第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

運動器疾患

[PD-3] ポスター:運動器疾患 3

2024年11月9日(土) 12:30 〜 13:30 ポスター会場 (大ホール)

[PD-3-7] 重量物を持ち上げる動作(仕事や作業)は, 肩関節痛を引き起こすか?

自己記入式アンケートによる調査

矢田 翔馬1, 林 弘樹1, 金子 翔拓2 (1.篠路整形外科, 2.北海道文教大学大学院リハビリテーション科学研究科)

【はじめに】
 肩関節肩峰下インピンジメントは1972年にNeerにより報告され,肩関節が前方屈曲や内旋位となった時に,肩峰下の間隙が慢性的に上腕骨頭と烏口肩峰アーチによって絞扼されることによっている(黒澤,2008).また先行研究において,頭上動作や重量物の持ち上げ動作と肩関節のインピンジメントや肩の疼痛との関連を報告しており(RogierM,et al.2010),(Catherine H,et al.2015),たとえ短時間であっても重量物を持ち上げる動作が肩の疼痛を引き起こすと報告している(JBeach,et al.2012).
 当院においても肩の疼痛を訴える患者の中にも仕事の中で重量物を持ち上げる作業などの力仕事に従事している方が多い印象がある.本研究では,当院において肩関節の疼痛を訴える患者の特徴的な動作を調査し,より詳細に動作と肩関節の疼痛との関連を検証する目的でアンケート調査を実施した.
 本研究は,ヘルシンキ宣言に基づき, さらには研究の目的,個人情報保護を明記した同意書を作成し承諾を得ている.
【対象・方法】
 対象は,当院にて肩関節周囲炎,インピンジメント症候群と診断された平均年齢59.1歳の男性12名,女性10名の計22名であった.方法は,肩関節疾患に対して先行研究の肩関節周囲炎に対する誘因動作を調査した自己記入式アンケートを基に作成した.質問項目は,年齢,性別,利き手,職業分類(令和4年版厚生労働省編職業分類表),疼痛の強さ,デスクワークの有無,頭上の作業,重いものを持つ作業,細かい作業,低い位置での作業,前方リーチ動作の有無,回旋動作の有無について列挙した.
【結果】
 アンケートを実施した22名のうち,仕事で重量物を持ち上げる動作を行っていると回答したのが12名(60%),重いものを持つことがあると回答したのは11名(55%)となった.
【考察】
 当院における肩関節疾患症例に対するアンケート調査では,仕事で重量物を持ち上げる動作を行っていると回答したのが12名(60%),重量物を持っていると回答したのが11名(55%)となった.先行研究では頭上動作や重量物の持ち上げ動作と肩関節のインピンジメントや肩の疼痛との関連を報告されている(RogierM,et al.2010),(Catherine H,et al.2015).本研究の結果より,先行研究の結果を支持する形となった.また,高い場所への持ち上げ動作で肩甲上腕関節への関節反力の合力が有意に高かったと報告しており(中島ら,2022),日常的な力仕事による肩関節への負荷が疼痛の発生と関連している可能性が示唆された.本研究では,アンケート調査により,肩関節痛が重量物の持ち上げ動作と関連している可能性があるため,仕事や日常生活の中での動作に対して予防的な啓蒙活動を行っていくことや,日常的に重量物を持ち上げる作業を行っている患者に対して,動作の制限を設け,疼痛の緩和を促すなど今後の治療への活用が期待できると考える.