第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

運動器疾患

[PD-1] ポスター:運動器疾患 1

2024年11月9日(土) 10:30 〜 11:30 ポスター会場 (大ホール)

[PD-1-9] 手関節部手指伸筋腱皮下断裂術後の後療法による治療成績の比較

大内 一紘1, 遠藤 珠美1, 工藤 文華1, 赤沼 昇也1, 石垣 大介2 (1.済生会山形済生病院 リハビリテーション部, 2.済生会山形済生病院 整形外科)

【はじめに】手関節部手指伸筋腱皮下断裂に対する腱再建術後の早期運動療法は,ダイナミックスプリントを用いたリバースクライナート法(以下RK法),テーピングで損傷指を減張位に保持する減張位法(以下石黒法),早期制限下自動運動(以下ICAM法)などの報告がある.当院で行われた上記後療法について,術後3ヶ月時の治療成績を比較したので報告する.尚,本報告は当院の倫理審査委員会の承諾を得ている.
【方法】対象者は2016年4月〜2024年3月までに当院で手関節部手指伸筋腱皮下断裂に対し腱移行術を施行し,上記後療法を実施した17例28指(平均年齢72.4±13.1歳,示指2指,中指2指,環指9指,小指15指).内訳はRK法7例10指,石黒法5例9指,ICAM法5例9指であった.評価項目は術後3ヶ月時の%TAM,自動関節可動域(以下ROM),握力,患者立脚評価(Hand20,Q-DASH),入院期間,外来訓練回数とした.統計解析は1元配置分散分析とKraskal-Wallis検定,多重比較法(Steel-Dwass法)を用いた.有意水準はp<0.05とし,統計分析ソフトはEZR ver4.2.1を用いた.
【結果】%TAMとPIP関節屈曲ROMに有意差を認め,他の項目においては有意差を認めなかった.%TAMは,RK法81.9±9.6%,石黒法72.1±15.7%,ICAM法93.7±10.3%で石黒法とICAM法に有意差を認めた.PIP関節屈曲ROMではRK法85.5±9.1°,石黒法83.3±8.2°,ICAM法101.1±7.4°でRK法とICAM法,石黒法とICAM法に有意差を認めた.
【考察】%TAMの違いについては,石黒法は複数指損傷の場合に尺側の減張位が強くなり,屈曲運動が不十分となることや経過とともにテーピングに緩みが生じ,反対に減張位が保てなくなる可能性が考えられる.また,当院の状況として,担当セラピスト不在時に申し送りで他のセラピストが介入するが,セラピスト間でテーピングを巻く強さに差が出ることの影響も考えられる.ICAM法はYokeパーツを基節部に装着するため,PIP関節以遠の運動が制限されずに%TAMが良好であったと思われる.PIP関節屈曲ROMの違いについては,上記理由に加えRK法の特徴としてダイナミックスプリントで末節部を伸展方向へ牽引するためPIP関節に伸展拘縮が生じた可能性がある.今回の結果より,手関節部手指伸筋腱皮下断裂に対する腱再建術後の後療法としては,ICAM法が当院の第一選択と考えている.しかし,Yokeパーツは自己着脱が可能なため外してしまう症例もいた.今後,コンプライアンス不良例で小指のみの損傷の場合は石黒法,複数指損傷でMP伸展不全が強い例にはRK法の導入など使い分けも検討したい.今回の調査では症例が少なく,今後も調査を継続したい.