[PD-6-8] 頚椎椎弓形成術後患者における退院時の頚肩部の痛みの性質の特徴
【背景】頚椎疾患に対する頚椎後方手術として椎弓形成術があり,術後に軸性疼痛が出現することが報告されている.臨床的にも退院時に痛みが残存する症例を経験する.今回の研究では退院時の痛みをマクギル疼痛質問票(以下,MPQ)を用いて評価し20要素の項目がどのように関連するか確認し,特徴を検討することである.
【方法】対象は,2021年12月1日から2023年12月31日までの期間に当院整形外科に入院し頚椎疾患に対して椎弓形成術を施行し,術後と退院時にMPQの評価が可能であった20例(男性17例,女性3例,平均年齢71.6±9.9歳)とした.疾患の内訳は頚椎症性脊髄症が18例,頚椎症性筋萎縮症が1例,頚椎硬膜内髄外腫瘍が1例であり,手術高位はC3~4が2例,C3~5が2例,C3~6が8例,C3~7が1例,C4~6が6例,C5~6が1例であった.また,併用手術として椎間孔拡大術が1例,腫瘍切除術が1例であった.術後は全例フィラデルフィアカラーを装着している.統計学的解析として術後と退院時の痛みの性質をWilcoxonの符号付き順位検定を用い比較した.また退院時のMPQの評価において20要素のうち平均0.6点以上の項目を抽出し主成分分析を行った.統計ソフトはSPSS29.0を用い,有意水準は5%とした.なお,本研究は後方視的な診療録調査であり,「ヘルシンキ宣言」及び「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」を遵守するとともに医学系研究倫理審査員会の承認を受け実施した.
【結果】術後評価は術後平均2.7±0.8日に,退院時評価は術後平均14.0±3.0日に実施した.術後と退院時のMPQの評価結果の比較では感覚的指標は術後平均12.2±5.6点から退院時6.9±5.1点(p=0.004),その他の痛み指標は術後2.9±3.3点から退院時0.7±1.3点(p=0.007),合計点は術後17.8±10.1点から退院時8.8±7.4点(p=0.001),現在の痛みの強度は術後2.7±1.2から退院時1.7±1.3(p=0.009)で有意に減少した.退院時の20要素のうち平均0.6点以上であった項目は拍動する痛み,電撃痛,押しつぶされるような痛み,表層の痛み,重い鈍い痛み,その他の痛みの感覚①,評価的性質の7項目であった.主成分分析の結果は第3主成分までに77.1%の累積寄与率をもった主成分を抽出した.第1主成分(寄与率40.1%)はその他の痛みの感覚①(主成分負荷量:0.92),評価的性質(0.85),表層の痛み(0.78),拍動する痛み(0.77)であった.第2主成分(寄与率22.2%)は押しつぶされるような痛み(0.73),重い鈍い痛み(-0.66)であった.第3主成分(寄与率14.8%)は電撃痛(-0.44)であった.
【考察】頚椎椎弓形成術後の頚肩部痛は術後から退院時にかけて有意に減少する傾向にあった.しかし退院時MPQの合計平均は8.8±7.4点であり,また,現在の痛みの強度は1.7±1.3と疼痛が残存している可能性が考えられる.主成分分析の結果から第1主成分は創部の痛みとそれに伴う感覚的,評価的な痛みが含まれていると考えられる.第2主成分は圧迫されるような,うずくような感覚であり筋肉の緊張状態による肩こりのような痛みを表している可能性がある.第1主成分にある評価的性質は疼痛によるストレス等の感情面の影響を示しているとされ,創部の痛みにおいて心理的なマネジメントを考慮する必要が考えられる.
【方法】対象は,2021年12月1日から2023年12月31日までの期間に当院整形外科に入院し頚椎疾患に対して椎弓形成術を施行し,術後と退院時にMPQの評価が可能であった20例(男性17例,女性3例,平均年齢71.6±9.9歳)とした.疾患の内訳は頚椎症性脊髄症が18例,頚椎症性筋萎縮症が1例,頚椎硬膜内髄外腫瘍が1例であり,手術高位はC3~4が2例,C3~5が2例,C3~6が8例,C3~7が1例,C4~6が6例,C5~6が1例であった.また,併用手術として椎間孔拡大術が1例,腫瘍切除術が1例であった.術後は全例フィラデルフィアカラーを装着している.統計学的解析として術後と退院時の痛みの性質をWilcoxonの符号付き順位検定を用い比較した.また退院時のMPQの評価において20要素のうち平均0.6点以上の項目を抽出し主成分分析を行った.統計ソフトはSPSS29.0を用い,有意水準は5%とした.なお,本研究は後方視的な診療録調査であり,「ヘルシンキ宣言」及び「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」を遵守するとともに医学系研究倫理審査員会の承認を受け実施した.
【結果】術後評価は術後平均2.7±0.8日に,退院時評価は術後平均14.0±3.0日に実施した.術後と退院時のMPQの評価結果の比較では感覚的指標は術後平均12.2±5.6点から退院時6.9±5.1点(p=0.004),その他の痛み指標は術後2.9±3.3点から退院時0.7±1.3点(p=0.007),合計点は術後17.8±10.1点から退院時8.8±7.4点(p=0.001),現在の痛みの強度は術後2.7±1.2から退院時1.7±1.3(p=0.009)で有意に減少した.退院時の20要素のうち平均0.6点以上であった項目は拍動する痛み,電撃痛,押しつぶされるような痛み,表層の痛み,重い鈍い痛み,その他の痛みの感覚①,評価的性質の7項目であった.主成分分析の結果は第3主成分までに77.1%の累積寄与率をもった主成分を抽出した.第1主成分(寄与率40.1%)はその他の痛みの感覚①(主成分負荷量:0.92),評価的性質(0.85),表層の痛み(0.78),拍動する痛み(0.77)であった.第2主成分(寄与率22.2%)は押しつぶされるような痛み(0.73),重い鈍い痛み(-0.66)であった.第3主成分(寄与率14.8%)は電撃痛(-0.44)であった.
【考察】頚椎椎弓形成術後の頚肩部痛は術後から退院時にかけて有意に減少する傾向にあった.しかし退院時MPQの合計平均は8.8±7.4点であり,また,現在の痛みの強度は1.7±1.3と疼痛が残存している可能性が考えられる.主成分分析の結果から第1主成分は創部の痛みとそれに伴う感覚的,評価的な痛みが含まれていると考えられる.第2主成分は圧迫されるような,うずくような感覚であり筋肉の緊張状態による肩こりのような痛みを表している可能性がある.第1主成分にある評価的性質は疼痛によるストレス等の感情面の影響を示しているとされ,創部の痛みにおいて心理的なマネジメントを考慮する必要が考えられる.