[PD-7-2] 糖尿病足病変患者に対する動画を用いた作業療法士による教育指導の効果
【序論】令和4年度診療報酬改定で運動器リハビリテーションの適応疾患に糖尿病足病変が追加された.潰瘍や壊疽をはじめとした糖尿病足病変は,一旦発症すると治療のために長期入院を要し,再発によって大切断を余儀なくされる例もあり,患者は甚大な身体的,精神的,さらには経済的負担を強いられる.したがって,フットケア・足病予防は極めて重要となるため,患者自身が足に関心を向け,神経障害,血流障害,感染症の影響による潰瘍や壊疽から足を守るよう患者教育を行い,適切なセルフケアを促す必要がある.そこで,当院では,作業療法のなかで動画を用いた糖尿病足病変に対する教育指導を行った.
【目的】作業療法士による動画を用いた教育指導の効果を検証することである.
【方法】本研究は診療記録を用いた後ろ向き研究である.対象は,認知症の無い糖尿病足病変の入院患者29名(平均年齢66.7±11.8歳,男性19名:女性10名),評価および介入は経験年数3-4年の作業療法士2名で行われた.評価は入院時(初回の作業療法時)と退院時に実施され,介入は2-3回目の作業療法時にフットウェアの着脱方法,歩行時の注意点,フットケア・チェック方法に関する内容が10分で構成される動画を用いて患者教育が行われた.同時にフットチェックの習慣化を図るためにパンフレットとチェック表を用いて指導を継続した.また,患者の状態に応じた装具療法と理学・作業療法が退院まで毎日2-3回実施された.解析は,入院中の作業療法のなかで,動画視聴ありの15名(以下;あり群)となしの14名(以下;なし群)の2群に分け,年齢と性別,再発の有無,在院日数,Functional Independence Measure (FIM), EuroQol 5-dimension 5-level (EQ-5D-5L), International Physical Activity Questionnaire (IPAQ), Geriatric Depression Scale-15 items (GDS), Problem Areas In Diabetes (PAID)を比較した全ての統計解析はSPSSを使用して,ノンパラメトリック検定を行った(P<0.05).なお,本研究は倫理審査委員会を受けて実施された(承認番号:A0056).
【結果】入院時評価では,全ての項目に有意差なく2群の同等性が示された.入退院時での前後比較では,両群ともにFIM合計が有意な改善を認めた.FIM項目別では,移動能力に関して,あり群でのベッド・トイレ・浴室の移乗,歩行,階段昇降とすべての項目で有意な改善を認めたが,なし群では浴室の移乗と歩行のみに有意な改善を認めた.また,再発の有無では2群間に有意差を認めなかった.
【考察】あり群でFIMの移動に関する項目が幅広く改善した.このことは,装具療法と理学療法に加え,動画の中で移動時の注意点やフットケアの重要性などを指導し,フットウェアの使用法を正しく理解できたことが移動の実行状況へ繋がったと考える.また,理解度を良好にするため,糖尿病に起因する認知機能障害や視機能障害を考慮し,指導方法を適応したことが功を奏したと考える.さらに,多くの学術的論文でも,聴覚のみよりも視覚を加えた情報の方が記憶保持されやすいというデータが示されており,動画を用いた教育指導はより効果的であったと推測する.ただし,認知症や大切断などの患者背景に応じて,階層的に教育指導プログラムならびに環境調整を実施し,更なるFIMの向上や再発の防止を図ることが肝要である.本研究の限界として,サンプル数が少なかった点,切断高位などの層別化が行えていない点,他職種による動画を用いた指導教育と比較できていない点などが挙げられる.今後,サンプル数や対照群を増やして,動画を用いた教育指導の有用性を評価することが必要である.また,精神機能の変化や再発率などのフォローアップを継続していき,糖尿病足病変に対する作業療法の相乗効果を評価していく.
【目的】作業療法士による動画を用いた教育指導の効果を検証することである.
【方法】本研究は診療記録を用いた後ろ向き研究である.対象は,認知症の無い糖尿病足病変の入院患者29名(平均年齢66.7±11.8歳,男性19名:女性10名),評価および介入は経験年数3-4年の作業療法士2名で行われた.評価は入院時(初回の作業療法時)と退院時に実施され,介入は2-3回目の作業療法時にフットウェアの着脱方法,歩行時の注意点,フットケア・チェック方法に関する内容が10分で構成される動画を用いて患者教育が行われた.同時にフットチェックの習慣化を図るためにパンフレットとチェック表を用いて指導を継続した.また,患者の状態に応じた装具療法と理学・作業療法が退院まで毎日2-3回実施された.解析は,入院中の作業療法のなかで,動画視聴ありの15名(以下;あり群)となしの14名(以下;なし群)の2群に分け,年齢と性別,再発の有無,在院日数,Functional Independence Measure (FIM), EuroQol 5-dimension 5-level (EQ-5D-5L), International Physical Activity Questionnaire (IPAQ), Geriatric Depression Scale-15 items (GDS), Problem Areas In Diabetes (PAID)を比較した全ての統計解析はSPSSを使用して,ノンパラメトリック検定を行った(P<0.05).なお,本研究は倫理審査委員会を受けて実施された(承認番号:A0056).
【結果】入院時評価では,全ての項目に有意差なく2群の同等性が示された.入退院時での前後比較では,両群ともにFIM合計が有意な改善を認めた.FIM項目別では,移動能力に関して,あり群でのベッド・トイレ・浴室の移乗,歩行,階段昇降とすべての項目で有意な改善を認めたが,なし群では浴室の移乗と歩行のみに有意な改善を認めた.また,再発の有無では2群間に有意差を認めなかった.
【考察】あり群でFIMの移動に関する項目が幅広く改善した.このことは,装具療法と理学療法に加え,動画の中で移動時の注意点やフットケアの重要性などを指導し,フットウェアの使用法を正しく理解できたことが移動の実行状況へ繋がったと考える.また,理解度を良好にするため,糖尿病に起因する認知機能障害や視機能障害を考慮し,指導方法を適応したことが功を奏したと考える.さらに,多くの学術的論文でも,聴覚のみよりも視覚を加えた情報の方が記憶保持されやすいというデータが示されており,動画を用いた教育指導はより効果的であったと推測する.ただし,認知症や大切断などの患者背景に応じて,階層的に教育指導プログラムならびに環境調整を実施し,更なるFIMの向上や再発の防止を図ることが肝要である.本研究の限界として,サンプル数が少なかった点,切断高位などの層別化が行えていない点,他職種による動画を用いた指導教育と比較できていない点などが挙げられる.今後,サンプル数や対照群を増やして,動画を用いた教育指導の有用性を評価することが必要である.また,精神機能の変化や再発率などのフォローアップを継続していき,糖尿病足病変に対する作業療法の相乗効果を評価していく.