[PD-5-6] 犬咬傷により複合筋断裂と橈骨神経損傷を呈した1症例
【序論】犬咬傷の報告は多いが,犬咬傷による上腕の複合筋断裂の報告は著者が調査した限り見当たらない.今回,犬咬傷による上腕複合筋断裂と橈骨神経損傷症例を経験した.術後早期の関節可動域訓練や装具療法,ADL訓練,対人援助職復帰を目指す職業訓練を行い良好な成績を得たため報告する.発表に際し症例に趣旨説明し同意を得た.
【目的】十分とはいえない機能改善例でも早期からの職業訓練により現職復帰可能となった症例への介入を示す.
【方法】症例は40歳代女性,右利き,職業は当院看護助手.疾患名は右上腕犬咬傷,上腕二頭筋・腕橈骨筋断裂,橈骨神経損傷.X日に犬に咬まれ救急搬送.X+14日に上腕二頭筋の遠位筋腱移行部を筋膜に縫合.腕橈骨筋も縫合.橈骨神経咬圧迫痕あったが経過観察.外側前腕皮神経も損傷があり周囲を締結.感覚障害はSemmes Weinstein monofilament test(以下SWMT)で右上腕外側Red,前腕外側から母指・示指がPurpleでしびれ感(++).筋力は徒手筋力テスト(以下MMT)で右肘屈曲は回内位・中間位・回外位2,手背屈2,手指伸展1.上肢障害評価表(以下THE DASH)は機能障害92/100点,仕事0/100点.復職への課題は動作分析の結果2分類された.1つ目はシーツ交換など指先での強い把持を伴う巧緻動作である.2つ目は酸素ボンベ取り付け調整など重量物の支持を伴う機器の操作である.いずれも動作に必要な機能向上訓練と安全な代償を取り入れた実動作反復訓練を行い獲得を目指した.さらに所属病棟師長と症例の病棟業務に対する現状と課題や今後の見通しについて複数回の意見交換を行った.リハビリ経過は腱縫合術後3週間は肘90°屈曲でシーネ固定.2週経過後肘90°から110°減張範囲での可動域訓練を実施.3週経過後,肘屈筋補助のヒンジ付き動的装具を装着し,他動屈曲・自動伸展運動を実施.5週経過後,自動屈曲運動を実施.7週経過後,手関節軽度背屈位で固定し,手指基節骨を背側から牽引する動的装具を装着し,ADL訓練とごく軽負荷の職業訓練を導入.夜間は静的な肘伸展矯正装具を装着.9週経過後掌側カックアップ装具を装着し,ADL訓練と軽負荷の職業訓練を実施.11週経過後抵抗運動や筋力訓練,中等度の職業訓練を実施.26週から看護補助業務の実動作を病棟で実施.装具療法は肘屈筋の機能補助装具・肘関節伸展矯正装具は関節可動域改善を目的とした.手関節手指の機能的肢位保持装具は早期からのADL訓練や職業訓練を目的とした.
【結果】術後30週でROMは右肘屈曲140°伸展−10°.感覚障害はSWMTで右上腕外側Red,前腕外側がPurple,母指・示指がBlueでしびれ感は(+).筋力はMMTで右肘屈曲は回内位4,中間位・回外位3,手関節背屈4,手指伸展3.握力は右20kg,左24kg.THE DASHは機能障害100/100点,仕事50/100点.日本肘機能学会肘機能スコア(外傷)は総合点78/100点.職業動作は全て可能だが,動作後に前腕伸筋群の強い疲労感やしびれ感(++)と増強があり,外側前腕皮神経の絞扼も考えられ持久的な動作遂行に配慮が必要である.復帰時期は所属長と調整中である.
【考察】複合筋断裂で,犬咬傷挫創例のセラピィを経験した.上腕二頭筋腱移行部を筋膜縫合例であり,自動屈曲運動は2週遅れの5週経過後に開始となった.肘関節に運動制限が生じ,柔軟性獲得に向け難渋する症例となったが,複数の装具の合目的な投入により制限の少ない良好な成績を得た.複合的な挫滅損傷例の職業訓練のため,必要な機能向上訓練だけでなく,軟部組織の修復過程を考慮し,早期より実動作反復訓練を行った.また所属長との情報交換など職場環境への介入も現職復帰が可能となった要因であると考える.
【目的】十分とはいえない機能改善例でも早期からの職業訓練により現職復帰可能となった症例への介入を示す.
【方法】症例は40歳代女性,右利き,職業は当院看護助手.疾患名は右上腕犬咬傷,上腕二頭筋・腕橈骨筋断裂,橈骨神経損傷.X日に犬に咬まれ救急搬送.X+14日に上腕二頭筋の遠位筋腱移行部を筋膜に縫合.腕橈骨筋も縫合.橈骨神経咬圧迫痕あったが経過観察.外側前腕皮神経も損傷があり周囲を締結.感覚障害はSemmes Weinstein monofilament test(以下SWMT)で右上腕外側Red,前腕外側から母指・示指がPurpleでしびれ感(++).筋力は徒手筋力テスト(以下MMT)で右肘屈曲は回内位・中間位・回外位2,手背屈2,手指伸展1.上肢障害評価表(以下THE DASH)は機能障害92/100点,仕事0/100点.復職への課題は動作分析の結果2分類された.1つ目はシーツ交換など指先での強い把持を伴う巧緻動作である.2つ目は酸素ボンベ取り付け調整など重量物の支持を伴う機器の操作である.いずれも動作に必要な機能向上訓練と安全な代償を取り入れた実動作反復訓練を行い獲得を目指した.さらに所属病棟師長と症例の病棟業務に対する現状と課題や今後の見通しについて複数回の意見交換を行った.リハビリ経過は腱縫合術後3週間は肘90°屈曲でシーネ固定.2週経過後肘90°から110°減張範囲での可動域訓練を実施.3週経過後,肘屈筋補助のヒンジ付き動的装具を装着し,他動屈曲・自動伸展運動を実施.5週経過後,自動屈曲運動を実施.7週経過後,手関節軽度背屈位で固定し,手指基節骨を背側から牽引する動的装具を装着し,ADL訓練とごく軽負荷の職業訓練を導入.夜間は静的な肘伸展矯正装具を装着.9週経過後掌側カックアップ装具を装着し,ADL訓練と軽負荷の職業訓練を実施.11週経過後抵抗運動や筋力訓練,中等度の職業訓練を実施.26週から看護補助業務の実動作を病棟で実施.装具療法は肘屈筋の機能補助装具・肘関節伸展矯正装具は関節可動域改善を目的とした.手関節手指の機能的肢位保持装具は早期からのADL訓練や職業訓練を目的とした.
【結果】術後30週でROMは右肘屈曲140°伸展−10°.感覚障害はSWMTで右上腕外側Red,前腕外側がPurple,母指・示指がBlueでしびれ感は(+).筋力はMMTで右肘屈曲は回内位4,中間位・回外位3,手関節背屈4,手指伸展3.握力は右20kg,左24kg.THE DASHは機能障害100/100点,仕事50/100点.日本肘機能学会肘機能スコア(外傷)は総合点78/100点.職業動作は全て可能だが,動作後に前腕伸筋群の強い疲労感やしびれ感(++)と増強があり,外側前腕皮神経の絞扼も考えられ持久的な動作遂行に配慮が必要である.復帰時期は所属長と調整中である.
【考察】複合筋断裂で,犬咬傷挫創例のセラピィを経験した.上腕二頭筋腱移行部を筋膜縫合例であり,自動屈曲運動は2週遅れの5週経過後に開始となった.肘関節に運動制限が生じ,柔軟性獲得に向け難渋する症例となったが,複数の装具の合目的な投入により制限の少ない良好な成績を得た.複合的な挫滅損傷例の職業訓練のため,必要な機能向上訓練だけでなく,軟部組織の修復過程を考慮し,早期より実動作反復訓練を行った.また所属長との情報交換など職場環境への介入も現職復帰が可能となった要因であると考える.