第58回日本作業療法学会

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ポスター

運動器疾患

[PD-3] ポスター:運動器疾患 3

Sat. Nov 9, 2024 12:30 PM - 1:30 PM ポスター会場 (大ホール)

[PD-3-5] COPMを使用し作業に焦点をあてた肩腱板修復術後の一事例

作業療法士の視点から

伊東 茉生1, 吉村 千翔1, 上島 裕貴1, 蔵垣内 明里1, 稲岡 秀陽2 (1.医療法人同仁会(社団)京都九条病院 リハビリテーション部, 2.医療法人同仁会(社団))

【はじめに】両肩関節腱板断裂後,右肩関節に対して鏡視下腱板修復術(以下ARCR)を施行された80歳代女性を担当した.今回退院後の生活を見据えてCOPMを用い作業療法を行い,自宅復帰へ至った為以下に報告する.尚,発表に際して事例には了承を得ている.
【事例紹介】80歳代女性(以下A氏)右利き,ADL・IADL自立,息子と2人暮らし,X年Y−3月Z日右肩に痛みあり外来受診後,リハビリテーション開始となる.両肩腱板断裂の診断であったが痛みが強い右肩関節に対してX年Y月Z日ARCR施行.
【経過と介入】〈入院前準備〉2人暮らしであったが家事全般を担い,息子の手をわずらわしたくないという自立心が強く,真面目な性格であり,退院後もADL動作は介助なく一人でできるようにという要望があった.そのため入院生活では体力低下しない様になるべく自立した生活とするが,両肩への負担を考慮し(右肩の外転装具固定5週間予定),食事や整容,更衣,入浴動作を行いやすくする道具の提案をイラスト入りの書面を作成し,プロトコルは事前に説明した.
〈術後1~3週〉術後は当院のプロトコルに従い,ポジショニングや右肩関節は他動運動,患部外は自動運動が少しずつ行えるよう介入.しかし,右肩の痛みは強く(NRS:10/10)夜間痛もあり,痛みの緩和や安楽な肢位を取ることに難渋した.A氏の今後の生活の中で何をすることが重要か,大切な作業を明確にするためにもCOPMを使用.せっかく運動が出来て,教えてもらえる機会なので「ストレッチが行える」.庭に花や草木があり「草引きが行える」が重要度10.「洗濯や料理が行える」が重要度9.「字を書く」重要度8.「ひとりで入浴が行える」重要度7.「草引きが行える」「洗濯や料理が行える」「字を書く」は遂行度・満足度ともに1,「ストレッチが行える」遂行度2満足度3,「ひとりで入浴が行える」遂行度・満足度2.右肩関節に対して介入を行いつつ,体力低下予防の為カレンダーに歩数を記録,A氏に必要な患部外の自己トレーニングの提案とトレーニングが行いやすいベッドサイドの環境調整を行った.(FIM:運動64点認知35点)
〈術後5~8週目〉5週間外転装具固定期間後は装具脱着練習や右肩関節自動介助運動開始,しかし右肩関節は自由に動かないもどかしさもある中で更衣動作練習以外にも退院後パジャマ以外の服も着脱できるか確認練習を行った.実際の入浴時間に作業療法士とともに入浴練習を行い,ひとりで行えるという自信と安心感へつながるよう支援した.
【結果】〈術後9~11週〉ADLは自立,洗濯や調理動作練習を開始.しかし自宅環境とは異なるため動作確認ができた安心感はあるが動作自体が出来ているという実感は少ない状態であった.11週目にて自宅退院,FIM:運動77点認知35点,NRS:3/10点,COPM「洗濯や料理が行える」「草引きが行える」は遂行度・満足度1「ストレッチが行える」遂行度・満足度7「字を書く」遂行度7,満足度5「ひとりで入浴が行える」遂行度・満足度ともに10.
【考察】ARCR術後の患者は装具除去後整容・入浴等に不安を感じると報告(河上,2022)があり,術前にプロトコルを説明,装具を見てもらうことで術後左手での生活を想像しやすく,また肩関節への負担を考慮した道具の準備は有効であったと考える.COPMを使用することで肩の痛みに限定せずA氏の大切な作業に焦点をあて協働できた.しかし,洗濯や調理動作に関しては満足度・遂行度ともに変化はなかった.台所等個々の生活空間であり院内の台所とは環境が大きく異なる為,納得のいく動作練習まで至らなかったと思われる.今後は退院前訪問指導等,必要に応じ様々な生活環境に応じた動きの確認や環境調整も必要であると考える.