[PD-7-8] 先天性握り母指症に対する出生後早期からの作業療法介入
【はじめに】先天性握り母指症とは,母指がMP関節で屈曲内転し,第一指間の狭小化や母指伸展障害を伴う病態の総称である.母指伸筋腱の欠損や低形成が原因にあるともされている.今回,生後1ヶ月の新生児への作業療法介入をした.今回の症例の兄も同様の疾患で出生後早期から作業療法介入をしている.手の状態,本人の発達状況に加え,兄の作業療法治療経過も参考にしながら介入したため報告する.
【目的】先天性握り母指症の治療についての報告は少ない.本症例を通して,介入についての検討を行いたいため.
【説明と同意】本報告に際し,対象児の保護者に対して倫理的事項について十分な説明を行い,了承を得ている.
【症例】生後1ヶ月女児.出生時,新生児一過性多呼吸,下肢変形,先天性握り母指症の診断あり.2歳上の兄も同様に先天性握り母指症の診断あり.現在は発達遅滞の診断を受けリハビリ介入している.
【初期評価】皮膚の状態は左手指に比べ右手指が柔軟性に乏しい.握り込みが優位であるのは左手指.両手指ともに母指以外は自動屈伸可能.物を手渡すが母指以外で物をつかみ,母指伸展はみられない.また,ミルクを飲む際,母親の髪の毛をつかむ様子はあるが母指伸展はみられない.
【介入方法】外来通院にあわせて,2週に一度介入した.第一指間腔のマッサージ,把握反射が出ない程度に母指球筋のマッサージを実施.自宅でも母指球筋のマッサージは実施するよう指導した.その後母指外転位で他動屈曲,握り形成を行った.生後1ヶ月を考慮し,児へのストレス軽減のためスプリントは避け,綿で外転屈曲方向にした状態でコーバンテープを使用し矯正を行った.兄の際も同じ手技で行っていたため,両親はテーピングの方法を理解していた.兄の時と同様,児にストレスがかからないよう,常時ではなく出来る範囲で継続するよう指導した.
【考察】本報告は,介入開始から半年の段階である.手の状態は介入開始から徐々に母指球筋や,皮膚の柔軟性は向上してきており両母指の自動伸展も時折見られるようになってきている.発達状況に関しては,介入開始から6ヶ月経過した現段階でも定頸はみられておらず,把握反射が残存している.把握反射減弱のためには感覚入力が必要とされており,今後の治療目標として,触覚,聴覚刺激,視覚刺激を使用し物に興味を示すよう促しながら手への関心,使用頻度を増やしていきたいと考えている.また,両親にも自宅で興味のあるものを聴取し,日常生活で興味のあるものを治療にも取り入れていきたいと考えている.手の機能回復をしながら発達状況へもアプローチし,主治医や他OTスタッフとも情報共有しながら介入継続していく.
【参考文献】作業療法学全書(改定第3版) 第6巻 作業療法治療学3 発達障害
【目的】先天性握り母指症の治療についての報告は少ない.本症例を通して,介入についての検討を行いたいため.
【説明と同意】本報告に際し,対象児の保護者に対して倫理的事項について十分な説明を行い,了承を得ている.
【症例】生後1ヶ月女児.出生時,新生児一過性多呼吸,下肢変形,先天性握り母指症の診断あり.2歳上の兄も同様に先天性握り母指症の診断あり.現在は発達遅滞の診断を受けリハビリ介入している.
【初期評価】皮膚の状態は左手指に比べ右手指が柔軟性に乏しい.握り込みが優位であるのは左手指.両手指ともに母指以外は自動屈伸可能.物を手渡すが母指以外で物をつかみ,母指伸展はみられない.また,ミルクを飲む際,母親の髪の毛をつかむ様子はあるが母指伸展はみられない.
【介入方法】外来通院にあわせて,2週に一度介入した.第一指間腔のマッサージ,把握反射が出ない程度に母指球筋のマッサージを実施.自宅でも母指球筋のマッサージは実施するよう指導した.その後母指外転位で他動屈曲,握り形成を行った.生後1ヶ月を考慮し,児へのストレス軽減のためスプリントは避け,綿で外転屈曲方向にした状態でコーバンテープを使用し矯正を行った.兄の際も同じ手技で行っていたため,両親はテーピングの方法を理解していた.兄の時と同様,児にストレスがかからないよう,常時ではなく出来る範囲で継続するよう指導した.
【考察】本報告は,介入開始から半年の段階である.手の状態は介入開始から徐々に母指球筋や,皮膚の柔軟性は向上してきており両母指の自動伸展も時折見られるようになってきている.発達状況に関しては,介入開始から6ヶ月経過した現段階でも定頸はみられておらず,把握反射が残存している.把握反射減弱のためには感覚入力が必要とされており,今後の治療目標として,触覚,聴覚刺激,視覚刺激を使用し物に興味を示すよう促しながら手への関心,使用頻度を増やしていきたいと考えている.また,両親にも自宅で興味のあるものを聴取し,日常生活で興味のあるものを治療にも取り入れていきたいと考えている.手の機能回復をしながら発達状況へもアプローチし,主治医や他OTスタッフとも情報共有しながら介入継続していく.
【参考文献】作業療法学全書(改定第3版) 第6巻 作業療法治療学3 発達障害