[PD-4-8] Yoke装具を用いた伸筋腱脱臼に対する外来作業療法の経験
【緒言】当院では手指伸筋腱損傷後のハンドセラピィにおいてYoke装具を用いたImmediate controlled active motion(以下,ICAM法)1)を2019年より導入している.本邦において,ICAM法に関する治療報告は主として伸筋腱断裂に対する内容が多いが,近年,伸筋腱脱臼に対するYoke装具を用いた治療報告が散見されるようになってきている2).今回,Zone5での伸筋腱脱臼を生じた2症例に対しYoke装具を用いたICAM法を応用し外来作業療法を行った結果,比較的良好な成績を得られたので報告する.
【対象】2023年4月から2024年2月までに当院にて伸筋腱脱臼に対する手術を施行した2例2指を対象とした.女性2名で,年齢は14歳と60歳で,損傷指は中指2指であった,損傷部位は全例Zone5の橈側の矢状索断裂で,外来手術にて同部位の縫合が施行された.外来作業療法は患者都合もあり術後2週目から開始した.発表にあたり2例に書面にて同意を得ており,当院倫理委員会の承認を得ている.
【方法】〇装具:長南ら2)の報告を参考に作成した.日中用のYoke装具は示指から環指までを連結させ中指MP関節を他指より20度伸展させ作成した.夜間装具は中指のみ指尖部まで伸展位に保持し,他指はフリーにした手部を覆う装具を作成した.
〇プロトコール:術中所見では縫合後にMP関節が自動屈曲70度で伸筋腱が再脱臼しないことを確認した.プロトコールは長南らの報告を参考に介入開始が術後2週目となったため,装具スケジュールを2週間遅らせた.初回実施時にYoke装具と夜間装具を作成し,両装具ともに4週装着し術後6週で除去する.作業療法ではMP関節の屈曲角度に留意しながら等張性の自動屈伸運動,他動伸展保持練習を術後6週まで行ない,術後8週から中指MP関節の伸展不全を見ながら他動屈曲を開始する.自主練習では日中はYoke装具装着下で手指の自動屈伸運動を1時間に20回程度行う.ADLでは術後5週目からYoke装具装着下で軽作業開始とし,術後8週から中等度作業開始,術後12週で制限なしで使用を許可する.
〇データ:2例の最終評価時の%TAM,術後3か月での再脱臼の有無とHAND20スコア.
【結果】2例の%TAMは14歳女性が術後4か月で90.9%,60歳女性が術後3か月で100%であった.伸筋腱の再脱臼は無く,HAND20スコアは14歳女性が9,65歳女性が2であった.
【考察】指伸筋腱脱臼症例に対しYoke装具を用いた介入を行った.結果,最終的に再脱臼せずに%TAMは2例共に90%以上を獲得する事が出来た.伸筋腱脱臼に対するハンドセラピィでは,これまで一定期間固定をした後に可動域練習を開始する事が一般的であり,固定が長期化すると拘縮や腱癒着などが生じる問題があった.本法は術後早期から運動を開始できるため拘縮や腱癒着の予防も出来,生活の中で早期より段階的な使用も可能となり有用な方法であると考える.今後は術直後からYoke型装具を作成し介入を進めていきたい.
【参考文献】
1) 越後歩,他:ICAM法(早期制限下自動運動法)を用いた手指伸筋腱縫合術後のセラピィ.日本ハンドセラピィ学会誌,第10巻,4号:131-136,2018.
2)長南行浩,他: Relative motion splintを使用した矢状索損傷術後のハンドセラピィ.日本ハンドセラピィ学会誌,第13巻,3号:122-126,2021.
【対象】2023年4月から2024年2月までに当院にて伸筋腱脱臼に対する手術を施行した2例2指を対象とした.女性2名で,年齢は14歳と60歳で,損傷指は中指2指であった,損傷部位は全例Zone5の橈側の矢状索断裂で,外来手術にて同部位の縫合が施行された.外来作業療法は患者都合もあり術後2週目から開始した.発表にあたり2例に書面にて同意を得ており,当院倫理委員会の承認を得ている.
【方法】〇装具:長南ら2)の報告を参考に作成した.日中用のYoke装具は示指から環指までを連結させ中指MP関節を他指より20度伸展させ作成した.夜間装具は中指のみ指尖部まで伸展位に保持し,他指はフリーにした手部を覆う装具を作成した.
〇プロトコール:術中所見では縫合後にMP関節が自動屈曲70度で伸筋腱が再脱臼しないことを確認した.プロトコールは長南らの報告を参考に介入開始が術後2週目となったため,装具スケジュールを2週間遅らせた.初回実施時にYoke装具と夜間装具を作成し,両装具ともに4週装着し術後6週で除去する.作業療法ではMP関節の屈曲角度に留意しながら等張性の自動屈伸運動,他動伸展保持練習を術後6週まで行ない,術後8週から中指MP関節の伸展不全を見ながら他動屈曲を開始する.自主練習では日中はYoke装具装着下で手指の自動屈伸運動を1時間に20回程度行う.ADLでは術後5週目からYoke装具装着下で軽作業開始とし,術後8週から中等度作業開始,術後12週で制限なしで使用を許可する.
〇データ:2例の最終評価時の%TAM,術後3か月での再脱臼の有無とHAND20スコア.
【結果】2例の%TAMは14歳女性が術後4か月で90.9%,60歳女性が術後3か月で100%であった.伸筋腱の再脱臼は無く,HAND20スコアは14歳女性が9,65歳女性が2であった.
【考察】指伸筋腱脱臼症例に対しYoke装具を用いた介入を行った.結果,最終的に再脱臼せずに%TAMは2例共に90%以上を獲得する事が出来た.伸筋腱脱臼に対するハンドセラピィでは,これまで一定期間固定をした後に可動域練習を開始する事が一般的であり,固定が長期化すると拘縮や腱癒着などが生じる問題があった.本法は術後早期から運動を開始できるため拘縮や腱癒着の予防も出来,生活の中で早期より段階的な使用も可能となり有用な方法であると考える.今後は術直後からYoke型装具を作成し介入を進めていきたい.
【参考文献】
1) 越後歩,他:ICAM法(早期制限下自動運動法)を用いた手指伸筋腱縫合術後のセラピィ.日本ハンドセラピィ学会誌,第10巻,4号:131-136,2018.
2)長南行浩,他: Relative motion splintを使用した矢状索損傷術後のハンドセラピィ.日本ハンドセラピィ学会誌,第13巻,3号:122-126,2021.