[PD-8-3] 上位型腕神経叢損傷に対し神経移行を実施した2例の作業療法経験
【はじめに】
上位型腕神経叢損傷に対する肩機能の再建としては,従来,肩関節固定術や筋腱移行術などが行われてきた.近年,神経移行術による機能再建の報告が多数散見されているが,リハビリテーションに関する報告は少ない.今回,上位型腕神経叢損傷に対し,神経移行術を実施した症例を2例同時期に担当する機会を得た.患者特性によりリハビリテーションの提供量などに差が生じたので,経過を報告する.
【症例供覧1】
44歳男性,X年ロボットアームに挟まり受傷,心肺停止.初療後,左上肢麻痺診断される.X+1年,受傷より約3ヶ月で神経移行術実施.術式は肩甲上神経に副神経,腋窩神経三角筋枝に橈骨神経上腕三頭筋枝,筋皮神経に尺骨神経1神経束(oberlin法)を移行した.術前は肩挙上・外転,肘屈曲はMMT0であった.
【経過】
手術翌日より作業療法実施.その後回復期病院へ転院し,退院後当院外来にてフォロー継続となった.術後12 ヶ月時点,自動可動域肩屈曲160度,外転160度,肘屈曲145度,筋力は,肩外転8.6kgf,肘屈曲11.2kgfであり,Quick-DASHは25点となっている.
【リハビリテーション提供量】
2023年1月〜2023年12月 提供回数147回 実施単位数494単位(うち回復期で302単位)
【症例供覧2 】
19歳男性,X年バイクによる交通外傷,鎖骨骨折あり.受傷より33日で神経移行術実施.肩甲上神経に副神経,腋窩神経に上腕三頭筋外側枝,筋皮神経に尺骨神経(oberlin法)を移行した.術前は肩挙上・外転,肘屈曲はMMT0であり,強い疼痛があった.
【経過】
手術翌日より作業療法開始.術後12ヶ月で,自動可動域肩屈曲80度,外転60度,肘屈曲90度,筋力は屈曲4.2kgf,外転3.2kgf,肘屈曲3.8kgfであり,Quick-DASHは,57点であった.
【リハビリテーション提供量】
2022年12月〜2023年11月 提供回数41回,実施単位数79単位
なお,外来による作業療法は,期限内は週2回,回毎の実施量は2単位,また期限後では週1回,回毎の実施量は2単位とする頻度を両症例へ掲示した上での結果である.
【考察】
これまで上位型神経移行術並びにoberlin法に関しては,本邦でいくつかの成績が報告されている.本症例と同様の肩再建では,外転90度に至ったのは42%で3年程度時間を要すとの報告もある.また,oberlin法においても良好な成績は多く,原らの報告でも12ヶ月-36ヶ月でMMT4-5まで回復したとされている.
今回,患者特性により,リハビリテーション提供量に大きな差が生じた.腕神経叢麻痺に関しては,肋間神経移行術などで提供量に関する報告はあるものの,今回の術式に関する報告は渉猟できなかった.提供量の少ない症例2においては,先行研究から経過12ヶ月を考慮すると標準的とも判断できるが,症例1においては,非常に良好な成績となっている.早期からの作業療法介入と半年以内の回復期転院によるリハビリテーション実施,外来通院コンプライアンスの良好性で一定量の単位提供を実施できたことで良好な成績を得られた可能性が考えられた.
上位型腕神経叢損傷に対する肩機能の再建としては,従来,肩関節固定術や筋腱移行術などが行われてきた.近年,神経移行術による機能再建の報告が多数散見されているが,リハビリテーションに関する報告は少ない.今回,上位型腕神経叢損傷に対し,神経移行術を実施した症例を2例同時期に担当する機会を得た.患者特性によりリハビリテーションの提供量などに差が生じたので,経過を報告する.
【症例供覧1】
44歳男性,X年ロボットアームに挟まり受傷,心肺停止.初療後,左上肢麻痺診断される.X+1年,受傷より約3ヶ月で神経移行術実施.術式は肩甲上神経に副神経,腋窩神経三角筋枝に橈骨神経上腕三頭筋枝,筋皮神経に尺骨神経1神経束(oberlin法)を移行した.術前は肩挙上・外転,肘屈曲はMMT0であった.
【経過】
手術翌日より作業療法実施.その後回復期病院へ転院し,退院後当院外来にてフォロー継続となった.術後12 ヶ月時点,自動可動域肩屈曲160度,外転160度,肘屈曲145度,筋力は,肩外転8.6kgf,肘屈曲11.2kgfであり,Quick-DASHは25点となっている.
【リハビリテーション提供量】
2023年1月〜2023年12月 提供回数147回 実施単位数494単位(うち回復期で302単位)
【症例供覧2 】
19歳男性,X年バイクによる交通外傷,鎖骨骨折あり.受傷より33日で神経移行術実施.肩甲上神経に副神経,腋窩神経に上腕三頭筋外側枝,筋皮神経に尺骨神経(oberlin法)を移行した.術前は肩挙上・外転,肘屈曲はMMT0であり,強い疼痛があった.
【経過】
手術翌日より作業療法開始.術後12ヶ月で,自動可動域肩屈曲80度,外転60度,肘屈曲90度,筋力は屈曲4.2kgf,外転3.2kgf,肘屈曲3.8kgfであり,Quick-DASHは,57点であった.
【リハビリテーション提供量】
2022年12月〜2023年11月 提供回数41回,実施単位数79単位
なお,外来による作業療法は,期限内は週2回,回毎の実施量は2単位,また期限後では週1回,回毎の実施量は2単位とする頻度を両症例へ掲示した上での結果である.
【考察】
これまで上位型神経移行術並びにoberlin法に関しては,本邦でいくつかの成績が報告されている.本症例と同様の肩再建では,外転90度に至ったのは42%で3年程度時間を要すとの報告もある.また,oberlin法においても良好な成績は多く,原らの報告でも12ヶ月-36ヶ月でMMT4-5まで回復したとされている.
今回,患者特性により,リハビリテーション提供量に大きな差が生じた.腕神経叢麻痺に関しては,肋間神経移行術などで提供量に関する報告はあるものの,今回の術式に関する報告は渉猟できなかった.提供量の少ない症例2においては,先行研究から経過12ヶ月を考慮すると標準的とも判断できるが,症例1においては,非常に良好な成績となっている.早期からの作業療法介入と半年以内の回復期転院によるリハビリテーション実施,外来通院コンプライアンスの良好性で一定量の単位提供を実施できたことで良好な成績を得られた可能性が考えられた.