[PD-6-5] 大腿骨近位部骨折患者における入院中の認知機能の低下におよぶ影響因子
【はじめに】
大腿骨近位部骨折は高齢者に多い疾患である.大腿骨近位部骨折は入院による治療が必要となり,身体機能低下や認知機能低下のリスクが高くなる.しかし,認知機能の低下に関連する入院中の具体的な影響因子は明らかではない.
【目的】
大腿骨近位部骨折患者における入院中の認知機能の低下に影響を及ぼす因子を調査する.
【方法】
2017年11月から2023年12月までに大腿骨近位部骨折を受傷し当院で手術を受けた65歳以上の患者で,入院前から膀胱留置カテーテルを使用していた患者や透析で自尿がない患者は除外した.認知機能は入院時と退院時のMini Mental State Examination-Japanese(以下,MMSE-J)を評価した.過去の報告からMMSE-Jの最小変化量Minimally Clinical important Difference(以下,MCID)は1-3点であり,入院中にMMSE-Jが4点以上の低下した場合を認知機能低下と判断した.MMSE-Jが4点以上の低下した群を認知機能低下群,それ以外を認知機能維持・改善群とした.その他の調査項目は年齢,性別,入院前のMotor Functional Independence Measure(以下,M-FIM)・生活場所・排泄様式,骨折部位,術式,膀胱留置カテーテルの挿入期間,入院日数,作業療法介入単位日数,退院時Vitality Index(意欲の指標)を調査し,認知機能の低下の有無に対してカイ二乗検定またはマンホイットニーのU検定を行った.また,単変量解析で有意差を認めた調査項目を説明変数,認知機能低下の有無を目的変数として多重ロジスティック回帰分析を行った.統計解析はSPSSを使用し,有意確率は5%とした.本研究で得られた個人情報は保護し,当院の倫理審査委員会の承認を得た.
【結果】
対象患者は1468例で,認知機能低下群は94例,認知機能維持・改善群は1374例であった.認知機能低下群は膀胱留置カテーテルの挿入期間(P<0.001),入院日数(P=0.036)が長く,年齢(P<0.01)が高齢で,入院前FIM(P<0.001),退院時Vitality Index(P<0.001)が低かった.多重ロジスティック回帰分析では膀胱留置カテーテル挿入期間(P<0.001,オッズ比1.055),退院時Vitality Index(P<0.001,オッズ比0.783)が抽出された.
【考察】
過去の報告では大腿骨近位部骨折において術後の認知機能低下と疼痛・栄養状態・年齢が関連するとされている.本研究では入院中の認知機能低下に影響を及ぼす因子は膀胱留置カテーテル挿入期間,退院時の意欲低下であった.また,本研究では入院中におきた認知機能の低下を調査したため,入院中のかかわり方によって改善可能な影響因子を明らかにすることができたと思われる.特に入院中の認知機能低下の予防の為に,膀胱留置カテーテルの挿入期間が短くできるような取り組みが重要であると思われた.また,入院中に意欲を向上させることができるような関わり方が重要であることが示唆された.今後は適切な膀胱留置カテーテルの挿入期間を調査し,大腿骨近位部骨折患者において認知機能の低下が予防できるのか介入研究を検討していきたい.
大腿骨近位部骨折は高齢者に多い疾患である.大腿骨近位部骨折は入院による治療が必要となり,身体機能低下や認知機能低下のリスクが高くなる.しかし,認知機能の低下に関連する入院中の具体的な影響因子は明らかではない.
【目的】
大腿骨近位部骨折患者における入院中の認知機能の低下に影響を及ぼす因子を調査する.
【方法】
2017年11月から2023年12月までに大腿骨近位部骨折を受傷し当院で手術を受けた65歳以上の患者で,入院前から膀胱留置カテーテルを使用していた患者や透析で自尿がない患者は除外した.認知機能は入院時と退院時のMini Mental State Examination-Japanese(以下,MMSE-J)を評価した.過去の報告からMMSE-Jの最小変化量Minimally Clinical important Difference(以下,MCID)は1-3点であり,入院中にMMSE-Jが4点以上の低下した場合を認知機能低下と判断した.MMSE-Jが4点以上の低下した群を認知機能低下群,それ以外を認知機能維持・改善群とした.その他の調査項目は年齢,性別,入院前のMotor Functional Independence Measure(以下,M-FIM)・生活場所・排泄様式,骨折部位,術式,膀胱留置カテーテルの挿入期間,入院日数,作業療法介入単位日数,退院時Vitality Index(意欲の指標)を調査し,認知機能の低下の有無に対してカイ二乗検定またはマンホイットニーのU検定を行った.また,単変量解析で有意差を認めた調査項目を説明変数,認知機能低下の有無を目的変数として多重ロジスティック回帰分析を行った.統計解析はSPSSを使用し,有意確率は5%とした.本研究で得られた個人情報は保護し,当院の倫理審査委員会の承認を得た.
【結果】
対象患者は1468例で,認知機能低下群は94例,認知機能維持・改善群は1374例であった.認知機能低下群は膀胱留置カテーテルの挿入期間(P<0.001),入院日数(P=0.036)が長く,年齢(P<0.01)が高齢で,入院前FIM(P<0.001),退院時Vitality Index(P<0.001)が低かった.多重ロジスティック回帰分析では膀胱留置カテーテル挿入期間(P<0.001,オッズ比1.055),退院時Vitality Index(P<0.001,オッズ比0.783)が抽出された.
【考察】
過去の報告では大腿骨近位部骨折において術後の認知機能低下と疼痛・栄養状態・年齢が関連するとされている.本研究では入院中の認知機能低下に影響を及ぼす因子は膀胱留置カテーテル挿入期間,退院時の意欲低下であった.また,本研究では入院中におきた認知機能の低下を調査したため,入院中のかかわり方によって改善可能な影響因子を明らかにすることができたと思われる.特に入院中の認知機能低下の予防の為に,膀胱留置カテーテルの挿入期間が短くできるような取り組みが重要であると思われた.また,入院中に意欲を向上させることができるような関わり方が重要であることが示唆された.今後は適切な膀胱留置カテーテルの挿入期間を調査し,大腿骨近位部骨折患者において認知機能の低下が予防できるのか介入研究を検討していきたい.