[PD-8-4] 橈骨遠位端骨折術後患者に対する生活指導を含めたクリニカルパス導入の効果
【背景】
橈骨遠位端骨折の作業療法は,治癒過程に合わせて段階的に行う.それゆえに,対象者に作業療法の流れや適切な生活動作の理解を促すことは重要な管理の一つである.しかし,生活動作の指導に着目したクリニカルパスの有用性については明らかでない.本研究の目的は,橈骨遠位端骨折術後の生活指導とクリニカルパス導入の有用性を明らかにすることである.
【方法】
本研究はヒストリカルコントロール研究である.対象は,橈骨遠位端骨折掌側ロッキングプレート(Volar Locking Plate;VLP)固定術後患者である.除外基準は,開放性骨折,重篤な軟部組織損傷,神経・血管損傷,患者主観評価が困難な認知症とした.方法は,術後4週に自動関節可動域(手関節掌屈,背屈,前腕回内,回外)とQuick DASH(Q-DASH)を,術後8週と12週には握力値を加えて測定した.なお,クリニカルパスを導入した対象者には,術後から骨癒合まで術後週数に合わせた関節可動域練習や筋力トレーニング内容を記載したパンフレットを渡し,指導を行った.またそのパンフレット内には術後週数に合わせて許可される日常生活動作をイラストで示し,生活動作の指導を重点的に行なった.統計的手法は,クリニカルパスを使用しなかったヒストリカルコントロール群(対照群)とクリニカルパスを運用した群(パス群)との2群に分け,Mann-WhitneyのU検定で比較した.また,各群の術後4週と8週,12週で多重比較を行った.有意水準5%未満を有意差ありとした.本研究は,当院倫理委員会で承認のもと(承認番号5016)実施し,対照群はオプトアウト形式を採用して研究対象者が拒否する十分な機会を保障し,パス群の対象者には書面にて同意を得た.
【結果】
対照群は2017年1月から2020年5月にOTが依頼あった27例(平均年齢63±19.8歳,女性21例,利き手受傷17例)で,パス群は2020年11月から2024年12月にOTが依頼あった29例(平均年齢65±15.4歳,女性23例,利き手受傷18例)であった.骨折の重症度は対照群/パス群の順に,AO分類でA型3例/6例,B型6例/9例,C型18例/14例であった.対照群とパス群の各週における自動関節可動域,握力健側比,Q-DASHに有意差はなかった.また,各群の術後週数の比較では,パス群は4週と8週,4週と12週で全ての自動関節可動域とQ-DASHに有意な改善を認めたのに対し(p<0.05),対照群は4週と12週の全ての自動関節可動域とQ-DASHに有意な改善を認めたものの(p<0.05),4週と8週の回内とQ-DASHに有意差はみられなかった.ただし握力健側比は両群とも8週と12週で有意な改善を認めた.なお両群ともOT実施期間中に有害事象はなかった.
【考察】
本研究におけるパス群では,術後4週から8週,および4週から12週において関節可動域とQ-DASHに有意な改善を認め,クリニカルパスのパンフレットを用いて術後週数ごとに関節可動域練習や生活指導の内容を変化させたことが有効であったと考えられた.特にクリニカルパスのパンフレットを用いることで,対象者に術後から骨癒合までの治癒過程の理解を促し,生活動作での骨折側の使用を促進したのではないかと考えられた.
橈骨遠位端骨折の作業療法は,治癒過程に合わせて段階的に行う.それゆえに,対象者に作業療法の流れや適切な生活動作の理解を促すことは重要な管理の一つである.しかし,生活動作の指導に着目したクリニカルパスの有用性については明らかでない.本研究の目的は,橈骨遠位端骨折術後の生活指導とクリニカルパス導入の有用性を明らかにすることである.
【方法】
本研究はヒストリカルコントロール研究である.対象は,橈骨遠位端骨折掌側ロッキングプレート(Volar Locking Plate;VLP)固定術後患者である.除外基準は,開放性骨折,重篤な軟部組織損傷,神経・血管損傷,患者主観評価が困難な認知症とした.方法は,術後4週に自動関節可動域(手関節掌屈,背屈,前腕回内,回外)とQuick DASH(Q-DASH)を,術後8週と12週には握力値を加えて測定した.なお,クリニカルパスを導入した対象者には,術後から骨癒合まで術後週数に合わせた関節可動域練習や筋力トレーニング内容を記載したパンフレットを渡し,指導を行った.またそのパンフレット内には術後週数に合わせて許可される日常生活動作をイラストで示し,生活動作の指導を重点的に行なった.統計的手法は,クリニカルパスを使用しなかったヒストリカルコントロール群(対照群)とクリニカルパスを運用した群(パス群)との2群に分け,Mann-WhitneyのU検定で比較した.また,各群の術後4週と8週,12週で多重比較を行った.有意水準5%未満を有意差ありとした.本研究は,当院倫理委員会で承認のもと(承認番号5016)実施し,対照群はオプトアウト形式を採用して研究対象者が拒否する十分な機会を保障し,パス群の対象者には書面にて同意を得た.
【結果】
対照群は2017年1月から2020年5月にOTが依頼あった27例(平均年齢63±19.8歳,女性21例,利き手受傷17例)で,パス群は2020年11月から2024年12月にOTが依頼あった29例(平均年齢65±15.4歳,女性23例,利き手受傷18例)であった.骨折の重症度は対照群/パス群の順に,AO分類でA型3例/6例,B型6例/9例,C型18例/14例であった.対照群とパス群の各週における自動関節可動域,握力健側比,Q-DASHに有意差はなかった.また,各群の術後週数の比較では,パス群は4週と8週,4週と12週で全ての自動関節可動域とQ-DASHに有意な改善を認めたのに対し(p<0.05),対照群は4週と12週の全ての自動関節可動域とQ-DASHに有意な改善を認めたものの(p<0.05),4週と8週の回内とQ-DASHに有意差はみられなかった.ただし握力健側比は両群とも8週と12週で有意な改善を認めた.なお両群ともOT実施期間中に有害事象はなかった.
【考察】
本研究におけるパス群では,術後4週から8週,および4週から12週において関節可動域とQ-DASHに有意な改善を認め,クリニカルパスのパンフレットを用いて術後週数ごとに関節可動域練習や生活指導の内容を変化させたことが有効であったと考えられた.特にクリニカルパスのパンフレットを用いることで,対象者に術後から骨癒合までの治癒過程の理解を促し,生活動作での骨折側の使用を促進したのではないかと考えられた.