[PD-2-10] 関節リウマチ患者における足袋装具導入の試み
【序論】関節リウマチ(RA)は,近年,生物学的製剤やJAK阻害薬などの登場で, 炎症性サイトカインであるインターロイキンー1・6,TNF−αなどの過剰な分泌を抑制し,滑膜炎を抑制,骨破壊,疼痛,変形の発生を防ぐことが可能となり,ADL・QOL・社会参画を保つことが可能になっている.しかし,オーバーユースにより,局所的な関節炎が起こり,変形の進行につながることがある.中でも,足趾や足底の評価や適切なアプローチが遅れ変形進行につながる傾向にあると考える.当院のRA患者用OTスクリーニング評価において,足趾と足底の評価項目があり,変化を早期に発見し,適切な治療アプローチが実施できるようにしている.主なアプローチとして,足趾変形には足趾スプリントの作製,足底の扁平化に対してはアーチサポート等の作製,靴選びのアドバイス,足底足趾自主トレーニング方法指導を実施している.今回,自宅内歩行時に強い足底痛の発生と外反母趾が認められる事例に,新しい試みとして,祭り足袋を改良した足袋装具を導入,その効果について報告する.発表にあたり,当院倫理委員会の承認を得ている.開示すべきCOI関係にある企業等はない.【事例】RA診断から3年後に当院受診. 50歳代,女性,使用薬物:抗リウマチ薬メトトレキサート(MTX),疾患活動性:中疾患活動, 合併症:腰椎すべり症【OT評価】関節症状:手指のこわばり,両側肩関節,手関節,MP関節,PIP関節,足底の疼痛,変形:母指IP関節過伸展,外反母趾,扁平足,上肢機能:両肩関節ROM低下,握力:左/右=150/148mmHg, B.I. 100点,FIM:126点,IADL:自立,自動車運転可能,仕事:着付け師,趣味:ゴルフ,旅行,発表に対し,対象者の同意を得ている.【目的】足底痛の軽減及び外反母趾の進行抑制【アセスメント】足底痛(PaineVAS:10)の要因は,横アーチの扁平化,踵部接地優位の歩容による足底筋の筋緊張亢進,自宅内の床がフローリングであり,歩行時に足底にかかる体重圧がさらに痛みを誘発しているものと考えた.そこで,足底の除圧を目的とした室内履きの導入を検討することにした.スリッパは踵部が浮き上がり,前足部接地優位の歩容となり,足底筋の緊張が亢進し,横アーチの除圧は望めないため不適用,また,市販のルームシューズは,履きやすい生地や構造になっているが,アウトソールの素材が,足底圧を十分除圧できる構造になっているものは少ないため不採用.【アプローチ】足底の除圧と外反母趾の予防を同時に可能とする履物として,アウトソールがエアー構造となっている祭り足袋もしくはエアー足袋の採用を考えた.事例が祭り足袋を所持していたため活用.事例の機能に合わせ,履きやすくなるように,挿入部の拡大やコハゼ留めからベルトの取り付けへと改良した足袋装具を作製.【材料】祭り足袋もしくはエアー足袋【作製方法】①コハゼを全て取り除く②挿入部を拡大③アクリルテープとプラスチックパーツ角カンを使用し,ベルトを取り付ける.【結果】足袋装具の導入で,自宅内歩行時前足部優位の歩容が改善され,足底痛はPaineVASが2に減少し,ほとんど痛みなく自宅内移動が可能になった.さらに,足袋装具導入より3年が経過している現在でも,足底痛の出現はなく,外反母趾やその他の足趾変形の進行も見られない.【結語】発症早期で,足底痛や外反母趾が認められるRA患者に対し,足袋装具の導入を試みた.室内歩行時の足底痛はほぼ解消され,導入後3年が経過し,外反母趾の進行やその他足趾変形の出現は見られないことから,足趾変形防止の一つの手段として足袋装具は効果が得られる可能性があると考える.