としてMP関節中間位でのPIP,DIP関節伸展運動を行うよう動画を用いて両親へ指導.日中は,遊びや生活の中での患指の使用を促した.術後70日目頃より虫様筋の筋力向上を認めたため,夜間セーフティーピンのみ使用を継続とした.現在,TAM(70+100+54)-(0+20+0)=204 ,PIP関節他動伸展0°とROMは改善傾向にある.
【考察】
今回,屈指症の症例に対しスプリント療法,ROM訓練,家族指導を行った.木村らは,先天異常により行えなかったことに対して,年相応の物品や道具の操作を踏まえたADLが行えるように介入することが必要であると述べている.
術後早期はスタティックスプリントの装着により,屈曲拘縮の再発予防を図ったが,症例は生後5ヶ月頃より屈曲拘縮を呈しており,虫様筋の筋収縮不全があることが考えられた.そのことから,虫様筋の収縮を促すこと,術創部での屈筋腱の癒着予防を図る目的で,術後12日目からは日中バディテープに変更.リハ時はROM訓練に加え,ボール操作など遊びの中での手指操作練習を行い,保育園や生活の中でも患指の使用を促した.夜間は術創部の治癒を認めた時期に,皮膚性拘縮,関節性拘縮の改善を目的に,矯正力の得られるセーフティーピンの使用へと変更した.
その結果,本症例は虫様筋の筋力向上,中指PIP関節屈曲拘縮の改善に繋がり,ADLでの手の使用やボール遊びが可能となり,本人,家族の満足度は高いものとなった.
今後,本症例の経過を通して,屈曲拘縮の再発予防のため成長に応じたスプリントの作製,装着期間の検討が必要であると考えられた.また,自己管理が困難な年齢の症例においては,家族からの支援が必要不可欠であり,家族指導が重要である.
屈指症は近位指節間(以下PIP)関節の屈曲拘縮を呈する先天異常である.屈指症に対する後療法に関してスプリント療法や関節可動域(以下ROM)訓練の実施が有用とされているが,その報告は少ない.今回,屈指症を呈した症例の作業療法を経験し良好な成績を得たため,考察を加え報告する.本発表について本人及び,家族の同意を得ている.
【症例】
5歳女児.右利き.生後5ヶ月頃より左中指PIP関節自動伸展不全,他動伸展時に礫音を認め,経過を見ていたが症状は改善せず,手術の方針となった.術前MP関節過伸展位,PIP自動伸展-90°他動伸展-30°.母親より,「食器が持ちづらそう.保育園の先生からボールで遊ぶことができない.どこまで手を使わせていいのかが分からないと言われる.」との情報があった.
【術中所見】
左手掌部~中指基節骨部に切開を加えA1pullyを切開したが,屈筋腱の明らかな肥厚はなし.その時点で他動での完全伸展は可能となり閉創.基節骨頭背側の低形成を認め,屈指症の診断となった.
【経過】
術後1日目より入院リハビリテーション(以下リハ)を開始.術創部の疼痛があり,PIP関節伸展-30°に設定した状態で掌側支持のスタッティックスプリントを作製し,終日装着とした.術後2日目に自宅退院となり,皮膚トラブルや血行障害に注意するように家族指導を行った.
術後7日目より外来リハを開始.疼痛に応じて自他動でのROM訓練や遊びの中での手指操作練習を実施.PIP関節自動伸展-50°,他動伸展-30°と伸展不足があり,MP関節中間位でのPIP関節伸展運動時は,総指伸筋による代償を認めていた.
術後12日目に日中は示指を使用してバディテープ,夜間はセーフティーピンへと変更.スプリントの装着方法や,自主訓練としてMP関節中間位でのPIP,DIP関節伸展運動を行うよう動画を用いて両親へ指導.日中は,遊びや生活の中での患指の使用を促した.術後70日目頃より虫様筋の筋力向上を認めたため,夜間セーフティーピンのみ使用を継続とした.現在,TAM(70+100+54)-(0+20+0)=204 ,PIP関節他動伸展0°とROMは改善傾向にある.
【考察】
今回,屈指症の症例に対しスプリント療法,ROM訓練,家族指導を行った.木村らは,先天異常により行えなかったことに対して,年相応の物品や道具の操作を踏まえたADLが行えるように介入することが必要であると述べている.
術後早期はスタティックスプリントの装着により,屈曲拘縮の再発予防を図ったが,症例は生後5ヶ月頃より屈曲拘縮を呈しており,虫様筋の筋収縮不全があることが考えられた.そのことから,虫様筋の収縮を促すこと,術創部での屈筋腱の癒着予防を図る目的で,術後12日目からは日中バディテープに変更.リハ時はROM訓練に加え,ボール操作など遊びの中での手指操作練習を行い,保育園や生活の中でも患指の使用を促した.夜間は術創部の治癒を認めた時期に,皮膚性拘縮,関節性拘縮の改善を目的に,矯正力の得られるセーフティーピンの使用へと変更した.
その結果,本症例は虫様筋の筋力向上,中指PIP関節屈曲拘縮の改善に繋がり,ADLでの手の使用やボール遊びが可能となり,本人,家族の満足度は高いものとなった.
今後,本症例の経過を通して,屈曲拘縮の再発予防のため成長に応じたスプリントの作製,装着期間の検討が必要であると考えられた.また,自己管理が困難な年齢の症例においては,家族からの支援が必要不可欠であり,家族指導が重要である.