[PD-6-6] 橈骨遠位端骨巨細胞腫1例の長期的アプローチの経験
【序論】骨巨細胞種は長管骨の骨幹端から骨端に好発する骨原発腫瘍であり,世界保健機関(WHO)分類では良性と悪性の中間に位置するIntermediate(locally aggressive,rarely metastasizing)に分類される.腫瘍による骨破壊を特徴とし,疼痛,腫脹,関節運動制限などを呈し,外科的手術が必要である.比較的珍しい腫瘍であり,その後療法の報告は我々が渉猟しえた限りでは見当たらない.
【目的】数回の手術を施行された橈骨遠位端骨巨細胞腫1例の長期的アプローチの経験より,その治療効果を明らかにすること.
【症例紹介】30代の女性,右利き,独居(障害者施設入居後.Key personは施設職員),仕事は弁当の製造.診断名は右橈骨遠位端巨骨細胞腫.X年,誘因なく手関節周囲の腫瘍,疼痛出現し,A病院にて骨腫瘍摘出術,人工骨移植術を施行(手術1).X+1年,腫瘍再発を認め,骨腫瘍切除術,骨セメント充填術を施行(手術2).X+2年,手術2で充填した骨セメントが掌屈転位し,手関節の可動困難となる.長母指伸筋腱皮下断裂も認め,右手関節固定術,示指伸筋腱を用いた腱移行術を施行(手術3).X+5年,偽関節を呈し,偽関節手術を施行された(手術4).なお,手術は全て背側アプローチにてA病院で施行され,後療法は筆者が所属するB病院で外来リハビリを実施した.本報告に関しては本人,施設職員に同意を得た.
【後療法と経過】各手術後,介入時に手関節固定スプリントを作製し,運動療法は主に前腕回内・外運動,手指・母指腱滑走訓練を中心に行った.手術1から4週後に後療法開始.関節可動域(以下.ROM:単位 度)は前腕回外/回内は0/55,手関節背屈/掌屈は40/15であり前腕回内・外,手関節運動を中心に後療法を行った. 手術2からは術後1週から介入.前腕回外/回内ROMは-10/40,手関節背屈/掌屈は30/25であり,母指,手指伸筋腱の癒着も認めた.術後5週で療養により中断.手術3からは2日後より介入.手関節は背屈15度で関節固定されており,前腕回外/回内ROMは50/40であった.母指伸筋腱は術後4週後より自動運動開始.術後12週時,ROMは前腕回外/回内は70/65,母指(伸展/屈曲)はMP関節-10/62,IP関節20/46となったが,示~小指MP関節伸展-30前後と伸筋腱癒着による伸展lagが著明だった.手術4からは2か月後に介入.肘関節(伸展/屈曲)ROMは-5/120,前腕回外/回内は40/40と再拘縮していた.骨移植部近位側の骨癒合が不良であり,低出力超音波パルス療法(LIPUS)を使用.自動運動を中心に後療法を行った.
【結果】手術4から術後6か月後,前腕回外/回内ROMは80/75,母指(伸展/屈曲)はMP関節-20/50,IP関節6/49であり,示~小指はfull grip可能もMP関節伸展-10~-20だった.NRSは1~2,ADLは完全自立も重労働は行っておらず,Quick-DASH scoreは18.18だった.県外に転居されたため,B病院での加療は終了となった.
【考察】橈骨遠位端骨巨細胞種が橈骨手根関節,下橈尺関節の運動障害を惹起することは容易に想起できる.その治療は骨癒合に応じた治療が基本となる.全ての手術が広範囲な前腕背側アプローチで施行され,母指,手指伸筋腱が癒着し易い状況であった.本症例は最終的に手関節固定術が施行され,手指自動伸展不足がやや残存したが,前腕可動域の獲得と母指,手指(特に伸筋腱)の腱滑走訓練による手指機能の改善が最終的なADLの完全自立に重要な要素であった.術後の施設間紹介の期間がばらついたために後療法開始が遅れた時期もあり,今後の課題となった.
【目的】数回の手術を施行された橈骨遠位端骨巨細胞腫1例の長期的アプローチの経験より,その治療効果を明らかにすること.
【症例紹介】30代の女性,右利き,独居(障害者施設入居後.Key personは施設職員),仕事は弁当の製造.診断名は右橈骨遠位端巨骨細胞腫.X年,誘因なく手関節周囲の腫瘍,疼痛出現し,A病院にて骨腫瘍摘出術,人工骨移植術を施行(手術1).X+1年,腫瘍再発を認め,骨腫瘍切除術,骨セメント充填術を施行(手術2).X+2年,手術2で充填した骨セメントが掌屈転位し,手関節の可動困難となる.長母指伸筋腱皮下断裂も認め,右手関節固定術,示指伸筋腱を用いた腱移行術を施行(手術3).X+5年,偽関節を呈し,偽関節手術を施行された(手術4).なお,手術は全て背側アプローチにてA病院で施行され,後療法は筆者が所属するB病院で外来リハビリを実施した.本報告に関しては本人,施設職員に同意を得た.
【後療法と経過】各手術後,介入時に手関節固定スプリントを作製し,運動療法は主に前腕回内・外運動,手指・母指腱滑走訓練を中心に行った.手術1から4週後に後療法開始.関節可動域(以下.ROM:単位 度)は前腕回外/回内は0/55,手関節背屈/掌屈は40/15であり前腕回内・外,手関節運動を中心に後療法を行った. 手術2からは術後1週から介入.前腕回外/回内ROMは-10/40,手関節背屈/掌屈は30/25であり,母指,手指伸筋腱の癒着も認めた.術後5週で療養により中断.手術3からは2日後より介入.手関節は背屈15度で関節固定されており,前腕回外/回内ROMは50/40であった.母指伸筋腱は術後4週後より自動運動開始.術後12週時,ROMは前腕回外/回内は70/65,母指(伸展/屈曲)はMP関節-10/62,IP関節20/46となったが,示~小指MP関節伸展-30前後と伸筋腱癒着による伸展lagが著明だった.手術4からは2か月後に介入.肘関節(伸展/屈曲)ROMは-5/120,前腕回外/回内は40/40と再拘縮していた.骨移植部近位側の骨癒合が不良であり,低出力超音波パルス療法(LIPUS)を使用.自動運動を中心に後療法を行った.
【結果】手術4から術後6か月後,前腕回外/回内ROMは80/75,母指(伸展/屈曲)はMP関節-20/50,IP関節6/49であり,示~小指はfull grip可能もMP関節伸展-10~-20だった.NRSは1~2,ADLは完全自立も重労働は行っておらず,Quick-DASH scoreは18.18だった.県外に転居されたため,B病院での加療は終了となった.
【考察】橈骨遠位端骨巨細胞種が橈骨手根関節,下橈尺関節の運動障害を惹起することは容易に想起できる.その治療は骨癒合に応じた治療が基本となる.全ての手術が広範囲な前腕背側アプローチで施行され,母指,手指伸筋腱が癒着し易い状況であった.本症例は最終的に手関節固定術が施行され,手指自動伸展不足がやや残存したが,前腕可動域の獲得と母指,手指(特に伸筋腱)の腱滑走訓練による手指機能の改善が最終的なADLの完全自立に重要な要素であった.術後の施設間紹介の期間がばらついたために後療法開始が遅れた時期もあり,今後の課題となった.