[PD-2-8] 関節リウマチに対する人工指MP関節置換術後のセラピィ経験
【緒言】関節リウマチ(以下RA)手指の変形は多種多様であり疼痛,腫脹の消失,変形の治療を目的に人工関節置換術が行われている.今回,重度のRAにより示指~小指MP関節掌側脱臼,尺側偏位を呈した症例に対して人工MP関節置換術,母指IP,中指,環指DIP関節の関節固定術後のセラピィを経験した.術前から手指伸展不足により摘み動作,掴み動作に難渋していた為,母指~小指MP関節伸展補助付きダイナミック装具を作製した.本症例に対しての治療介入,成績について以下に報告する.尚,この報告に際し本人から同意を得ている.
【症例紹介】60代女性,RAにより左示指~小指MP伸展制限,尺側偏位,左母指IP関節,左中指,環指DIP関節の不安定から手術目的に当院入院.主訴は左手指が伸びない,左母指で物を摘まめないであった.Steinbrocker分類Ⅲ(重症期)で手指MP脱臼,尺側偏位,左母指,中指,環指DIP過伸展を認めた.術前ROM(伸展/屈曲)は母指MP-75/95,IP50/-20,示指MP-75/90,PIP15/90,DIP-30/60,中指MP-90/95,PIP15/80,DIP-40/70,環指MP-95/95,PIP0/80,DIP-40/50,小指MP-100/80,PIP20/80,DIP-20/70であった.DASHscore (Disability/symptom)は39.8点 ,HAND20は67.5点,握力2㎏,ピンチ1㎏であった.手術所見として左示指~小指MP関節Swanson人工関節置換術.左母指IP中指・環指DIP関節固定術を鋼線とソフトワイヤーを用いた.
【プロトコル・介入方法】手術翌日から患部以外の自他動ROMを開始,腫脹が落ち着く1週間まではシーネ固定.術後1週から示指~小指MP45度の屈曲制限付きの自他動ROM,日中は母指~小指MP伸展補助付きダイナミック装具(示指~小指は尺側予防のため橈側へ牽引),夜間は手指伸展位装具装着.ダイナミック装具は術後4週,夜間の手指伸展位装具は術後8週装着とした.4週後からダイナミック装具除去,患側手の軽作業開始.6週経過,尺側偏位の再燃を認めるため,日中に軟性尺側偏位予防装具を使用した.ADLは強い握り,摘み動作,母指−示指側腹摘みは避ける指導した.
【結果】術後3カ月時点でROMは母指MP-65/95,IP-10/10,示指MP-50/90,PIP30/90,DIP-30/60,中指MP-30/70,PIP20/80,DIP-20/70,環指MP-30/70,PIP0/90,DIP0/20,小指MP-30/80,PIP30/90,DIP-20/70と術前よりMP関節は伸展できた.またDASH score (Disability/symptom)39.8→32.7 点,HAND20は67.5→59.5点となった.術前に難渋されたボタン操作が可能となり,洗顔動作も可能となった.一方でペットボトルの蓋を開ける,タオルを絞るは困難であった.
【考察】今回,RAによる母指~小指含む重度の関節変形に対して人工指MP関節置換術後のセラピィを行った.術後,母指~小指MP伸展補助付きダイナミック装具を用いて手指の自動運動と摘み動作を行うことで伸筋腱癒着予防とMP屈曲拘縮の改善が得られた.シリコンインプラントによるMP関節人工関節置換術のセラピィにについて手指伸展補助付きダイナミック装具を導入している報告があり,関節可動域が伸展方向へ移行する事で機能的・整容的な改善が得られた.また,母指も含めて手指の動作パターンの改善を早期から運動開始した事もADL改善に至ったと考えられた.岩本はシリコンインプラントは短・中期術後の成績は安定しているが,長期的にはインプラントの破損,変形再発は多いと報告されている1).その為,シリコンインプラントの特徴を熟知した上で,術後セラピィの検討と必要に応じた動作パターンの改善,指導が重要になると示唆された.
【引用文献】
1)岩本卓士:リウマチ手指に対する人工指関節置換術.MB orthop.24(12):63-69.2011.
【症例紹介】60代女性,RAにより左示指~小指MP伸展制限,尺側偏位,左母指IP関節,左中指,環指DIP関節の不安定から手術目的に当院入院.主訴は左手指が伸びない,左母指で物を摘まめないであった.Steinbrocker分類Ⅲ(重症期)で手指MP脱臼,尺側偏位,左母指,中指,環指DIP過伸展を認めた.術前ROM(伸展/屈曲)は母指MP-75/95,IP50/-20,示指MP-75/90,PIP15/90,DIP-30/60,中指MP-90/95,PIP15/80,DIP-40/70,環指MP-95/95,PIP0/80,DIP-40/50,小指MP-100/80,PIP20/80,DIP-20/70であった.DASHscore (Disability/symptom)は39.8点 ,HAND20は67.5点,握力2㎏,ピンチ1㎏であった.手術所見として左示指~小指MP関節Swanson人工関節置換術.左母指IP中指・環指DIP関節固定術を鋼線とソフトワイヤーを用いた.
【プロトコル・介入方法】手術翌日から患部以外の自他動ROMを開始,腫脹が落ち着く1週間まではシーネ固定.術後1週から示指~小指MP45度の屈曲制限付きの自他動ROM,日中は母指~小指MP伸展補助付きダイナミック装具(示指~小指は尺側予防のため橈側へ牽引),夜間は手指伸展位装具装着.ダイナミック装具は術後4週,夜間の手指伸展位装具は術後8週装着とした.4週後からダイナミック装具除去,患側手の軽作業開始.6週経過,尺側偏位の再燃を認めるため,日中に軟性尺側偏位予防装具を使用した.ADLは強い握り,摘み動作,母指−示指側腹摘みは避ける指導した.
【結果】術後3カ月時点でROMは母指MP-65/95,IP-10/10,示指MP-50/90,PIP30/90,DIP-30/60,中指MP-30/70,PIP20/80,DIP-20/70,環指MP-30/70,PIP0/90,DIP0/20,小指MP-30/80,PIP30/90,DIP-20/70と術前よりMP関節は伸展できた.またDASH score (Disability/symptom)39.8→32.7 点,HAND20は67.5→59.5点となった.術前に難渋されたボタン操作が可能となり,洗顔動作も可能となった.一方でペットボトルの蓋を開ける,タオルを絞るは困難であった.
【考察】今回,RAによる母指~小指含む重度の関節変形に対して人工指MP関節置換術後のセラピィを行った.術後,母指~小指MP伸展補助付きダイナミック装具を用いて手指の自動運動と摘み動作を行うことで伸筋腱癒着予防とMP屈曲拘縮の改善が得られた.シリコンインプラントによるMP関節人工関節置換術のセラピィにについて手指伸展補助付きダイナミック装具を導入している報告があり,関節可動域が伸展方向へ移行する事で機能的・整容的な改善が得られた.また,母指も含めて手指の動作パターンの改善を早期から運動開始した事もADL改善に至ったと考えられた.岩本はシリコンインプラントは短・中期術後の成績は安定しているが,長期的にはインプラントの破損,変形再発は多いと報告されている1).その為,シリコンインプラントの特徴を熟知した上で,術後セラピィの検討と必要に応じた動作パターンの改善,指導が重要になると示唆された.
【引用文献】
1)岩本卓士:リウマチ手指に対する人工指関節置換術.MB orthop.24(12):63-69.2011.