[PD-6-1] CBAの介入により慢性疼痛への移行が予防されADLが拡大した事例
【はじめに】今回,破局的思考を認め,自己効力感の低下,慢性疼痛への移行によりADLの阻害が予測される可能性のあるクライアント(以下,CL)を担当した.自己効力感の向上を目的に,多職種で認知行動療法(以下,CBT)を用いて痛みと活動量の可視化や疼痛教育を行った.結果,自己効力感が向上し,慢性疼痛へ移行せずADL拡大が可能となった.
本報告の目的は多職種でCBTを用いた関わりが,よりCLの自己効力感の向上に影響する可能性が示唆されたため以下に報告する.本報告に際し,本人に書面にて説明し同意を得た.
【事例紹介】A氏は70歳代の女性で家族や他者に依存的な性格である.X年Y-1月Z-36日に転倒しL3圧迫骨折の診断にてB病院へ入院となり,X年Y月Z日リハビリ目的で当院入院となる.病前は長女・孫と3人暮らしで屋内は椅子を押して移動,ADLは入浴以外自立していた.
【作業療法評価】A氏は『1人で歩いてトイレに行くこと』を強く望んでいたが,動作時痛への恐怖心が強く離床に消極的であった. Y+1月にはリハビリでサークル歩行器歩行(以下,歩行器歩行)140m程度可能であったが,生活場面では「痛くなるからやらない」と消極的で,現状と自己認識が解離していた.移動は車椅子全介助でFIM1点,日本語短縮版痛みの破局的思考尺度(以下,PCS-6)24/24点で破局的思考,Hospital Anxiety and Depression Scale(以下,HADS)19点で抑うつ傾向,Pain Self-Efficacy Questionnaire(以下,PSEQ)32/60点で自己効力感が低下していた.
【介入方針】合意目標は『歩行器歩行でトイレに一人で行くこと』であったが,破局的思考により目標達成が難しいと思われた.そこで,CBTを用いた痛みと活動量の可視化や疼痛教育を多職種で行い自己効力感の向上を目指す方針とした.
【経過】認識が変化し歩行器歩行見守りとなった時期Z+21~30日:NRS8点と強い痛みの中で140m歩行可能で,「すごいでしょ」と前向きな発言が聞かれていた.一方で『リハビリだから出来ている』という認識で,病棟歩行拡大は困難であった.そこで,リハビリでの歩行練習の病棟周回,その際の痛みを自己評価で行い,痛みがあっても歩けると認識強化を行った.また,PT介入時に疼痛教育を取り入れた.結果,「痛くてもこれだけ歩けるからトイレの時も歩ける気がする」と認識が変化し,ADLへの汎化が可能となった.
歩行器歩行自立となった時期Z+31~40日:見守り歩行は可能となったが,一人での歩行には不安が強かった.そこで,トイレ以外でも看護師と歩く機会を設け,『一人でも大丈夫』という声掛けによるA氏の認識変化や自己効力感の向上を目指した.歩行に対し恐怖心なく歩行器歩行自立となった.
【結果】歩行器歩行自立となりFIM6点,PCS-6は1/24点で破局的思考なし,HADSは6点で抑うつの軽減, PSEQは52/60点と向上し自己効力感の向上を認めた.
【考察】山本らは「筋・骨格系の組織障害による痛みだけではなく心理的な痛みがある事を考慮して両方の側面からアプローチしていく事が必要」と述べている.
今回,痛みに対し破局的思考を認め,自己効力感の低下,慢性疼痛への移行する可能性の高いCLに対し,身体機能,多職種でCBTを用いた心理面の両側面へ介入を行った.多職種がCBTを用いて認知や行動の変容に働きかけ,精神症状の改善を目指したことで,認識修正と生活場面での成功体験の増加となり,自己効力感の向上に有用であったと考える.
本報告の目的は多職種でCBTを用いた関わりが,よりCLの自己効力感の向上に影響する可能性が示唆されたため以下に報告する.本報告に際し,本人に書面にて説明し同意を得た.
【事例紹介】A氏は70歳代の女性で家族や他者に依存的な性格である.X年Y-1月Z-36日に転倒しL3圧迫骨折の診断にてB病院へ入院となり,X年Y月Z日リハビリ目的で当院入院となる.病前は長女・孫と3人暮らしで屋内は椅子を押して移動,ADLは入浴以外自立していた.
【作業療法評価】A氏は『1人で歩いてトイレに行くこと』を強く望んでいたが,動作時痛への恐怖心が強く離床に消極的であった. Y+1月にはリハビリでサークル歩行器歩行(以下,歩行器歩行)140m程度可能であったが,生活場面では「痛くなるからやらない」と消極的で,現状と自己認識が解離していた.移動は車椅子全介助でFIM1点,日本語短縮版痛みの破局的思考尺度(以下,PCS-6)24/24点で破局的思考,Hospital Anxiety and Depression Scale(以下,HADS)19点で抑うつ傾向,Pain Self-Efficacy Questionnaire(以下,PSEQ)32/60点で自己効力感が低下していた.
【介入方針】合意目標は『歩行器歩行でトイレに一人で行くこと』であったが,破局的思考により目標達成が難しいと思われた.そこで,CBTを用いた痛みと活動量の可視化や疼痛教育を多職種で行い自己効力感の向上を目指す方針とした.
【経過】認識が変化し歩行器歩行見守りとなった時期Z+21~30日:NRS8点と強い痛みの中で140m歩行可能で,「すごいでしょ」と前向きな発言が聞かれていた.一方で『リハビリだから出来ている』という認識で,病棟歩行拡大は困難であった.そこで,リハビリでの歩行練習の病棟周回,その際の痛みを自己評価で行い,痛みがあっても歩けると認識強化を行った.また,PT介入時に疼痛教育を取り入れた.結果,「痛くてもこれだけ歩けるからトイレの時も歩ける気がする」と認識が変化し,ADLへの汎化が可能となった.
歩行器歩行自立となった時期Z+31~40日:見守り歩行は可能となったが,一人での歩行には不安が強かった.そこで,トイレ以外でも看護師と歩く機会を設け,『一人でも大丈夫』という声掛けによるA氏の認識変化や自己効力感の向上を目指した.歩行に対し恐怖心なく歩行器歩行自立となった.
【結果】歩行器歩行自立となりFIM6点,PCS-6は1/24点で破局的思考なし,HADSは6点で抑うつの軽減, PSEQは52/60点と向上し自己効力感の向上を認めた.
【考察】山本らは「筋・骨格系の組織障害による痛みだけではなく心理的な痛みがある事を考慮して両方の側面からアプローチしていく事が必要」と述べている.
今回,痛みに対し破局的思考を認め,自己効力感の低下,慢性疼痛への移行する可能性の高いCLに対し,身体機能,多職種でCBTを用いた心理面の両側面へ介入を行った.多職種がCBTを用いて認知や行動の変容に働きかけ,精神症状の改善を目指したことで,認識修正と生活場面での成功体験の増加となり,自己効力感の向上に有用であったと考える.