[PD-3-1] デジタルデバイスを用いた総自動関節可動域(TAM)法の実際
背景:
手の関節可動域(Range of motion: ROM)の制限は,疼痛,腫れ,筋力低下または,変形などにより発生する.そして,ROMが失われると,握力や巧緻性,手の機能が低下する(Jones Eら,1991).ROM測定は,障害および動作能力の評価,治療的介入の効果判定を行うための重要な測定手法である.リハビリテーションの分野では,簡便かつ非侵襲的で安価なゴニオメーターによるROM測定が広く行われている(Horgerら,1990).しかし,最近ではスマートフォンやタブレットを活用した新しい測定方法が注目されている(Meislinら,2016,Geら,2020).これまでの研究では,遠位指節間関節(DIP関節)の測定調査はあるが,TAMの評価は不十分である.本研究の目的は,スマートフォンやタブレットを用いたTAM測定法の信頼性と妥当性を評価することであり,従来のゴニオメーターに代わる非侵襲的かつ簡便な測定手法の可能性を探ることを目的とした.本研究は,倫理委員会の承認を得て実施した.
方法:
本研究は2つの異なる実験で構成される.画像測定は,タブレット端末ipad Pro 12.9インチ(Apple社製),アプリケーションはグリット線撮影アプリ(Professional,Naradewa 社製)を用いた.測定は2名の評価者により実施され,評価者1は10年以上のハンドセラピストとしての経験を持ち,評価者2はスマートフォン操作に習熟している.実験1では,健常女性15名を対象に静止画を用いて信頼性と妥当性を評価し,実験2では,手指拘縮患者3名(拘縮の程度や特徴は異なる)を対象に動画を用いて評価した.それぞれの実験では,信頼性は再テストを実施し,級内相関ICC(1,2)を求め,妥当性は評価者1と評価者2の級内相関ICC(2,1)を用いた.実験2では,Zhao(2020)を参考に基準となる割り箸を手背側に貼付して動画撮影を実施した.
結果:
実験1では,TAMの検者間信頼性の評価ICC(1,2)は示指0.827,中指0.662,環指0.565,小指0.783であり,検者内信頼性の評価ICC(2,1)は示指0.682,中指0.548,環指0.603,小指0.697であった.これらの数値は,0.75以上であれば「高い信頼性」を示す.実験2では,割り箸を手背部に貼付した動画撮影を実施した方法で,検者間信頼性の平均は0.971,検者内信頼性の平均は0.952であり,非常に高い信頼性が得られた.
考察:
各実験の結果から,スマートフォンやタブレットを使用したTAM測定法は,信頼性が高く実用的であることが示された.特に,動画を使用した新しい測定法は,静止画を用いた従来の方法よりも精度が高いと考えられる.しかし,指の重なりや特定の指の位置によって測定が困難になる場合があり,この問題に対処するための改善策の提案や今後の研究の方向性についても言及することが望ましい.また,撮影角度や機器の違いが測定結果に影響を与える可能性があるため,手法の標準化が求められる.
結論:
本研究により,スマートフォンやタブレットを用いたTAM測定法は,リハビリテーション分野における新しいROM測定方法として有効であることが示された.これらの手法は,遠隔地での評価や指導に役立つ基礎的なデータを提供し,今後はこれらのデバイスを用いた多様な疾患や症状に適用可能な測定法の開発が期待される.
手の関節可動域(Range of motion: ROM)の制限は,疼痛,腫れ,筋力低下または,変形などにより発生する.そして,ROMが失われると,握力や巧緻性,手の機能が低下する(Jones Eら,1991).ROM測定は,障害および動作能力の評価,治療的介入の効果判定を行うための重要な測定手法である.リハビリテーションの分野では,簡便かつ非侵襲的で安価なゴニオメーターによるROM測定が広く行われている(Horgerら,1990).しかし,最近ではスマートフォンやタブレットを活用した新しい測定方法が注目されている(Meislinら,2016,Geら,2020).これまでの研究では,遠位指節間関節(DIP関節)の測定調査はあるが,TAMの評価は不十分である.本研究の目的は,スマートフォンやタブレットを用いたTAM測定法の信頼性と妥当性を評価することであり,従来のゴニオメーターに代わる非侵襲的かつ簡便な測定手法の可能性を探ることを目的とした.本研究は,倫理委員会の承認を得て実施した.
方法:
本研究は2つの異なる実験で構成される.画像測定は,タブレット端末ipad Pro 12.9インチ(Apple社製),アプリケーションはグリット線撮影アプリ(Professional,Naradewa 社製)を用いた.測定は2名の評価者により実施され,評価者1は10年以上のハンドセラピストとしての経験を持ち,評価者2はスマートフォン操作に習熟している.実験1では,健常女性15名を対象に静止画を用いて信頼性と妥当性を評価し,実験2では,手指拘縮患者3名(拘縮の程度や特徴は異なる)を対象に動画を用いて評価した.それぞれの実験では,信頼性は再テストを実施し,級内相関ICC(1,2)を求め,妥当性は評価者1と評価者2の級内相関ICC(2,1)を用いた.実験2では,Zhao(2020)を参考に基準となる割り箸を手背側に貼付して動画撮影を実施した.
結果:
実験1では,TAMの検者間信頼性の評価ICC(1,2)は示指0.827,中指0.662,環指0.565,小指0.783であり,検者内信頼性の評価ICC(2,1)は示指0.682,中指0.548,環指0.603,小指0.697であった.これらの数値は,0.75以上であれば「高い信頼性」を示す.実験2では,割り箸を手背部に貼付した動画撮影を実施した方法で,検者間信頼性の平均は0.971,検者内信頼性の平均は0.952であり,非常に高い信頼性が得られた.
考察:
各実験の結果から,スマートフォンやタブレットを使用したTAM測定法は,信頼性が高く実用的であることが示された.特に,動画を使用した新しい測定法は,静止画を用いた従来の方法よりも精度が高いと考えられる.しかし,指の重なりや特定の指の位置によって測定が困難になる場合があり,この問題に対処するための改善策の提案や今後の研究の方向性についても言及することが望ましい.また,撮影角度や機器の違いが測定結果に影響を与える可能性があるため,手法の標準化が求められる.
結論:
本研究により,スマートフォンやタブレットを用いたTAM測定法は,リハビリテーション分野における新しいROM測定方法として有効であることが示された.これらの手法は,遠隔地での評価や指導に役立つ基礎的なデータを提供し,今後はこれらのデバイスを用いた多様な疾患や症状に適用可能な測定法の開発が期待される.