第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

運動器疾患

[PD-6] ポスター:運動器疾患 6

2024年11月9日(土) 16:30 〜 17:30 ポスター会場 (大ホール)

[PD-6-4] 大腿骨近位部骨折術後の骨粗鬆症患者における当院でのリハビリテーション(OLS)

青島 健太, 鈴木 裕也, 四條 敦史 (島田市立総合医療センター リハビリテーション指導室)

【背景と目的】
 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版では,骨粗鬆症の患者は骨折のリスクが高く,チームで骨折を予防していくことが重要とされている.
 当院では,2019年度より骨粗鬆症リエゾンサービス(以下OLS)チームを立ち上げ,大腿骨近位部骨折術後の骨粗鬆症患者を中心に,作業療法士がチームの一員として,回復期リハビリテーション病棟入院中と退院後の外来にて,運動機能,認知機能,ADLの評価と指導を行い,最終的には社会参加を促進するなど,長期にわたり支援している.
 本邦において,作業療法士がOLSに関わった際の効果を検証した研究は少ない.本研究の目的は,OLSに作業療法士が関わることで,患者にどのような変化を及ぼすのかを検討することである.なお,本研究に際し,対象者より同意を得ている.
【方法】
 対象は2023年1月から12月の期間中,大腿骨近位部骨折術後に回復期リハビリテーション病棟を経て自宅に退院され,外来リハビリテーションを実施した患者とした.
 外来での初期評価時に作業療法士が運動機能評価として,①開眼での患側片脚立位時間,②椅子での5回起立着座時間,③3M Time up-and-go test(以下3M TUG),④患側膝伸展筋力,⑤握力を評価,認知機能評価として,⑥改訂長谷川式簡易知能評価スケール(以下HDS-R)を評価,ADL評価として,⑦機能的自立度尺度(以下FIM)を評価する.それを基に運動指導と生活指導を行う.そして,初期評価より3ヵ月前後に再評価を行い比較した.
 統計的手法について,開眼での患側片脚立位時間(手すりなし)と握力はt検定,その他はWilcoxonの符号付順位検定を用いた.すべての検定にEZR Ver1.64を使用し,有意水準はp=0.05とした.
【結果】
 対象は29名で,年齢81.3±7.9歳,男性3名,女性26名,患側下肢は右側15名,左側14名であった.初期評価と再評価は各々,①開眼での患側片脚立位時間が(手すりなし)17.1±13.1秒,20.4±11.4秒,(手すり支持)85.6±38.1秒,109.2±45.7,②椅子での5回起立着座時間が(手すりなし)13.1±4.1秒,12.3±3.8秒,(手すり支持)14.2±2.3秒,13.6±4.3秒,③3M TUGが17.9±7.9秒,16.1±7.4秒,④患側膝伸展筋力がMMT 3.6±0.5,4.0±0.6,⑤握力が右側16.8±4.6kg,17.1±4.9kg,左側14.6±4.4kg,14.8±4.3kg,⑥HDS-Rが26.2±4.2点,26.4±4.3点,⑦FIMが114.4±7.3点,115.1±7.4点であった.
 開眼での患側片脚立位時間(手すり支持),3M TUG,患側膝伸展筋力,FIMにおいて,有意差が認められた.その他では有意差が認められなかったが,いずれも初期評価時より再評価時のほうが数値は上回っていた.再骨折率は0%であった.
【考察】
 本研究では,患者の運動機能とFIMにおいて有意差のある改善,HDS-Rにおいて有意差は得られなかったものの,点数の維持,向上という結果が得られた.
 運動指導に加え,作業療法士の強みである住環境に応じた指導と,自助具や福祉用具の提供,最終的には地域での社会活動への参加を促すなど,生活範囲の拡大を見据えたアプローチを行ったことが,運動機能とADLの改善に繋がったのでないかと考えた.
 また,久保田ら(2002)は有酸素運動が前頭葉機能を高めると報告している.生活範囲が拡大することで歩行量が増加し,前頭葉機能が賦活化されることで,認知機能の維持,向上にも繋がったのではないかと考える.