第58回日本作業療法学会

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ポスター

運動器疾患

[PD-2] ポスター:運動器疾患 2 

Sat. Nov 9, 2024 11:30 AM - 12:30 PM ポスター会場 (大ホール)

[PD-2-6] 回復期に入院した運動器疾患患者の実績指数40以上と40以下の比較と重回帰分析による検討

安田 弘希1, 田口 潤智2 (1.宝塚リハビリテーション病院 療法部, 2.宝塚リハビリテーション病院 診療部)

【序論】回復期にて入院料1を算定する上で実績指数40以上が必要であり,重要視されている.今回,回復期に入院された運動器疾患患者において実績指数40以上と40以下の2群に分け,その傾向性の違いを比較した.また実績指数を構成する運動FIMの利得と入院期間について多変量解析を用い,それぞれの因子がどの様な影響をもたらすかを検討したため報告を行う.
【対象】回復期に入院された運動器疾患患者を対象とした.2群への振り分けは実績指数が40以上と40以下に分けた.評価項目は年齢,入院日数,運動・認知Functional Independence Measure(以下:FIM),生体電気インピーダンス分析法での骨格筋指標(Skeletal Muscle Mass index:以下SMI)と浮腫やSMIの結果に影響を与える細胞外水分比(Extra Cellular Water/Total Body Water:以下ECW/TBW),運動の強度の単位であるMetabolic Equivalents(以下METs)を評価した.評価は入院時・退院時の値と入退院時の変化量において比較を行った.各々の2群間の解析では正規性に従うものはパラメトリック検定・正規性に従わないものはノンパラメトリック検定を用いて解析を行った.多変量解析においては実績指数を構成する運動FIMの利得および入院日数を従属変数とし,その他の要因を独立変数とした重回帰分析を行った.
【結果】入院時に同意の得られた132名の運動器疾患患者のデータが集積された.全体の年齢は83.1±9.4歳,入院時運動FIMは39.0±14.8,入院日数は66.0±23.7であった.2群間において実績指数40以下は50名,実績指数40以上群が82名となった.実績指数は実績指数40以下群は26.2(21.5-34.2),実績指数40以上群は58.0(47.6-75.9),p<0.01となった.優位差を認めた項目として年齢,入院日数,退院時のECW/TBW,退院の運動FIM,運動FIMの利得,入院時の認知FIM,退院時の認知FIM,認知FIMの利得,退院時METsであった.優位差を認めた各項目の詳細は実績指数40以下群/実績指数40以上群で記載する.年齢は87(83.2-91.7)/82(78.0-88.0),p<0.01.入院日数は84.8(69.0-89.0)/56.5(38.2-76.7),p<0.01.退院時のECW/TBWは0.414±0.009/0.410±0.009,p<0.05.退院の運動FIMは61.5(45.0-61.5)/81.5(73.5-86.0),p<0.01.運動FIMの利得は22.9±9.3/37.0±10.1,p<0.01.入院時の認知FIMは16.0(11.0-24.0)/21.5(15.0-28.7),p<0.01.退院時の認知FIMは24.0(16-31)/31.5(25-35),p<0.01.認知FIMの利得は4.0(0.2-7.0)/6(2.0-11.7),p<0.05.退院時METsは2.4(2.0-3.5)/3.0(2.8-3.8),p<0.05.重回帰分析においては運動FIMの利得を従属変数,独立変数は年齢,入院日数,退院時のECW/TBW,入院時の運動・認知FIM,認知FIMの利得,退院時のMETs,入院時のSMI,入退院時のSMIの変化量で解析を行った.独立変数の多重共線性は認めなかった.R²=0.36であり,入院時の運動FIM:β=−0.56,入院時の認知FIM:β=0.55,認知FIMの利得:β=0.52,退院時のMETs:β=0.24となった.また従属変数を入院日数,独立変数を年齢,退院時のECW/TBW,入院時の運動・認知FIM,運動・認知FIMの利得,退院時のMETs,入院時のSMI,入退院時のSMIの変化量とした重回帰分析も行った.独立変数の多重共線性は認めなかった.R²=0.17であり,入院時の運動FIM:β=ー0.49となった.
【考察】2群を比較した結果,入退院時のSMIには優位な差を認めなかったが退院時のMETsにおいては優位な差を認めたため骨格筋量よりも運動パフォーマンスの方が運動FIMを改善させる可能性が示唆された.また実績指数は運動FIMを使用するが運動FIM自体に入院時の認知FIMや認知FIMの利得も影響を与える可能性が示唆された.