[PD-7-5] 劇症型A群β溶連菌感染症(STSS)による両股関節離断後の女性症例への関わり
排泄動作獲得に向けたアプローチ
【はじめに】女性両股関節離断症例の排泄動作獲得に関する報告は皆無である.今回,「排尿が自分でできる様になりたい」と,排尿動作獲得を希望した両股関節離断と上肢障害を呈した症例を担当した.合意目標を離床時間の延長と排尿動作の獲得とし,その取り組みについて報告する.症例の同意と,当センター倫理委員会の承認済み.
【症例】A氏50代女性.X年Y月に劇症型A群β溶連菌感染症による壊死性筋膜炎発症し,同月左前腕デブリードマン,両股関節離断術が施行された.Y+1月人工肛門造設術施行.Y+5月に当センター入院,作業療法介入開始.入院時の身体機能は体幹・上肢に関節可動域(以下,ROM)制限,筋力低下が認められた.上肢での体重支持困難で,移乗は全介助.耐久性低く,臥床傾向であった.
【排尿評価】入院時,長期バルーン留置による畜尿障害あり.オムツとパットを使用しベッド上での排尿,オムツやパット交換は全介助.症例は排泄の自立は難しいと思っていた. ベッドと車椅子間の移乗は全介助,便座移乗は未経験であった.両上肢支持での座位は坐骨部に痛みが生じ,座位保持,プッシュアップ動作困難であった.また,下衣着脱(着衣前準備含む)やパット操作は未経験であり,ベッド上での下衣着脱は主に右手を使用し可能であったが車椅子上では着衣が困難であった.
【経過】入院翌日より,尿意を感じた際にベッド上で尿器に排尿し,採尿可能になった頃よりトイレでの排尿を検討した.ベッドと車椅子間移乗は(株)有薗製作所のトランスファーボード標準型を使用し,直角移乗で匍匐前進にて自立した.その後,車椅子上で180度回転し,アームサポートを使用して後方へのプッシュアップ移乗も可能になった.便座への移乗練習は直角移乗で高低差無しから高低差有も可能となった.便座座位は便座接触面に激痛が生じ座位継続困難であり,(株)TOTOのやわらか補高便座(以下,やわらか便座)を導入した.下衣の着脱は便座上では痛みがあったため,車椅子上で実施した.脱衣はアームサポートに片前腕支持し骨盤を傾かせ,主に右手で行った.着衣は,予め車椅子上に下衣をセッティングし,プッシュアップで骨盤を入れ,ウエストまで引き上げを行うも時間を要し介助が必要であった.特に下着は難易度が高く,着用したまま排尿を練習し,1日1回のトイレ動作から開始した.Y+7月家屋調査で動作確認と改修案を検討した.また,上肢のROM訓練やプッシュアップ練習等を継続して行い,Y+8月には1日7回トイレでの排尿が自立となり,趣味活動再開の希望も聞かれるようになった.
【結果】Y+7月から,やわらか便座を使用し,移乗は直角移乗を実施.下着着用のままの排尿で自立し,Y+8月には車椅子上で下着の着衣も自立となった.
【考察】今回,症例に対して排尿動作獲得へ向けた取り組みを実施した.症例は上肢障害,離断部痛,耐久性の低下が残存しており,移乗に困難を示していたが,車椅子上で180度回転し,後方へプッシュアップする直角移乗を選択し動作が可能となった.便座接触面の痛みに対しては,やわらか便座の選択が有効であった.また,下着の着脱は従来の方法にとらわれず,着用のままの排尿方法を選択したことで,トイレでの排尿機会が増え,離床に繋げることができたと考える.トイレでの排尿動作を繰り返し実施したことで動作能力が向上し,下着の着用も可能となった.更に,排泄動作が自立したことで在宅復帰のイメージを持つことができ,趣味活動再開の声も聞かれるなど社会参加に目を向けることも可能となった.改めて作業療法士として社会参加を見据えて排泄動作に関わる重要性があると考える.
【症例】A氏50代女性.X年Y月に劇症型A群β溶連菌感染症による壊死性筋膜炎発症し,同月左前腕デブリードマン,両股関節離断術が施行された.Y+1月人工肛門造設術施行.Y+5月に当センター入院,作業療法介入開始.入院時の身体機能は体幹・上肢に関節可動域(以下,ROM)制限,筋力低下が認められた.上肢での体重支持困難で,移乗は全介助.耐久性低く,臥床傾向であった.
【排尿評価】入院時,長期バルーン留置による畜尿障害あり.オムツとパットを使用しベッド上での排尿,オムツやパット交換は全介助.症例は排泄の自立は難しいと思っていた. ベッドと車椅子間の移乗は全介助,便座移乗は未経験であった.両上肢支持での座位は坐骨部に痛みが生じ,座位保持,プッシュアップ動作困難であった.また,下衣着脱(着衣前準備含む)やパット操作は未経験であり,ベッド上での下衣着脱は主に右手を使用し可能であったが車椅子上では着衣が困難であった.
【経過】入院翌日より,尿意を感じた際にベッド上で尿器に排尿し,採尿可能になった頃よりトイレでの排尿を検討した.ベッドと車椅子間移乗は(株)有薗製作所のトランスファーボード標準型を使用し,直角移乗で匍匐前進にて自立した.その後,車椅子上で180度回転し,アームサポートを使用して後方へのプッシュアップ移乗も可能になった.便座への移乗練習は直角移乗で高低差無しから高低差有も可能となった.便座座位は便座接触面に激痛が生じ座位継続困難であり,(株)TOTOのやわらか補高便座(以下,やわらか便座)を導入した.下衣の着脱は便座上では痛みがあったため,車椅子上で実施した.脱衣はアームサポートに片前腕支持し骨盤を傾かせ,主に右手で行った.着衣は,予め車椅子上に下衣をセッティングし,プッシュアップで骨盤を入れ,ウエストまで引き上げを行うも時間を要し介助が必要であった.特に下着は難易度が高く,着用したまま排尿を練習し,1日1回のトイレ動作から開始した.Y+7月家屋調査で動作確認と改修案を検討した.また,上肢のROM訓練やプッシュアップ練習等を継続して行い,Y+8月には1日7回トイレでの排尿が自立となり,趣味活動再開の希望も聞かれるようになった.
【結果】Y+7月から,やわらか便座を使用し,移乗は直角移乗を実施.下着着用のままの排尿で自立し,Y+8月には車椅子上で下着の着衣も自立となった.
【考察】今回,症例に対して排尿動作獲得へ向けた取り組みを実施した.症例は上肢障害,離断部痛,耐久性の低下が残存しており,移乗に困難を示していたが,車椅子上で180度回転し,後方へプッシュアップする直角移乗を選択し動作が可能となった.便座接触面の痛みに対しては,やわらか便座の選択が有効であった.また,下着の着脱は従来の方法にとらわれず,着用のままの排尿方法を選択したことで,トイレでの排尿機会が増え,離床に繋げることができたと考える.トイレでの排尿動作を繰り返し実施したことで動作能力が向上し,下着の着用も可能となった.更に,排泄動作が自立したことで在宅復帰のイメージを持つことができ,趣味活動再開の声も聞かれるなど社会参加に目を向けることも可能となった.改めて作業療法士として社会参加を見据えて排泄動作に関わる重要性があると考える.