[PD-7-4] 本人が重要視する家事動作練習の導入で遂行度と満足度の向上を認めた熱傷症例
【はじめに】
熱傷症例に対する急性期リハビリテーションの内容は身体機能に着目した報告が多い(齋藤,2000)が,IADLに対する作業療法介入を行うことでIADL能力が向上するとの報告がある(三瓶,2012).今回,カナダ作業遂行測定(以下COPM)を実施し症例が重要とする調理と掃除に対して介入したことで遂行度と満足度の向上を認めたため報告をする.尚,発表に際し,症例から口頭で同意を得た.
【症例】
70歳代,女性.既往歴に関節リウマチ.息子夫婦と同居.現病歴:調理中にガスコンロから衣服に引火し受傷(0病日).顔面,左胸部,左上腕:16%TBSA『II 13%,Ⅲ3%』,BI9.5,PBI88.5の熱傷の診断で当院に入院.2病日にデブリドマン,人工真皮留置術,局所陰圧閉鎖療法(以下NPWT)を施行.母床が形成されたため,16病日に分層植皮術を施行.植皮部のNPWTは継続し,20病日に終了.その後,良好な生着と上皮化が得られため41病日に自宅退院.
安静度:3病日〜NPWTのテープ固定が外れない範囲で左肩関節の関節可動域練習を開始.17病日〜左肩関節挙上90°以内で関節可動域練習を開始.21病日〜左肩関節の運動に制限はなし.
【初回作業療法評価:4病日】
自動関節可動域検査:右/左・肩関節屈曲:70/30,外転:70/20,伸展:35/20,外旋:35/25°.※既往の影響で,両上肢ともに関節可動域制限や両手指に変形を認めていた.疼痛:左上肢挙上時に伸長痛を認める.認知機能:年齢相応.ADL:更衣,整容,入浴動作は左肩関節に関節可動域制限があり介助を要す.Barthel Index:55点(以下BI).
【作業療法治療と経過】
介入当初は連日の処置や安静度制限に合わせて関節可動域練習および非術側上肢でのADL練習を主体に実施した. 植皮部の生着後,28病日にADL自立となり,症例から退院後の調理再開の希望が聞かれた.そこで,COPMを用いて練習内容の再考をした.COPM(重要度/遂行度/満足度)では調理,掃除が抽出され, 調理:8/1/1,掃除:6/1/1であった.そこで左上肢機能向上を目的とした関節可動域練習や筋力強化練習に加え,調理と掃除の家事動作練習を導入した.
【最終作業療法評価:39病日】
自動関節可動域検査:右/左・肩関節屈曲:70/80,外転:70/80,伸展:35/35,外旋:35/35°.疼痛:訴えはなし.簡易上肢機能検査:右74点/左80点.日本版DASH(Disability of the Arm, shoulder and hand):13.8/100点.COPM(遂行度/満足度):調理9/9,掃除8/8.と遂行度,満足度ともに向上.ADLは自立.BI:100点.
調理や掃除は病前同様に行えたとの訴えがあり.調理中の受傷であり,安全に実施ができるのか,家族に調理を止められるのではないか,と不安の訴えが聞かれていたが,練習後には症例に笑顔がみられ自宅退院後も家事動作を継続したいとの希望が聞かれた.
【考察】
分層植皮術とNPWTの併用に加え,早期の関節可動域練習を開始した予後良好の熱傷症例の報告(山本,2015)と同様に,症例も術後早期からの関節可動域練習開始によって病前と同等の関節可動域の獲得に至ったと考えられた.また,クライエントと目標設定を行うことで,目標達成度が高くなる(Arnetz.2004)との報告があり,熱傷患者に対するCOPMによる重要な作業の抽出,作業療法介入は,症例が重要とする作業活動の遂行度や満足度を高められる可能性が示唆された.精神面やQOLの客観的な評価を含めた介入は今後の課題である.
熱傷症例に対する急性期リハビリテーションの内容は身体機能に着目した報告が多い(齋藤,2000)が,IADLに対する作業療法介入を行うことでIADL能力が向上するとの報告がある(三瓶,2012).今回,カナダ作業遂行測定(以下COPM)を実施し症例が重要とする調理と掃除に対して介入したことで遂行度と満足度の向上を認めたため報告をする.尚,発表に際し,症例から口頭で同意を得た.
【症例】
70歳代,女性.既往歴に関節リウマチ.息子夫婦と同居.現病歴:調理中にガスコンロから衣服に引火し受傷(0病日).顔面,左胸部,左上腕:16%TBSA『II 13%,Ⅲ3%』,BI9.5,PBI88.5の熱傷の診断で当院に入院.2病日にデブリドマン,人工真皮留置術,局所陰圧閉鎖療法(以下NPWT)を施行.母床が形成されたため,16病日に分層植皮術を施行.植皮部のNPWTは継続し,20病日に終了.その後,良好な生着と上皮化が得られため41病日に自宅退院.
安静度:3病日〜NPWTのテープ固定が外れない範囲で左肩関節の関節可動域練習を開始.17病日〜左肩関節挙上90°以内で関節可動域練習を開始.21病日〜左肩関節の運動に制限はなし.
【初回作業療法評価:4病日】
自動関節可動域検査:右/左・肩関節屈曲:70/30,外転:70/20,伸展:35/20,外旋:35/25°.※既往の影響で,両上肢ともに関節可動域制限や両手指に変形を認めていた.疼痛:左上肢挙上時に伸長痛を認める.認知機能:年齢相応.ADL:更衣,整容,入浴動作は左肩関節に関節可動域制限があり介助を要す.Barthel Index:55点(以下BI).
【作業療法治療と経過】
介入当初は連日の処置や安静度制限に合わせて関節可動域練習および非術側上肢でのADL練習を主体に実施した. 植皮部の生着後,28病日にADL自立となり,症例から退院後の調理再開の希望が聞かれた.そこで,COPMを用いて練習内容の再考をした.COPM(重要度/遂行度/満足度)では調理,掃除が抽出され, 調理:8/1/1,掃除:6/1/1であった.そこで左上肢機能向上を目的とした関節可動域練習や筋力強化練習に加え,調理と掃除の家事動作練習を導入した.
【最終作業療法評価:39病日】
自動関節可動域検査:右/左・肩関節屈曲:70/80,外転:70/80,伸展:35/35,外旋:35/35°.疼痛:訴えはなし.簡易上肢機能検査:右74点/左80点.日本版DASH(Disability of the Arm, shoulder and hand):13.8/100点.COPM(遂行度/満足度):調理9/9,掃除8/8.と遂行度,満足度ともに向上.ADLは自立.BI:100点.
調理や掃除は病前同様に行えたとの訴えがあり.調理中の受傷であり,安全に実施ができるのか,家族に調理を止められるのではないか,と不安の訴えが聞かれていたが,練習後には症例に笑顔がみられ自宅退院後も家事動作を継続したいとの希望が聞かれた.
【考察】
分層植皮術とNPWTの併用に加え,早期の関節可動域練習を開始した予後良好の熱傷症例の報告(山本,2015)と同様に,症例も術後早期からの関節可動域練習開始によって病前と同等の関節可動域の獲得に至ったと考えられた.また,クライエントと目標設定を行うことで,目標達成度が高くなる(Arnetz.2004)との報告があり,熱傷患者に対するCOPMによる重要な作業の抽出,作業療法介入は,症例が重要とする作業活動の遂行度や満足度を高められる可能性が示唆された.精神面やQOLの客観的な評価を含めた介入は今後の課題である.