[PD-5-1] 情報機器作業時の頸椎肢位の違いによる手関節伸筋群筋硬度の経時的変化
【緒言】情報機器(Visual Display Terminal;VDT)作業とは, ディスプレイ, キーボード等により構成される作業で, VDT作業とテニス肘の関連性について報告され, テニス肘の発症割合は, テニスプレイヤーが10%, VDT作業従事者が90%弱と言われている(金子ら, 2018). 我々の報告(金子ら, 2022)では, 頭蓋脊椎角(Craniovertebral angle: CV角;第7頸椎に対する水平線と耳珠がなす角)を23°に設定した不良姿勢の被験者群では, 手関節伸筋群の筋硬度が, CV角55°に設定した良姿勢の被験者群と比較し, 手関節伸筋群の筋硬度が即時的に1.3倍上昇することを明らかにした. しかしながら, 筋硬度の経時的な変化については明らかとなっておらず, VDT作業が長時間の作業になることが多いことを考慮すると, 経時的な変化についても検討する必要があると思われる. 本研究の目的は, VDT作業時の良姿勢および不良姿勢時の僧帽筋上部および手関節伸筋群の筋硬度を評価すること, さらには経時的な筋硬度の変化を評価し明らかにすることとする.
【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に基づき,本報告に対して説明と同意を行い,個人情報の取り扱いには配慮した.
【対象と方法】対象は女子大学20名, 利き手は全例右手. 既往歴および自覚的肩こりのない者. VDT作業時の良姿勢と不良姿勢は, 先行研究に準じ, CV角の計測は, 第7頸椎に対する水平線と耳珠がなす角とし, 良姿勢はCV角55°, 不良姿勢は23°とした.実施課題は, 先行研究に準じタイピングを各姿勢で20分ずつ. タイピング課題は, 宮沢賢治著「注文の多い料理店」を実施. 筋硬度の計測はtry-all製のneutoneを使用し, N=0.0258×測定値+0.4によって単位をニュートンに換算した. 測定部位は僧帽筋上部線維の筋腹中央, 手関節伸筋群筋腹中央(長橈側手根伸筋および短橈側手根伸筋)とした. 結果の分析方法は, 良姿勢のタイピング前の筋硬度(N)を基準に, 良姿勢タイピング後, 不良姿勢タイピング前, 不良姿勢タイピング後の筋硬度の変化率を算出し対応のある一元配置分散分析法にて比較.
【結果】僧帽筋の変化率は, 良姿勢100%とすると, 良姿勢20分後110.4%, 不良姿勢即時127.9%, 不良姿勢20分後141.2%, 手関節伸筋群の変化率は, 良姿勢100%とすると, 良姿勢20分後106%, 不良姿勢即時106.5%, 不良姿勢20分後122.1%であり, 両筋とも不良姿勢20分後に有意に上昇することが明らかとなった(p<0.05). しかし, 良姿勢では20分経過しても僧帽筋および手関節伸筋群の筋硬度は統計学的に有意な上昇を認めなかった
【考察】僧帽筋上部線維は頸椎前方突出により筋の起始停止が伸長し, 筋張力が上昇し, その結果として筋硬度が上昇したと考える. 手関節伸筋群の筋硬度についても不良姿勢にて20分課題を実施した結果上昇したが, 課題中の手関節の肢位については変化はなかった. しかし筋硬度が上昇をした. このことは, 脊髄の興奮性の多髄節への影響が影響していると考える. 弓永らは, 上位脊髄のα運動ニューロンの興奮は, 下位髄節のα運動ニューロンに影響を与えるとしており,このことが手関節伸筋群の筋硬度に影響を与えた可能性が考えられる.不良姿勢での課題遂行は, 僧帽筋のみならず, 手関節伸筋群の筋硬度に影響を与えることが示唆された.
【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に基づき,本報告に対して説明と同意を行い,個人情報の取り扱いには配慮した.
【対象と方法】対象は女子大学20名, 利き手は全例右手. 既往歴および自覚的肩こりのない者. VDT作業時の良姿勢と不良姿勢は, 先行研究に準じ, CV角の計測は, 第7頸椎に対する水平線と耳珠がなす角とし, 良姿勢はCV角55°, 不良姿勢は23°とした.実施課題は, 先行研究に準じタイピングを各姿勢で20分ずつ. タイピング課題は, 宮沢賢治著「注文の多い料理店」を実施. 筋硬度の計測はtry-all製のneutoneを使用し, N=0.0258×測定値+0.4によって単位をニュートンに換算した. 測定部位は僧帽筋上部線維の筋腹中央, 手関節伸筋群筋腹中央(長橈側手根伸筋および短橈側手根伸筋)とした. 結果の分析方法は, 良姿勢のタイピング前の筋硬度(N)を基準に, 良姿勢タイピング後, 不良姿勢タイピング前, 不良姿勢タイピング後の筋硬度の変化率を算出し対応のある一元配置分散分析法にて比較.
【結果】僧帽筋の変化率は, 良姿勢100%とすると, 良姿勢20分後110.4%, 不良姿勢即時127.9%, 不良姿勢20分後141.2%, 手関節伸筋群の変化率は, 良姿勢100%とすると, 良姿勢20分後106%, 不良姿勢即時106.5%, 不良姿勢20分後122.1%であり, 両筋とも不良姿勢20分後に有意に上昇することが明らかとなった(p<0.05). しかし, 良姿勢では20分経過しても僧帽筋および手関節伸筋群の筋硬度は統計学的に有意な上昇を認めなかった
【考察】僧帽筋上部線維は頸椎前方突出により筋の起始停止が伸長し, 筋張力が上昇し, その結果として筋硬度が上昇したと考える. 手関節伸筋群の筋硬度についても不良姿勢にて20分課題を実施した結果上昇したが, 課題中の手関節の肢位については変化はなかった. しかし筋硬度が上昇をした. このことは, 脊髄の興奮性の多髄節への影響が影響していると考える. 弓永らは, 上位脊髄のα運動ニューロンの興奮は, 下位髄節のα運動ニューロンに影響を与えるとしており,このことが手関節伸筋群の筋硬度に影響を与えた可能性が考えられる.不良姿勢での課題遂行は, 僧帽筋のみならず, 手関節伸筋群の筋硬度に影響を与えることが示唆された.