[PD-2-7] 回復期リハビリテーション病棟における大腿骨近位部骨折患者の睡眠状況とリハビリテーションアウトカムの関係
【はじめに】
大腿骨近位部骨折患者の機能回復に影響を与える要因として年齢,認知機能,入院時の活動日常生活(ADL)が挙げられる(Sijp et al., 2020).また,Alessiら(2008)は急性期リハビリテーションにおける日中の睡眠がFunctional Independence Measurement(FIM)に与える重要性を報告している.睡眠がリハビリテーションの成果に影響を及ぼす可能性があることが示唆される一方,回復期リハビリテーション病棟での睡眠とリハビリテーションアウトカムとの関連性については,まだ十分に解明されていない.本研究は,大腿骨近位部骨折術後の高齢患者を対象に,睡眠に関する変数とリハビリテーションアウトカムの関係を明らかにすることを目的とする.
【方法】
本研究は2023年4月から12月にかけて,65歳以上の大腿骨近位部骨折術後患者を対象に2つの回復期リハビリテーション病院で実施された.年齢,性別,BMI,血中アルブミン値などの基本属性のほか,入院時のリハビリテーションアウトカムとしてFunctional Independence Measurement(FIM),Mini Mental State Examination-Japanese(MMSE-J),30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30),Numerical Rating Scale(NRS),入院時歩行の可否を評価した.また,シート型体振動計(パラマウントベッド社製)を用いて入院後2週間の連続した睡眠測定を実施した.日中・夜間の睡眠時間,日中の総臥床時間,夜間睡眠効率の睡眠効率と基本属性およびリハビリテーションアウトカムの関連性について記述統計量算出と相関分析(Spearmanの順位相関係数)を実施した.統計解析にはR(Ver.4.2.2)を使用し,統計的有意性の水準はp<0.05とした.本調査にあたり,対象者からは口頭・書面による十分な説明の後,同意を得た.本研究は広島大学疫学研究倫理審査委員会の承認を得て実施された(承認番号:E2022-0140).
【結果】
合計17名(年齢:78.2歳±5.3)の患者より調査協力が得られた.基本属性と睡眠変数との関連について,年齢と夜間総睡眠時間および夜間睡眠効率(r=0.485, p=0.0486)で有意な正の相関が見られた.BMIと日中総臥床時間(r= -0.658, p=0.00411),日中総睡眠時間(r= -0.612, p=0.00899),夜間の総睡眠時間(r= 0.617, p=0.00831)で有意な負の相関が認められた.
リハビリテーションアウトカムと睡眠変数との関連では,入院時MMSE-Jと日中総睡眠時間との間に有意な負の相関(r=-0.544, p=0.024)が認められた.また,安静時のNRSと夜間睡眠および夜間睡眠効率に中等度の負の相関が認められた(r = -0.481, p = 0.0507)他,FIMと日中・夜間睡眠時間との間に軽度の負の相関が認められた(r=-0.287 p = 0.264)
【考察】
本研究より,睡眠は大腿骨近位部骨折術後の高齢患者に対して,リハビリテーションアウトカムに影響を及ぼす可能性が示唆された.認知機能,痛み,BMIや年齢などの要素が睡眠と関連しており,リハビリテーションのアウトカムに直接的・間接的に影響を与える可能性があると考える.また,認知機能が高い患者では日中の総睡眠時間が短くなることが明らかになった.これは,リハビリテーションの効果や日中の活動性を高めることに寄与する可能性があると考える.しかし,今回は入院時の横断的な調査であり,因果関係について示すことができていない.今後は縦断的な調査を行うとともに,睡眠がリハビリテーションアウトカムに及ぼす影響を多角的に検証する必要がある.
大腿骨近位部骨折患者の機能回復に影響を与える要因として年齢,認知機能,入院時の活動日常生活(ADL)が挙げられる(Sijp et al., 2020).また,Alessiら(2008)は急性期リハビリテーションにおける日中の睡眠がFunctional Independence Measurement(FIM)に与える重要性を報告している.睡眠がリハビリテーションの成果に影響を及ぼす可能性があることが示唆される一方,回復期リハビリテーション病棟での睡眠とリハビリテーションアウトカムとの関連性については,まだ十分に解明されていない.本研究は,大腿骨近位部骨折術後の高齢患者を対象に,睡眠に関する変数とリハビリテーションアウトカムの関係を明らかにすることを目的とする.
【方法】
本研究は2023年4月から12月にかけて,65歳以上の大腿骨近位部骨折術後患者を対象に2つの回復期リハビリテーション病院で実施された.年齢,性別,BMI,血中アルブミン値などの基本属性のほか,入院時のリハビリテーションアウトカムとしてFunctional Independence Measurement(FIM),Mini Mental State Examination-Japanese(MMSE-J),30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30),Numerical Rating Scale(NRS),入院時歩行の可否を評価した.また,シート型体振動計(パラマウントベッド社製)を用いて入院後2週間の連続した睡眠測定を実施した.日中・夜間の睡眠時間,日中の総臥床時間,夜間睡眠効率の睡眠効率と基本属性およびリハビリテーションアウトカムの関連性について記述統計量算出と相関分析(Spearmanの順位相関係数)を実施した.統計解析にはR(Ver.4.2.2)を使用し,統計的有意性の水準はp<0.05とした.本調査にあたり,対象者からは口頭・書面による十分な説明の後,同意を得た.本研究は広島大学疫学研究倫理審査委員会の承認を得て実施された(承認番号:E2022-0140).
【結果】
合計17名(年齢:78.2歳±5.3)の患者より調査協力が得られた.基本属性と睡眠変数との関連について,年齢と夜間総睡眠時間および夜間睡眠効率(r=0.485, p=0.0486)で有意な正の相関が見られた.BMIと日中総臥床時間(r= -0.658, p=0.00411),日中総睡眠時間(r= -0.612, p=0.00899),夜間の総睡眠時間(r= 0.617, p=0.00831)で有意な負の相関が認められた.
リハビリテーションアウトカムと睡眠変数との関連では,入院時MMSE-Jと日中総睡眠時間との間に有意な負の相関(r=-0.544, p=0.024)が認められた.また,安静時のNRSと夜間睡眠および夜間睡眠効率に中等度の負の相関が認められた(r = -0.481, p = 0.0507)他,FIMと日中・夜間睡眠時間との間に軽度の負の相関が認められた(r=-0.287 p = 0.264)
【考察】
本研究より,睡眠は大腿骨近位部骨折術後の高齢患者に対して,リハビリテーションアウトカムに影響を及ぼす可能性が示唆された.認知機能,痛み,BMIや年齢などの要素が睡眠と関連しており,リハビリテーションのアウトカムに直接的・間接的に影響を与える可能性があると考える.また,認知機能が高い患者では日中の総睡眠時間が短くなることが明らかになった.これは,リハビリテーションの効果や日中の活動性を高めることに寄与する可能性があると考える.しかし,今回は入院時の横断的な調査であり,因果関係について示すことができていない.今後は縦断的な調査を行うとともに,睡眠がリハビリテーションアウトカムに及ぼす影響を多角的に検証する必要がある.